様々な分野で活躍する日系アメリカ人のリーダーらが、広島市を訪れ、被爆者の証言を聞くなど、被爆の実相に触れた。広島にルーツを持つ人もいて、世界情勢が緊迫する中で、核兵器が使われるとどうなるかにそれぞれの考えを重ね合わせていた。

真珠湾とヒロシマが戦争の初めと終わり

外務省の招きで広島市を訪れたのは、銀行の頭取やバイデン政権で貿易を担当した政府関係者、弁護士などアメリカの各界で活躍する日系アメリカ人10人。まず、原爆資料館を石田館長の案内で見学した。

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原爆資料館・石田芳文館長:
「核兵器が使用されたらどんな結末になるのか見てほしい」

中には、広島にルーツがある人も。銀行の頭取を務めるアン・テラニシさんは、父親が広島出身。太平洋戦争と広島についてこう語る。

「アメリカでは真珠湾攻撃が戦争の始まりと認識されている一方で、広島は戦争終結につながった場所になる。自分のルーツをもっと学びたかった」

被爆の実相を証言で感じる

広島や日本にルーツがあっても、これまでなかなか原爆の惨状と向き合う機会はなかったというメンバーらは、8歳の時に被爆した八幡照子さんの証言にも耳を傾けた。

8歳の時に被爆した 八幡照子さん
8歳の時に被爆した 八幡照子さん

「母親の背中にはたくさんのガラスが刺さり、母親の白いシャツが真っ赤に染まっていた。街中には皮膚が焼けただれて幽霊のような人がたくさんいた」

被爆者のに生々しい証言には衝撃を受けた様子だった。

母親が広島出身のドーン・ヒューイットさんは「心を動かされた。歴史の教科書では14万人が亡くなったという数字の事実を学んだが、やはり恐ろしい事実を忘れてはいけないと思う」と語る。

碑文の「過ち」は「道徳に反する行為」

原爆慰霊碑では「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」の碑文の「過ち」の解釈について議論が交わされた。

ある男性が「『過ち』はどのように解釈されているのか?」と疑問を投げかけた。

そうすると、ほかの男性が「原爆投下は決して単なる過ちではない。なぜなら計画されていたから。『計画的な過ち』は『道徳に反する行為』ということになるのでは」と応じた。

核兵器をめぐる世界情勢が緊張感を増す今だからこそ、日本にルーツをもつアメリカ人として感じたことは多かったようだ。

商務省で国際貿易局 副次官補を務めたケンディー・ヤマグチさんは「今回のように草の根レベルでも政府レベルでも対話することが大事だと感じた」と話す。

また、父親が広島出身のアン・テラニシさんは「日米関係はとても重要だと思う。私たちが日米の懸け橋になりたい」と語った。

トランプ政権下で日米関係は新たなフェーズに入ったが、今回のような草の根の市民交流で相互理解を深めることが重みを増している。

(テレビ新広島)

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