東京の若者が、縁もゆかりも無い最上町に移住し、夢だったコメ作りに励んでいます。担い手が不足する中、「ピンチはチャンス」と語る若者の姿を追いました。
山間の集落にも田植えの季節が訪れました。
(先輩・菅翔也さん)
「植えてみるか。植えてみろ」
最上町の農業生産法人に就職して1年。仕事ぶりが認められこの日初めて、直播きの最新機種の操縦を任されました。
(やりとり)
「ゆっくり行って」「はい」
浅水規玖さん、19歳。去年3月、東京都内の農業高校を卒業し、最上町にやってきました。
(浅水さん)
「農家になるのが憧れだった。田んぼの作業をしている時が一番楽しい」
東京・板橋区の出身。農業とは無縁の家庭で育ちました。
(浅水さん)
「祖父の家庭菜園を手伝った時に農業が楽しいと思い農業高校に入りコメ作りに出会った。(ネットで)いろいろ調べて最上町が良いなと思いここに来た」
数ある農業生産法人の中で魅力を感じたのが「もがみグリーンファーム」。
コメ作りにとどまらず、もみ殻から固形燃料を生み出す循環型農業の取り組みにも心惹かれ、入社を決意しました。
(浅水さん)
「機械化にも先進的に取り組んでいておいしいコメをたくさん作る会社の理念に共感して入社した」
そして、もう一つ。
決断を後押ししたのは法人の親会社「大場組」が、空き家となっていた一軒家に住まわせてくれたことです。縁もゆかりも無い土地で暮らす勇気と力を与えてくれました。
(浅水さん)
「東京ではマンション暮らし。一軒家に憧れていたのでうれしかった」
「(今夜は)マッサマンカレー」
体力勝負の農作業。バランスの摂れた食事を心掛けています。
自炊するその手は…
(浅水さん)
「こっちに来てから色が黒くなった。家族にも『頼もしくなった』と言われてうれしかった。(皆さんに)良くしてもらい会社にもっと貢献したいという思いがある。
恩を返していきたい」
(専務・菅欣也さん)
「みんなで話しているけど1年間の成長ぶりがすごいと思う。1年目は人から言われたことしかやれなかったが今年は仕事を任せられる。だってまだ19歳だよ」
(生産主任・菅毅さん)
「なかなか頼もしくなった」
もがみグリーンファームは、去年、耕作放棄地解消に向けた取り組みが評価され、「県ベストアグリ賞」を受賞しました。農家の高齢化、担い手不足、米価の高騰…農業に従事する誰もが深刻な課題に直面していますが…
(浅水さん)
「ピンチはチャンスだとも思っている。農業の楽しさをPRして人手を増やしていくのもそうだし『食』は大事だというところもPRしていきたい」
(先輩・菅翔也さん)
「今年のホープ。期待のホープ」
この春、浅水さんには後輩ができました。
(新入社員・大久保匠真さん〈新庄神室産業高校卒〉)
「右も左も仕事の良し悪しも分からないので浅水くんに面倒をみてもらっている」
自覚と責任。そして希望も胸に秘めながら。
浅水さんは最上の豊かな大地で農家の道を歩んでいきます。