鮮やかな色彩で描かれたヤマザクラなどの掛図が、高知県立牧野植物園で展示されている。

牧野富太郎博士直筆「ヤマザクラ」の掛図
牧野富太郎博士直筆「ヤマザクラ」の掛図
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日本の植物学の父と呼ばれる牧野富太郎博士が描いたもので、6万点を超える資料の中からこの度「新発見」された。

明治の教室に咲いていた「幻の教材」

高知県立牧野植物園の「牧野蔵」では、牧野富太郎博士が描いたヤマザクラとアブラナの掛図が展示されている。

牧野植物園で展示中の掛図「ヤマザクラ」「アブラナ」
牧野植物園で展示中の掛図「ヤマザクラ」「アブラナ」

これらは、2025年1月に牧野文庫で研究員が調査中に新発見された資料だ。
掛図は、明治時代に学校の黒板や壁に掲げられ、主に理科の授業で使用された教育用の大型図版である。

輪郭線がくっきりと分かりやすく描かれている
輪郭線がくっきりと分かりやすく描かれている

今回発見されたのは、ヤマザクラ、アブラナのほか、ワタ、イネ、ワラビの計5点だ。

(左から)「ワタ」「イネ」「ワラビ」の掛図
(左から)「ワタ」「イネ」「ワラビ」の掛図

これらの掛図は、輪郭線がはっきりと描かれ、花のつくりがわかりやすく示されているのが特徴である。

「博士が描いたことが分かっていなかった」掛図 夏まで特別展示

掛図の端には「此原図ハ牧野富太郎ノ描キシ者也(この原図は牧野富太郎の描きしものなり)」という文言が添えられている。

牧野富太郎博士の直筆であることを記す文章
牧野富太郎博士の直筆であることを記す文章

これまでの文献に博士が掛図を描いたという記載はなく、今回の発見は植物学史上、非常に貴重な資料となる可能性が高い。

掛図は縦90cm・横60cm。明治時代の学校で黒板や壁にかけて使用された
掛図は縦90cm・横60cm。明治時代の学校で黒板や壁にかけて使用された

縦約90cm・横60cmという大きなサイズの掛図は、保存が難しいため現存する資料が限られているという。

県立牧野植物園植物研究課の村上有美さんは、この発見について次のように語っている。

県立牧野植物園 植物研究課 村上有美さん
県立牧野植物園 植物研究課 村上有美さん

県立牧野植物園 植物研究課 村上有美さん:
掛図があることは分かっていたんですけど、牧野博士が原図を手掛けていたものであることは分かっていなかったので、今回初めて牧野博士が描いたことが分かった資料になります。われわれも今回初めて展示ができるようになって非常にうれしく思っているところです。

牧野博士が実際に採集したサクラの標本
牧野博士が実際に採集したサクラの標本

この貴重な掛図は、牧野植物園の常設展示室「牧野蔵」で夏ごろまで展示される予定だ。また、牧野蔵では博士が実際に採集したサクラの標本も併せて展示されており、植物学に興味を持つ人々にとって見逃せない機会となっている。

「生誕記念日」には特別無料開園も!

牧野植物園では、4月24日に牧野博士の生誕を記念して無料開園が行われる。午前9時から午後5時まで、普段は見ることのできない牧野文庫や標本庫の見学など、牧野博士の軌跡をたどるツアーも開催される。

牧野富太郎博士の掛図は夏ごろまで展示予定
牧野富太郎博士の掛図は夏ごろまで展示予定

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
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