「女子プロレス界の横綱」と呼ばれた、センダイガールズプロレスリングの里村明衣子選手が、30年間の現役生活に幕を下ろしました。4月29日のラストマッチは、15歳のデビュー戦の場所、東京・後楽園ホールで行なわれ、詰めかけた満員の観客を前に、有終の美を飾りました。
里村明衣子選手(45)
「仙台に来たことが、本当に自分にとって転機だった。ゼロからの出発だったので、選手の獲得、育成などは、何年もかかりましたけど、仙台に来て本当によかった」
引退を間近に控え、仙台での20年をこう振り返ったセンダイガールズプロレスリングの里村明衣子選手。新潟から単身上京し、15歳でデビュー。当時の所属団体解散後、2005年、センダイガールズプロレスリングに旗揚げから看板選手として加わりました。
それから20年。東日本大震災や自身の大ケガ、そしてコロナ禍と度重ねる試練にも決して屈することなく、常に前を向き続けた里村選手。自身のプロレス人生を充実していたと話します。
里村明衣子選手
「15歳で描いていた夢以上のものをプロレスで与えていただきました。それは人との出会いであったり、経験ですよね」
大きな存在を追い続けてきた後輩たちも、思いが込み上げます。
橋本千紘選手
「(里村さんとの日々を)思い出すと泣けてくるので、今はあまり振り返らないようにしてます。最後まで最強女子プロレス界の横綱でいてほしいと思います」
「プロレスラーとしてやり切った。健康な体で引退したい」と語った里村選手。残るは2試合、まずは仙台でのラストマッチに臨みます。
里村明衣子選手
「ちょっと寂しいですけど、これだけずっと応援してくださった宮城県のみなさんに最後の里村芽衣子の戦いを、精一杯の戦いをお見せしたい」
観客
「里村さんの勇姿を仙台で見られるのは最後なので、絶対に行かなきゃと思い来た」
「里村選手のファンなので、これから見られないのは残念」
タッグを組むのは、仙女旗揚げ当時からのメンバーで、里村選手が一から育て上げたDASH・チサコ選手です。
最後は、里村選手の必殺技スコーピオライジングが飛び出しました。宮城のファンへ、20年の思いを伝えます。
里村明衣子選手
「支えていただいたことしかなくて…宮城県でずっと頑張ってきてよかったです。ありがとうございました」
試合を見届けた観客
「30年ずっと見てきて、込み上げてくるものがあった」
「きょう見るのが最後だったので悲しかったが、すごく力強い里村さんを見ることができたので楽しかったです」
4月29日、ついに最後の日がやってきました。
現役最後の場所に選んだのは、自身が30年前にデビューした場所、東京・後楽園ホールです。
里村明衣子選手
「今まで何百回と通った、ここがきょうは違う気持ち。現役としては最後なんだっていう。込み上げるものがある」
選手としての最後のミーティング。
里村選手は「このスタッフの皆さんとやってきたから、ここまで来られました。ありがとうございました」と涙を見せながら、スタッフに語りかけました。
西ノ入菜月リポート
「まもなく引退試合が始まります。ずらりとお花が並んでいます。会場と同時に里村さんのラストマッチを見届けようと多くのお客さんが駆け付けています」
広島県からの観客
「里村さんも言われているように、きょうピークをもってくるということなので、里村さんらしいなと、とても楽しみ」
新潟県からの観客
「きょうは精一杯声を出して応援します。里村さん、頑張れー!」
里村選手の両親も新潟から駆け付けました。
父・秀治さん
「一言だけ、頑張ってほしい」
母・須美さん
「最後ですから精一杯やってほしいと思う。勝ち負けとか関係ない、自分のやってきたことを全部出してほしい」
現役最後の試合は仙女の後輩・愛海選手とタッグを組み、現チャンピオンで仙女を受け継ぐ一人・橋本千紘選手。そして、積年のライバル・アジャコング選手と対戦。
試合は、序盤から互いの意地と意地がぶつかり、一歩も引き下がらない気迫のこもった展開に。そして、現役最後の試合を勝利で飾りました。ところが…!
アジャコング
「俺の最後の願い、聞いてくれねえか。里村明衣子とアジャコングが組んで5分でいい。試合させてくれよ!」
なんと、アジャコング選手から「里村選手とタッグを組みたい」という驚きの言葉が。タッグを組むことはおよそ考えられない宿敵同士。予想もしない展開に会場のボルテージも最高潮に。
サプライズの一戦は里村選手がスコーピオライジングで決めにかかりましたが、時間切れ。夢のタッグで今度こそ里村選手の現役生活が終わりました。引退セレモニーに駆け付けたのは、恩師の長与千種さんをはじめライオネス飛鳥さん、北斗晶さん、ブル中野さんなど、往年のスターたち。
里村明衣子選手
「プロレスの世界って素晴らしいなと、ずっと思ってきました。きょうからプロレスラーではなくなりますが、もっともっと皆さんと夢を見ていきたいです。明日からプロレスに人生をかける里村でいますので、これからもよろしくお願いします」
駆け抜けた30年。リングを降りても、プロレス界を盛り上げると決意を語りました。
里村明衣子選手
「震災の時に諦めなくて良かったなと思います。そこからがスタートだった気がする。気づいたらちゃんと周りに皆がいてくれた。続けてきてよかった。女子プロブームを起こしたい。ブームを起こすためにスーパースターを育てる。これが目標です。宮城県の団体がここまで大きくなったかって全国にもっと広めていきたい」
「女子プロレス界の横綱」里村明衣子。プロレス人生の第二章が今、始まります。