価格の安定のため政府が放出した備蓄米について、宮城県内でも一部のスーパーなどで販売が始まっています。一方、農業政策に詳しい専門家は「放出の効果は限定的なため価格は横ばい、もしくは上昇する」との見解を示しています。

サラリーマンたちがお弁当を求めてやって来る、仙台市青葉区の「きやり亭」。46年続く人気の秘訣は、揚げたての唐揚げと…。

ほかほか弁当きやり亭 菊田厚代表
「これは大盛、コメは550グラムですね」

ふたが閉まり切らないほどの大盛ご飯!多い時では1日50キロの米を炊きます。そうした中、頭を悩ませているのが価格です。

ほかほか弁当きやり亭 菊田厚代表
「本当に高いですよね、びっくりするくらい高いですね」
Q.このような価格はあった?
「ないですね、初めてです」

農林水産省によりますと、全国のスーパーのコメの平均価格は4月6日までの1週間で5キロあたり4214円と、14週連続の値上がりとなっていて、去年の同じ時期と比べると、約2倍の価格となっています。

こちらの店では価格が高騰する中でも大盛の弁当を提供できるよう、仕入れるコメの種類を変更するなど、試行錯誤を重ねています。

ほかほか弁当きやり亭 菊田厚代表
「ひとめぼれと、まなむすめという品種の5割ずつのコメになる。値上げがありコメ屋の方から、こういう割合で作ったコメだと、若干安くかつおいしく食べられると言われた」

一方で、気になるのは備蓄米の状況です。

ほかほか弁当きやり亭 菊田厚代表
「備蓄米に関しては、まったく業者から『入るよ、入らない』という情報はない」

政府がコメの価格安定を狙って放出した備蓄米。4月7日、県内のコメの卸売業者のもとにも備蓄米が入荷しました。しかし、きやり亭のように、まだ情報が届いていない業者も少なくありません。

ほかほか弁当きやり亭 菊田厚代表
「今後どこまでコメの価格が上がるか、例えば入らなくなるか、そういう状況も踏まえていろいろ検討していかなくては」

一方、こちらのスーパーでは4月13日から、備蓄米を使った商品の販売を始めました。

フレスコ フロア商品部 吉田学次長
「備蓄米が出てからは備蓄米の方が売れてきている。価格差が2割ぐらいあるので、非常によく売れている」

こちらの店ではJAの要請に応じて備蓄米商品であることを明記しておらず、見た目では判別できませんが、客に聞かれた際は答えることにしています。

フレスコ フロア商品部 吉田学次長
「普通のコメと明らかに価格差があるので、客も『なんで安いんだろう』と思う。聞かれたら『備蓄米を使っているので、お安く提供できますよ』と回答していた」

取材中も、備蓄米の商品をかごに入れる買い物客の姿がありました。

買い物客
「できるだけ安いものを買いたい、なんで備蓄米が出回ったのに値段が下がらないんですかね。そういうのはすごく反発を感じる」

終わりの見えない価格高騰で、客の需要に変化も生じています。長期保存が可能なパックご飯の需要が高まっているほか、このスーパーでは冷凍食品売り場を拡大しました。コメの価格高騰を受け、おかずとご飯がセットになった商品の売れ行きが好調だといいます。

こうした状況は、いつまで続くのでしょうか。農業政策に詳しい専門家は。

宮城大学 大泉一貫名誉教授
「コメの価格は横ばいか、これから上がってくるとみている。備蓄米の制度が硬直的。なかなか市場を満足するだけの放出がされない」

政府は備蓄米の放出を今年夏まで毎月実施する考えを示していますが、段階的な放出では、品薄感の解消まで至らず、価格を下げる動きにはつながりづらいと指摘します。また、農業政策の転換も必要だと強調します。

宮城大学 大泉一貫名誉教授
「流通の問題というより『元々コメが足りなかった』が正しい。減反政策廃止以降も、政府は実質的な減反政策を続けてきた」

減反政策とは価格を維持するため、コメの過剰生産を抑え、国がコメの生産量を調整する政策です。2018年に廃止されましたが…。

宮城大学 大泉一貫名誉教授
「生産の目安を各県に指示して、『大体このぐらいのトン数を、あなたのところでは作ってください』と指示を出し続けてきた。それがある限りは、実質的な生産調整が続いてきたと言っていい。やはり農政の転換。生産強制をやめて増産と輸出、生産性の高い農業を作っていく、そのコストに見合った価格にしていくことが必要」

今週、極早生種のコメの田植えに臨んだ農家からも、農業政策の見直しを求める声が上がりました。

コメ農家 黒澤重雄さん
「世の中に出ている値段は変な値段。生産者はあんなに高い値段を求めていない。手頃な値段は求めているが、腹いっぱい安心して日本のコメが食べられるように、そういう政策であってほしい」

日本の食文化の根幹を守るために。農業政策の在り方が問われています。

仙台放送
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