4月12日、JR仙台駅前の人気飲食店が復活を遂げました。火事で全焼しながらも、再建を望む多くのファンの声を受けて再オープン。地域への恩返しを誓います。

12日、JR仙台駅西口すぐそばの小さな路地にできた、長い列。お目当ては「駅前酒場もつ焼専門丸昌」です。昭和情緒が漂う店。にぎわいが戻ってきたのは約2年4カ月ぶりです。

来店客
「復活を待ちわびてましたし、きょう来られてうれしい」

2022年12月、丸昌の入るビルで火事が発生。夜中の仙台駅前が騒然となる中、鎮火まで12時間半を要し、ビルは全焼しました。

2023年9月。店の跡地を訪れていたのは、丸昌を経営していた秋田県秋田市の飲食チェーン「ドリームリンク」の村上雅彦社長(62)です。

ドリームリンク 村上雅彦社長
「ずいぶんご迷惑かけました、皆さんに。『復興支援酒場』という形で被災地のためにとやったものが、結果的に10年過ぎてかえってご迷惑をかける形になったということ。申し訳ない気持ちでいっぱいです」

東日本大震災が発生した2011年。村上社長は、丸昌の前身となる「復興支援酒場」をオープン。地産地消と利益全額寄付を掲げ、売り上げ約1500万円を被災3県に寄付しました。そうした背景もあり、まちに根付いていた丸昌。仙台駅前という立地の良さなどから、火事の後、ビル管理会社の元には別の飲食店出店を希望する問い合わせが多数寄せられたといいます。しかし、復興支援酒場からの歩みを知っているからこそ、他の店舗への貸し出しなどは行いませんでした。

仙都住宅センター 藤野栄次会長
「仙台のためにということで、今まで通りにやっていただければ」

ドリームリンク 村上雅彦社長
「『丸昌頑張れ。復活してほしい』『復興支援酒場忘れてないぞ』というような励ましの言葉をいっぱいいただくことができた」

同じ場所での再建を決断し、ビル関係者などと打ち合わせを重ねてきました。再オープンを発表した記者会見では、地域貢献策として客1人あたり10円を仙台市に寄付することを表明しました。

ドリームリンク 村上雅彦社長
「(火事で)ご迷惑をかけた仙台市の方に寄付しようという活動を、開店から店がある限りずっと続けていく」

迎えた12日の再オープン。午後4時の開店に向けて、午前中から仕込み作業が行われていました。

火災前から勤務していた従業員
「お得意さんになるといろんなものを持ってきて、暑いときにはアイスいただいたり、そういう人情味のあるお客さんが多かったです。また一から出直すわけではないけど、その原点に返ってバンバン繁盛してくれたらいいなって」

新人従業員
「お客さんにとっても店員にとっても待望の日」

店内のレイアウトは火事の前とほぼ同じで、低価格のメニューが並びます。午後、開店が近付くと…

記者リポート
「時刻はまだ午後3時前ですが、人気酒場の復活とあって店の前にはすでに人の列ができています」

開店前に並んだ人
「並ぶだろうなって余裕を持ってきたら、すでに列ができてたので並んでしまわないと入れないなって並び始めています。ずっと待ち望んでいました」
「この物価高な世の中でこんなにお値打ちなお店はないので、我々庶民にとっては最高の店」

店に到着した村上社長も、人の列に驚きました。

ドリームリンク 村上雅彦社長
「すごいですね、並んでいただいていて。恩返しをこれからしていかなくちゃいけない。お役に立てる店を全力で作っていけたら」

そして、いよいよ…「駅前酒場炭火もつ焼丸昌、ただいまより開店します!」
復活を待ちわびた人たちが、続々と店内に入っていきます。

来店客
「そう、そう、そう。まんま一緒じゃん!」「一緒なのがうれしい」
「祝・丸昌復活!おめでとうございます」
「よかった、生きてて」

再開初日から、客の笑顔と店員の威勢のいい声で、店内は活気に満ちあふれました。

来店客
「思い出の『聖地』。感謝の気持ちでいっぱいです」「おかえりなさいって感じ」「酒飲めなくなる体になるまで通い続けます」

ドリームリンク 村上雅彦社長
「(皆さんが)本当に支えてくれたということで感無量。みんながいい形でお金も回っていくし、笑顔も回っていくし、そういったお店だと思うのでそれを目指して頑張っていきます」

再び明かりがともった「丸昌」。お酒好きから聖地とも愛される酒場が、再出発の春を迎えました。

仙台放送
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