大手牛丼チェーン「すき家」のみそ汁にネズミが混入していた問題で、4月4日金曜日、「すき家」の営業が再開された。

なぜネズミが混入する事態となったのか。

「newsランナー」では、現役のアルバイト店員を取材。外食産業が抱える課題に迫った。

「すき家」営業再開
「すき家」営業再開
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■“ネズミ混入”で4日間営業停止から再開した「すき家」

4日金曜日から営業を再開した「すき家」。

記者リポート(5日午前3時すぎ):お客さんが入ろうとしていますが、鍵がかかっていて入れません。店は閉店し従業員は清掃を開始しました。

午前3時から4時までの1時間、店は閉店となり、従業員が清掃をしていた。

「すき家」午前3~4時は店を閉め清掃することに
「すき家」午前3~4時は店を閉め清掃することに

すき家は、全国およそ1970の店舗で、3月31日から4日間閉店を実施。再開した日の朝にはオープンと同時に多くの客が店に入った。

来店客:昨日閉まっとったんで、うわだるいなと思って。食べたかった、ずっと『すき家』を。(Q.おかわりしてませんでした?)おかわりしましたね。

来店客:全店舗が影響しているわけじゃないんで、僕はそこまで気にしないんで。

一時閉店という異例の事態となったことの発端は『商品にネズミが混入』。

ことし1月、鳥取市内の店舗を訪れた客が「みそ汁にネズミが入っている」と店員に指摘。すき家は「店の外に面している冷蔵庫のヒビから侵入し、みそ汁のお椀に具と一緒に混入していた可能性が高い」と発表した。

さらに3月28日には、東京都内の店舗で商品に害虫が混入していたことも発覚。すき家の衛生面を懸念する声が上がった。

「僕はそこまで気にしない」再開してすぐ来店する客も
「僕はそこまで気にしない」再開してすぐ来店する客も

■「衛生面終わってんな」現役アルバイトが話す実情

一体なぜ食の安全が脅かされたのか。今回、「newsランナー」では現役のアルバイト店員を取材。すき家の店舗の実情が見えてきた。

すき家の現役アルバイト:衛生面終わってんなって。うわ、こんなん食べてたんやというのが一番ショックでした。

まず明かしたのは衛生管理の意識の低さだった。

すき家の現役アルバイト:表面上はまだきれいにはしてるけど、裏めっちゃ汚いなみたいな。バッシング(片付け)した後に、お盆とか拭く雑巾ずっと使っていて、それで(洗わずに)いろんな人のお盆拭いて。それが当たり前っていうか、みんなこなしている感じだったので。自分だけおかしいかなみたいな。

2カ月前にアルバイトを始めたという店員。「掃除のマニュアルをもらったことはない」と話した。

「衛生面終わってんな」
「衛生面終わってんな」

■専門業者が指摘する「普段の清掃の重要性」

では、本来、飲食店に求められる“衛生管理”とはどのようなものなのか。害獣・害虫を駆除する業者を取材すると…。

駆除業者:これがネズミのフンになるんですけど、もうだいぶかたいので相当前のもの。

天井裏から発見されたのはネズミのフン。こういう小さなサインに気付くためにも、専門業者などによるこまめなチェックは欠かせないという。

(Q.ネズミはどれぐらいのスペースがあったら侵入できる?)
駆除業者:人の指1本入る穴があれば通過します。(ネズミの)鼻先が穴に入れば、体が大きくてもしぼんで通過できる。触ると血が出るぐらい鋭利な針でできたタワシを、こういう穴に突っ込んでネズミが侵入しないように。

「人の指1本入る穴があれば」ネズミは侵入できる
「人の指1本入る穴があれば」ネズミは侵入できる

こうした対策に加え、飲食店として最も大切なことは、「普段から行う清掃の重要性」だと専門業者はいう。

ワンズ 渡辺伸一専務:まず清掃というのと、チェック体制をちょこっとやるだけでも多少変わると思います。

普段から行う清掃が重要
普段から行う清掃が重要

■「人手が全然足りてない」とアルバイト店員

しかし、すき家の現役アルバイトを取材すると、今回の問題につながる”ある要因”も浮かび上がってきた。

すき家の現役アルバイト:人手が全然足りてない。1人で働く時間が多かったり。お客さん優先はもちろんなんですけど、優先した結果、掃除できる時間がなかったりするのが現状。

現役アルバイトが明かしたのは「人手不足」により、普段の清掃に手が回らない現実だった。

「お客さん優先…掃除できる時間がなかったり」
「お客さん優先…掃除できる時間がなかったり」

なぜ人手不足に陥るのか。専門家は外食産業、特に牛丼業界が置かれた厳しい現状を指摘する。

日本フードアナリスト協会 横井裕之理事長:(アルバイトを希望する人にとって)牛丼屋やラーメン店や町中華みたいなところは人気がない。カフェ、イタリアン、フレンチ、西洋料理みたいな所に集中する。コスト削減のなかで、衛生とか安全性とか犠牲になるというのはあると思う。

牛丼屋やラーメン店はアルバイトに人気がないという
牛丼屋やラーメン店はアルバイトに人気がないという

■厳しい価格競争の中で浮かび上がる“食の安全への課題”

業界特有の厳しい価格競争の中で浮かび上がってきた食の安全への課題。

すき家は閉店中の4日間、どのような対策を行ったのか、問い合わせてみると…。

すき家の回答:この4日間は、従業員による徹底的な店内清掃、建物のひびなど侵入経路をふさぐ対応を実施しています。

(Q.今回の清掃で専門の業者などは入っていないのでしょうか?)
すき家の回答:この4日間は従業員による清掃をさせていただきました」

今回の一時閉店中、専門の業者などは入らず、“店員のみ”で清掃を行ったとする「すき家」。

「従業員による徹底的な店内清掃」をしたという
「従業員による徹底的な店内清掃」をしたという

■備品が散乱しアルバイト1人で清掃するのは大変だったという

しかし店員は、その対策の実効性に疑問を持たざるを得ない現実を明かした。

すき家の現役アルバイト:自分は2日間(清掃に)入ったんですけど、1日目は4時間1人で掃除して、2日目はもともとシフトが2時間やったんで、2時間ワンオペで掃除しました。

一時閉店中の業務は、清掃に移行。結果、アルバイトが1人で清掃する時間帯も多かったという。

実際にアルバイトが撮影した画像に映し出されているのは、1人で清掃するにはあまりに多い散乱した備品の数々。

すき家の現役アルバイト:厨房の床タイルがやっぱり汚れついたままとかやったりしていたんで、そこが気になりました。前よりはきれいにはなったけど、また同じことが起こるんじゃないかなっていうのはあります。

アルバイト店員が撮影した閉店中の店内
アルバイト店員が撮影した閉店中の店内

■「安くて美味しい」ビジネスモデル問い直される事態に

果たしてこの4日間、店員のみの清掃で消費者の信頼は回復できたのか。

すき家に改めて問うと…。
すき家の回答:4日間で十分かといえば十分ではない。あくまで緊急の対応。専門の駆除業者に関しては、1900ある店舗に確保するのは物理的に難しかった。必要のある店舗には今後、個別に業者を入れていく。

すき家は、これまでの24時間営業を止め、午前3時~4時の1時間は、清掃をすることを決定。

また従業員に対し、月に1回、衛生教育を行うなど対策を進めるとしている。

「安くて美味しい」ビジネスモデル問い直される事態に
「安くて美味しい」ビジネスモデル問い直される事態に

「安くて美味しい」というビジネスモデルがいま、問い直されている。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年4月7日放送)

関西テレビ
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