クールビズの定着など、社会環境の変化でスーツの需要は年々減少し「スーツ離れ」とも言われています。このような市場の変化を背景にした業績不振から、去年、V字回復を遂げたオーダースーツメーカーが仙台市泉区にあります。社会環境が目まぐるしく変化していく中、地元企業が日本一を目指して改革に取り組んでいます。

早朝、足早に車に乗り込んだのは、イージーオーダースーツを製造・販売する会社の社長・丸山承秀さんです。

フジ・スタイリング 丸山承秀 社長
「従業員の送迎で迎えに行っているところ」

会社の車2台で、管理職が出勤を兼ねて従業員を送迎。これまではバス会社に委託していましたが、経営改革の一環で取りやめました。

フジ・スタイリング 丸山承秀 社長
「言うだけなら簡単。まずは(自分も)やる。私は縫製とかできないのでこういうところでみんなのフォローができれば」

泉区明通にある、フジ・スタイリング。創業75年。自社工場でイージーオーダースーツを手がけ、販売してきました。しかし、「スーツ離れ」の影響もあり、業績は低迷。近年は、赤字の状況が続いていました。

そうした中、親会社からの出向で社長に就任した丸山さん。従業員たちに苦しい経営状況を伝えることから始めました。

フジ・スタイリング 丸山承秀 社長
「まず一番初めは現実。これだけの危機的状況で会社が血をドロドロ流しながらいるんだということを全従業員と共有したのがスタート」

大幅な経営改革に乗り出します。従業員送迎のためのバス契約を取りやめ、会社敷地内で使わなくなっていた駐車場は貸し出しを始めました。工場の従業員の数も、次の就職先を紹介した上で、80人規模から60人規模に。そして最も力を入れたのは、新たな販路開拓です。

フジ・スタイリング 丸山承秀 社長
「みんなと話し合って閑散期に既製服をやっていこうという取り組みを始めた」

国内の人気セレクトショップから仕事を受注し、カジュアルスタイルのジャケットなどの製造に取り組み始めたのです。こうした新たに利益を生み出す構造も作ったことで、今年、6期ぶりの黒字転換を果たしました。また、スーツの形のベースを作る「モデリスト」として長年活躍してきた神戸市の井地八朗さんに講師を依頼し、さらなる技術向上を図っています。井地さんは、時代にあわせて変化を遂げようとしているフジ・スタイリングの可能性を、高く評価しています。

井地八朗さん
「僕は西の方なんですけど、西は割と年配の方が多い、縫製工場って。でもここは若い方がたくさんいらっしゃるので、いかに自分がやっている仕事にプライドを持てて継続していける。そういうことが一緒にできれば」

SNS戦略にも力を入れようと、部署横断のプロジェクトを立ち上げ、発信力の強化を図っています。

フジ・スタイリング従業員
「(時代に合った)よりよいものを作っていくという方向性に舵を切っているところなのでいいものを作ってみんなに知ってもらいたい。流れを作るにはSNSを使っていくと認知度が広がるかなと」
「実際インスタとかで、これうちで作ったやつだよなとかっていうのが雑誌に載ったりすると、その一端を自分が担っているというちょっとした自慢ではないですけどそういったものもありますので、いろいろこの年齢になっても勉強になる。新しい発見もある」

地域の雇用を確保し、活性化につなげていくためにも…変化と挑戦を続けます。

フジ・スタイリング 丸山承秀 社長
「技術的な日本一の工場を目指したい。フジ・スタイリングって面白いことやってるなってことを若者の感覚で捉えてもらって、ここで働きたいと思ってもらえるような、そんな会社にできていければいいなと」

仙台放送
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