日本では認められていないものの、世界では30以上の国や地域で同性婚が可能となっている。東南アジアで初めて同性婚が法制化されたタイで同性カップルを取材した。
踊りや演奏で迎えられショッピングセンターに集まった人たち。
これは同性カップルが婚姻届けを提出するイベントだ。
タイでは2025年1月、東南アジアで初めて同性婚を認める「結婚平等法」が施行された。
法律上の表記が従来の「夫」と「妻」から「配偶者」に変更されたほか、税金の控除や遺産相続、養子縁組などの権利が男女の結婚と同じように保障された。
婚姻証明書を見ながら喜びをかみしめるプーンさんとナットさんの同性婚カップル。
プーンさん:
法律で認められた配偶者になれてとてもうれしい。もう他人に軽蔑されない
2人が知り合ったきっかけはSNS。
プーンさんがナットさんにメッセージを送ったことで仲が深まり、7年前に交際が始まったという。
4年前からはバンコク近郊の家で同棲。
プーンさんは美容師として働き、ナットさんは古着のオンライン販売で生計を立てている。
さらに、2人はインフルエンサーとして同性カップルの日常をコミカルに発信。
SNSのフォロワー数は30万人を超えている。
ナットさん:
(プーンさんの)かっこいいところが好き。魅力があってかっこいい
プーンさん:
(ナットさんの)心遣いができるところが好き。私の好きなものと嫌いなものを全部知っている
恋人と幸せな日々を過ごす2人だが、ここに至るまでには苦悩があった。
ナットさんは幼稚園の頃、自分が男の子に好意を抱くことに気づいたそうだ。
特に気にしていなかったが学校でいじめに遭った。
ナットさん:
性別が間違っていると言われたり、公の場でからかわれたりした。苦しかったが仕方がないと思った
男性にも女性にも好意を持つプーンさんも誹謗中傷に耐えてきた。
プーンさん:
彼氏ができた時にいじめられたことがある。彼氏の写真をSNSに投稿した時に私を差別するようなコメントが来た
性的少数者に寛容とされるタイでも依然として残る差別や偏見。
杉村祐太朗 記者(2024年6月):
性の多様性を祝うパレードがバンコク中心部で始まりました。すごい盛り上がりです
LGBTQの当事者たちは長年、国に対して性の多様性や同性婚を認めるよう訴えてきた。
事態が動いたのは2023年の総選挙。
若者の支持を集めた革新系の政党が第1党になったことで議論が一気に加速。
更に同性愛をテーマにしたドラマもヒットするなど社会の理解も次第に深まっていった。
タイ・ペートンタン首相:
性別に関わらず誰を愛してもその愛に制限や例外はない。皆さんも男女のカップルと同じように法律によって守られ保護されることになる
国会で議論が始まってから10年以上の歳月を経て、2025年1月、同性婚が法制化された。
そして同じ頃、プーンさんがナットさんにプロポーズ。
その様子もSNSで配信され多くの人から祝福を受けた。
「結婚平等法」が施行されたこの日、タイ国内では1800組以上の同性カップルが婚姻届を提出した。
婚姻の手続きを済ませ壇上に上がるプーンさんとナットさん。
2人の名前が書かれた婚姻証明書を緊張した面持ちで受け取った。
席に戻ってからも証明書を見つめる2人。
これまでの思いがこみあげたようだ。
ナットさん:
思ったよりうれしい。感激している。ここまで特別な気持ちになるとは思っていなかった
プーンさん:
とてもうれしい。伝えられない。うれしい?
ナットさん:
うれしい
2人は日本でも当事者たちの権利が平等に保障され、多様性が認められる社会になってほしいと話す。
ナットさん:
人をグループに分け差別することはあってはならないこと。人は性別に関わらず平等に権利を持って、平等に生活を送れるべき
プーンさん:
マイノリティ(少数)の人たちの幸せのため、日本もタイのような施策を推し進めてほしい
今後もこれまで通りの“普通”の生活を続けるというプーンさんとナットさん。
幸せを手にした2人の姿から学ぶべきことがあるのかもしれない。