6日告示された鹿児島県伊仙町の町長選挙。

前の町長が任期途中で辞職するという異例の経緯でスタートした選挙戦は、届け出順に元高校校長の盛初弘さんと、元町教育長の伊田正則さんによるいずれも無所属の新人同士による一騎打ちとなっています。

これまでも町を二分してきた町長選。

その経緯を振り返るとともに、候補者や住民が今回の選挙をどのように受け止めているのか、取材しました。

異例の前倒し選挙となった伊仙町長選挙。

その号砲を鳴らしたのは大久保明前町長でした。

伊仙町・大久保明前町長
「(辞職の理由は)激しい戦いが少しでも減少することが重要と考えたから」

町長6期目の途中で辞職する理由について大久保前町長は「過熱した選挙が繰り広げられる可能性があり、早急な選挙を行うことが最良であると考えた」と説明しています。

これは2001年、大久保前町長が初当選を果たした町長選のときの映像です。

開票所には機動隊が配置され、厳戒態勢に。

さらに機動隊と町民が激しくもみ合う場面も。

このように伊仙町ではこれまでも幾度となく、激しい選挙戦が繰り広げられてきました。

大久保前町長が初当選を果たした2001年以降、町長選はいずれも一騎打ちの構図で、投票率は軒並み9割前後と町民の関心の高さも伺わせます。

そのような歴史を背景に、前倒しによる選挙を選んだ大久保前町長。

4月の退任式の際には、今回の選挙戦について次のように話しました。

伊仙町・大久保前町長
「(町長選が)今回は激しくなるような状況があったので、いち早くその激しさがないような形にできるかと杭を打ったようなこと。この町をどうしたらより良くやっていけるかの選挙になる」

このような経緯を経て、大型連休のさなかに告示された伊仙町長選挙。

名乗りを上げたのは、いずれも教育界出身の新人2人です。

無所属 新・伊田正則候補(66)
「伊仙町を変えていくために派閥を解消するために決意した。子や孫に誇れるような伊仙町にしていきたいという思いで立候補を決意した」

候補者のひとり、伊田正則さん。

伊田さんは、鹿児島県の徳之島町立山中学校の校長などをへて、2022年から伊仙町の教育長に。

しかし、大久保前町長から今回の選挙への出馬の打診を受け、教育長を辞職。

町民主体のまちづくりや小中学生の学習環境整備、農業振興などを公約に掲げ、選挙戦に臨みます。

無所属 新・伊田正則候補(66)
「(町民が)町政に関心を持って自分の意見が反映されるような、派閥を解消して町の運営に参画できるような伊仙町を作っていきたい」

大久保前町長から出馬を打診された伊田さんですが、掲げるのは「脱派閥」です。

伊仙町議会で派閥の感情で議案が採決されるのを変えたいと訴えます。

無所属 新・伊田正則候補(66)
「『過去の選挙の感情で町民が二分する』と指摘されたことを反省しながら、少しでも和らげるため、今の選挙の環境を改善するために、この方法(早期辞職)がベストと判断したことは良かったと思う」


無所属 新・盛初弘候補(63)
「6000人の伊仙町民がすべて幸せになる。これが稼ぐ力の原点。みんなで作る新しい伊仙町。これを作るために立候補した」

もう1人の候補者は、盛初弘さん。

盛さんは鹿児島大学を卒業後、県立徳之島高校の教頭や蒲生高校の校長などを歴任。

町長選挙への挑戦は今回が初めてです。

町民参加の政策立案や農林水産業の振興、子育て支援の強化などを公約に掲げます。

無所属 新・盛初弘候補(63)
Q.有権者に最も訴えたいことは?
「家庭教育や幼児教育は町としても関われるので、小さいころからしっかりと勉強の大切さを教えていけたら」

前町長が推す伊田さんと一騎打ちの構図となった盛さん。

しかし今回、前町長が仕掛けた異例の前倒し選挙については冷静に受け止めているようでした。

無所属 新・盛初弘候補(63)
「(早期辞職に)大変驚いているが、私の支持者は着々と準備していて、安心して選挙戦に入ることができた」

一方、有権者も前倒しの選挙戦に対する戸惑いは隠せないものの、一票に込める伊仙町を住みやすい町にしてほしいという願いは変わりません。

70代
「急に(町長選が)早まったのでみんな戸惑っていると思う。サトウキビやジャガイモが安定した値段で出荷できるような体制にもっていってほしい」

90代
「(選挙で)良いことも悪いこともあるけれどこれはしょうがない。病院とAコープと役場に電話で(車を)呼んで行けるようにようにしてほしい」

30代
「(選挙の過熱は)しょうがないことかなと思う。大変そうだなと思う。無事に(選挙が)終わればいいのでは。公園が各集落にあったり、子どもが遊べる環境が必要」

麓伊賀久記者
「新人同士の一騎打ちとなった今回の伊仙町の町長選挙。24年ぶりに新しい町長が誕生するとあって、有権者の関心も高く、票の行方が注目されます」

伊仙町長選挙は5月11日に投票が行われ、即日開票されます。

鹿児島テレビ
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