3月18日に開幕した春のセンバツ高校野球。四国の代表として出場する高松市の高松商業高校は、2024年に味わった悔しさを糧に、65年ぶりの日本一を目指します。
2024年1月。球児たちに届いた「春の便り」。2年ぶり29回目となるセンバツの舞台で頂点を目指します。
(山田圭介主将)
「去年(2024年)の夏、3年生を甲子園に連れていけなかったのがずっと心にあるので、1勝でも多く勝つ気持ちで、3年生のために絶対勝ちたい」
(長尾健司監督)
「高松商業に勝負しに来ていることを自覚してほしいと言っているので、ここから本当の戦いが始まる」
高松商業は2024年、秋の県大会と四国大会を通じて1試合の平均得点は7.6点、失点は2.3点と高い攻撃力と固い守備力で甲子園出場を手繰り寄せました。
(長尾健司監督)
「変化球を打たないと。初球の変化球を打たないと」
チームを指揮するのは、就任11年目の長尾健司監督(54)。高松商業をこれまでに7回甲子園に導いた名将です。
(長尾健司監督)
「実力の差は努力の差、実績の差は責任感の差、人物の差は苦労の差。その通り。野球を野球で見てはダメ。野球は人間がやるスポーツだから人間を見なくてはいけない。野球で物事を見なくて、人を見ている。上手い下手では評価しない」
公立高校の高松商業は他の部と練習場を共有するなど決して恵まれているとは言えない練習環境ですが、一人一人が工夫しながら何ができるかを考え、日々練習に取り組むことでハンデを乗り越えてきました。
(山田圭介主将)
「練習場所が限られている分、自分たちの課題を克服するのは難しいが、高商の野球部で一番に掲げている『自ら考える』というのを実践できているので、自分たちで工夫して練習に取り組むというのは、どこのチームよりもできていると思う」
たゆまぬ努力で勝ち取ったセンバツの切符。そこには、甲子園出場にかける選手たちのある思いがありました。
甲子園への切符をかけた2023年、夏の香川大会決勝。高松商業は前年の覇者、英明と対戦しました。
1点ビハインドで迎えた最終回。2アウト、ランナー2塁と同点のチャンスでバッターボックスに立ったのは、下級生ながらレギュラーで出場していた山田選手。
(山田圭介主将)
「3年生に申し訳ない気持ちで、自分の実力のなさに気付かされて、人一倍悔しい思いをした」
あと一歩届かなかった夢舞台。その悔しさは選手たちの胸に深く刻み込まれました。
(長尾健司監督)
「成功した時よりも失敗して悔しいと思った時の方が成長するチャンス。彼らの心が変わったとしたらあの失敗が心の中にあると思う」
悔しさを糧に大きく成長した選手たち。高商の伝統、「バッテリーを中心に守り勝つ野球」で、65年ぶりの頂点を目指します。
勝利の鍵を握るのが、充実した投手陣です。エースの末包旬希投手(2年)は、高い制球力とカットボールを武器に抜群の安定感を誇ります。
(末包旬希投手)
「バッテリーを中心に守りからリズムを作るのがモットーなので、攻撃にいい流れを持っていけるようなピッチングをしたい」
後ろに控えるのが、行梅直哉投手(2年)。身長183センチの恵まれた体格を生かした力強いピッチングで相手打線を抑え込みます。
(行梅直哉投手)
「日本一を掲げながら一戦必勝で一つずつ勝ちたい」
高橋友春投手(2年)は、最速152キロのストレートが武器の右の本格派。さらにはスライダーのキレ味が光る筒井羽琉投手など層の厚さが光ります。
こうした個性豊かな投手陣をまとめるのが、キャッチャーの和泉翔大選手(2年)。ピッチャーの強みを生かした強気なリードが持ち味です。
(和泉翔大捕手)
「ピッチャーは一人一人全然違う。一人一人の良さを出していけたら勝利は近づいてくるので、良さを引き出して勝ちにつなげたい」
打ってはチーム打率3割6分7厘の切れ目ない打線が強みです。
1番は、チームの中心、山田圭介キャプテン(2年)。秋の大会では4割を超える打率をマークしたチーム屈指の巧打者です。
(山田圭介主将)
「一番の恩返しは日本一になることだと思うので、日本一になって少しでも先輩に恩返しできたら」
さらにパワフルなバッティングが光る唐渡大我選手(2年)、広角に強い打球を打ち分ける高藤快渡選手(2年)、長打力もある巧打者、小原健跳選手(2年)、秋の四国大会で2打席連続ホームランを放った橘朋宏選手(2年)らが中軸を担います。
(唐渡大我選手)
「3失点以内に抑えて、野手陣はそれに応えられるバッティングをしていきたい」
(高藤快渡選手)
「チャンスで回ってくると思うので、一発で仕留められるように頑張っていきたい」
攻守のバランスが取れた2025年の高商。チーム一丸となって、1960年以来、65年ぶりの日本一を目指します。高松商業は3月22日、大会5日目の第1試合で、東京の早稲田実業と対戦します。