「あ、間違えた」
レジでのひとコマ。前の人がクレジットカードの暗証番号を打ち間違ったようだ。
「スムーズに出来ることの方が少なくて…」と店のスタッフに話していた。
最近よく見かける「クレジットカード決済端末」は、タッチパネル式。
数字の並びがランダムで、配列は毎回変わる。
周囲の人から見えないように画面を暗くしているが、これが非常に見づらい。
もちろん、セキュリティを高めるためだと分かっているが、少々使いづらく、入力の時は少し緊張する。
打ち間違った経験がある人も多いのではないか。
■サイン認証が3月末で終了していた…
今、クレジットカード決済の認証方法が変わろうとしている。
かつて当たり前に行われていた「サイン認証」が3月末で終了。
原則として「暗証番号入力での認証」が必須となったのだ。
廃止の理由として、日本クレジット協会は「セキュリティの強化」を挙げている。
経済産業省によると、キャッシュレス決済の利用率は4割超。その内の8割以上、およそ116.9兆円がクレジットカードの利用だ。
ますます増えると予想される中、認証方法やセキュリティはどうなっていくのか?
消費生活ジャーナリストの岩田昭男さんに話を聞いた。
■入力ミスが続くと面倒なことに…
【消費生活ジャーナリスト 岩田昭男さん】
サイン認証の終了により、実店舗でのクレジットカードでの買い物には「4桁の暗証番号」が必須になりました。
店によって「1万円未満の取引では暗証番号は不要」などの対応もありますが、基本的には暗証番号を入力しないとクレジットカードの利用はできません。
暗証番号認証で気を付けるべきことの1つが入力ミスです。
連続して間違うとロックがかかり、クレジットカード自体が使えなくなります。
回数はカード会社によって異なり、具体的な数字は公表されていませんが、2~4回程度が多いようです。
ロックの解除方法もカード会社によって異なりますが、再発行になるケースが多く、手数料がかかることがあります。
新しいクレジットカードが届くまでには、時間も手間もかかりますから、十分に注意をしてください。
■セキュリティは強化された?
暗証番号による認証が出来るクレジットカードには「ICチップ」がついています。
ICチップとは、一般的にクレジットカード前面についている金属部分のこと。ICとは集積回路のことで、膨大な情報を記録でき、情報の暗号化も可能です。
これに対し、以前のクレジットカードは「磁気ストライプ式」。カード裏面に貼られた黒いテープに、カード番号や有効期限など決済に必要な情報が記録されています。
磁気はスキミングなどでカード情報が盗まれやすく、不正利用が多発しました。
ICチップには、不正にアクセスして情報を読みだそうとすると、チップ内のデータが自動的に破壊(または消去)される仕組みがあります。
このため、万が一、カードを盗まれても、ICチップからカード情報が盗まれる可能性は低いです。
セキュリティレベル、記録できるデータの容量のどちらもICチップが優れており、セキュリティ面は強化されたと言えます。
■セキュリティ対策は基本を押さえる
ICチップや暗証番号などでクレジットカードのセキュリティは強化されましたが、絶対の安心はありません。
他の対策として、最近は「ナンバーレス(「NL」)カードも増えています。
カード自体にカード番号やセキュリティコードが印字されていないため、カードそのものから情報が流出するリスクを軽減できます。
また、カードの利用通知(カードの利用があったらすぐ通知がくる)を設定したり、利用明細をしっかり確認するなど、やはり基本的な対策をしっかり行うことが重要です。
■将来的には「顔認証」になる?
最新の認証手段として期待されるのが「顔認証」です。
なりすましが困難なため、セキュリティ面の効果は非常に高いと言えます。
ここ数年、様々な場所で実証実験が行われており、鉄道の改札での利用や、オフィスでの入退室管理などで導入が進んでいます。
JR東日本は、ことし秋から一部の新幹線で「顔認証」で改札を通過する実証実験を開始し、今後10年以内に全線で「切符やICカードを使わない改札を導入する計画」を発表しました。
クレジッカードの認証方法も、ゆくゆくは「顔認証」になるのではないかと思います。
いうなれば「自分の顔がクレジットカードそのものになる」。
セキュリティが非常に高く、手ぶらで良くなるのでとても便利になるのではないでしょうか。
今、広く使われているタッチパネル式の決済端末は、特に高齢者にはハードルが高いと言えます。
先日、老眼鏡をかけた上に虫メガネ(拡大鏡)を使って入力をしている高齢者を見かけました。
それでもうまくできず、お店の方に手伝ってもらっていましたが、それではセキュリティの意味がありません。
誰もが使いやすく、セキュリティも高い、次世代の「認証方法」に期待したいです。
(消費生活ジャーナリスト 岩田昭男さん)