特集は年齢差45歳「異色コンビ」が営む立ち飲み屋です。28歳の大学院生と73歳の女性が「人のつながりが生まれる場所をつくりたい」と意気投合し、2025年1月に長野県伊那市にオープン。早くも多くのファンができ話題となっています。
■居心地の良さと料理が自慢
JR伊那市駅近くの建物から賑やかな声が聞こえてきました。
男性客:
「出身はどっち?」
女性客2人組:
「静岡です」
「静岡」
男性客:
「2人とも?静岡なんだ」
2025年1月、伊那市にオープンした立ち飲み屋「あいとらべる 木楽茶屋分館」です。(※毎週木~土曜日営業)10人ほどでいっぱいになる小さな店。居心地の良さと、料理が自慢です。
駒ヶ根市から(20代):
「おいしい唐揚げ食べられてうれしいです。温かい空気で楽しかったです」
市内から(60代):
「1人(暮らし)なので、いろいろな人と、若い人と知り合い、すごく楽しいです」
■年齢差45歳 同じ志を持つ「相棒」
あいとらべる 木楽茶屋分館・志村千惠子:
「人が人を呼ぶというか、こういう感じになるとすごいです」
店を営むのは村上愛斗さん28歳と、志村千惠子さん73歳。
祖母と孫ではありません。同じ志を持つ「相棒」です。
志村千惠子さん:
「11月15日の夜中、『やりたいことがあるんだ』という話をし始めたんです、相棒が」
あいとらべる 木楽茶屋分館・村上愛斗さん(28):
「誰かが集まっている場所にいきたい、自分が行くばっかりだと大変なので、自分がつくっちゃえばいいじゃんというのが始まりです」
年齢差45歳、異色コンビが目指すのは「人のつながりが生まれる場所」です。
■大学院での研究の成果を形に
兵庫県出身の村上さん。信州大学伊那キャンパスで学ぶ博士課程2年で、食品に含まれる微生物や腸内細菌などを研究しています。一人暮らしをする中で「誰もが集まれる場所をつくりたい」と考えていました。
さらに。
村上さん:
「自分が実際に研究をしたみそ、食品というのを店で使い、それを元にした料理を提供して召し上がっていただく」
研究の成果を形にして「提供したい」という思いも強くなっていきました。
■夫が他界…心に大きな穴
一方、志村さんは、伊那市長谷地区で喫茶店「木楽茶屋」を営んできました。
伊那の自然に引かれ夫の裕幸さんと20年ほど前に千葉県から移住した志村さん。自宅を改装し、60歳の時に木楽茶屋を開業しましたが、1年後、夫・裕幸さんが他界(享年66)。心に大きな穴があき、3カ月ほど店を閉じていました。
志村さん:
「せっかくお父さんがやらせてくれたのに、このままじゃいけないなと思って。(店を開けたら)いつも来てくれていたお客さまが、それこそ泣きながら入って来てくださったんですよ。それで思いきり泣いたかなと思うんですけれども、それが立ち直りですね」
「人とのつながりの大切さ」を感じながら、その後も喫茶店を営んできました。
■共通点が多く意気投合
そんな2人が出会ったのは2年前。知り合いのブドウ畑で互いに作業を手伝っていたときでした。
「人が好き」「旅が好き」など共通点が多くすぐに意気投合。その後、志村さんがイベントに出店した際、村上さんが手伝いをするなど交流を続けました。
そして、2024年11月、「立ち飲み屋を開業したいので、手伝ってほしい」と村上さんが声をかけ志村さんも快諾しました。
村上さん:
「イベントをやる中で、お互いの時間を共有していて、ふとですよね。志村さんとだったらできるかもしれない、ただそれだけです」
志村さん:
「彼の思いも、飲み屋さんやりたいとかではなくて、人の出会いの場所をつくりたい、信大の研究したものを発信したいだとか、普通の店をやるのと違うな、中身が濃いなと」
■こだわりの看板メニュー
午後6時半開店の立ち飲み屋。志村さんは3時間ほど前に来て料理を仕込みます。基本的にメニューは志村さんが考えています。
勝負のタコさんウインナー(500円)
本日の三種の盛り合わせ(600円)
午後6時ごろには大学での研究を終え村上さんも店に。
「はい、いただきまーす」
腹ごしらえしながら作戦会議。
志村さん:
「1人でもいいですかと言うから、いいよ、おいでよと言ったの」
村上さん:
「すぐ友達になるわ、いっぱい」
午後6時半にオープン。
この日、店を訪れたのは村上さんの研究室の教授です。
頼んだ料理は豚汁。村上さんがこだわった看板メニューです。
村上さんの研究室の教授:
「おいしいです」
豚汁は村上さんが成分を研究した飯山市の「加賀屋醸造」のみそを使っています。「自分の研究を還元したい」という思いを形にしたメニューです。
村上さん:
「加賀屋醸造のみその中に、すごく有効な乳酸菌、または成分が含まれていたので、実際に召し上がっていただくとお腹の中に入って健康にいいかなと」
村上さんの研究室の教授・下里剛士さん:
「乳酸菌がすごく豊富に含まれているみそですが、酸味を強く感じる訳ではなくて、うまくまとまっている」
■人のつながりが生まれる場所に
ビールを飲む客:
「あー、うまい」
週末の金曜日、店はいっぱいに。
初めて会う客同士の会話も。
客:
「でかいよね、190cm?」
「194cm」
「でかいよねー」
「大谷選手ぐらいある」
「大谷君と比較するな(笑)」
常連客(40代):
「(店主の2人が)すぐにつなげてくれるというか、うまく一体感をつくってくれるので、みんなと楽しく飲める感じ」
常連客(20代):
「一人暮らしをしているので、普通にしていたら出会えない人と出会えるのはいい所だなと思う」
年齢差45歳の異色コンビが営む立ち飲み屋。オープンから2カ月、すでに多くのつながりが生まれています。
あいとらべる 木楽茶屋分館・志村千惠子(73):
「自分たちがもうできないなと思ったときに、次やってくれる人がつなげると良いなと思う、お客さまの中から(笑)」
あいとらべる 木楽茶屋分館・村上愛斗さん(28):
「人のつながりが生まれるような場所、そういうつながりが続けばいいなと思っていて、無理のない程度にボチボチやろうと思っている」