千葉・いすみ市で今、移住先に建てたある一軒家の“違法建築トラブル”が持ち上がっている。
約4900万円をかけた夢のマイホームのはずが、資産価値ゼロの状態になっているという。一体何が起きているのか取材した。

夢の田舎暮らし一転「すごく正直苦しんでます」

夢の田舎暮らしーー。移住先に建てたマイホームが、まさかの違法建築状態になっているという。

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被害を訴えるAさん:
正直“夢のマイホーム”だったんですけど、こんなことが起こるなんて想像していませんでした。

千葉・いすみ市に立つ一軒家でトラブルが
千葉・いすみ市に立つ一軒家でトラブルが

取材班が訪ねたのは、千葉・いすみ市に立つ一軒家。

家主のAさんに室内を案内してもらうと、天井が高く開放感あるリビングの広さは26畳。さらにベランダに出ると…。

目の前が田んぼの庭にはガゼボやサウナが
目の前が田んぼの庭にはガゼボやサウナが

被害を訴えるAさん:
目の前が田んぼになってまして、ここでバーベキューができるように。あと庭にガゼボ(涼む場所)とサウナがあります。

約300坪の敷地にサウナやゲストルームを完備したマイホームでの移住生活ーー。

太平洋に面し、自然豊かないすみ市は、「住みたい田舎ランキング」で首都圏1位となるなど、人気の田舎暮らしの街として知られている。

被害を訴えるAさん:
8年前に東京からいすみに移住したんですけど、主人の趣味のゴルフとかサーフィンだったりを楽しみながらゆっくり生活したいと。

都内で会社を経営していたAさんは、好きな街でのんびりしたいと移住を決意したが、「“夢のマイホーム”を建てたんですが、違法なものや欠陥が発覚してしまい、すごく正直苦しんでます」と明かす。

雨でベランダの目の前が“湖”に…調査で“3つの問題”浮上

Aさんが協力を依頼した岩山健一1級建築士の調査によると、この夢のマイホームに“3つの問題”が浮上したのだ。

1つ目の問題は、床下浸水への対策。

Aさん提供の映像では、豪雨が過ぎ去ると、Aさんのベランダの目の前に湖があるかのような景色に一変している。

豪雨でベランダの目の前は湖のような状態に
豪雨でベランダの目の前は湖のような状態に

この地域は水はけが悪く、豪雨が降ると床下浸水の恐れがあるという。

図面では基礎部分が道路より200mm高いはずが…
図面では基礎部分が道路より200mm高いはずが…

そこで、自宅の敷地の基礎部分を道路より200mm高くする計画だったのだが、計測の結果、わずか44mmしか高くなかったことが分かった。

実際は44mmしか高くないことが分かったという
実際は44mmしか高くないことが分かったという

日本建築検査研究所 1級建築士・岩山健一氏:
ここが200mm上がっていれば建物も平行移動で上がる。だから水が出た時に被害を受けなくてすむことになるんだけど、どうもそれができてない、この家は。

さらに自宅の中を調査すると数々の問題点が浮上した。

ユニットバスの天井裏を見てみると…。

日本建築検査研究所 1級建築士・岩山健一氏:
ここも断熱がなきゃいけない。それから、この立ち上がりのところにも。そこにも断熱がありません。

ユニットバスに加え、シャワー室の天井などに断熱材の欠損した箇所が確認されたという。

さらに天井裏を調査すると、防火性能を高めるために必要な石こうボードが貼られていない場所などが確認されたという。

日本建築検査研究所 1級建築士・岩山健一氏:
白いシートが見える。あのシートのところに石こうボードが貼られてないといけない。(石こうボードが)貼られていない。

完了検査「未了」で売却もできず…

そして、自宅の完成後にも追い打ちをかけるような事態が起きた。

被害を訴えるAさん:
完了検査が「検査済み」がないということが発覚してしまった。(自宅を)売ることができない。

建物が建築基準法などの法令に適合しているかを検査する「完了検査」が行われていないことが分かったのだ。

被害を訴えるAさん:
検査機関からは「あなたの家、いま住んじゃってるの?」「いま工事中の状態だよ。住んじゃダメだよ」という状況だと言われてしまった。

約4900万円をかけた夢のマイホームが、いわゆる“違法建築”の状況となってしまい、資産価値がゼロの状態になっているという。

被被害を訴えるAさん:
建築会社の対応が、一度も謝罪もない、連絡もない。大変つらい気持ちになって、移住を夢見た現実が今とても残念に思っている。

地元建設会社「裁判で争って欲しい」

Aさんのマイホームを建てたのは地元の建設会社だ。
6日、県の土木事務所で聞き取りが行われたが、建設会社側は出席しなかった。

「イット!」がこの建設会社を取材すると、Aさんへの対応については、「誠意を持って言われたことについては対応している」と回答した。

「イット!」の取材に対する地元建設会社の回答
「イット!」の取材に対する地元建設会社の回答

敷地の基礎の高さが図面より低かった点は、「設計図書の誤記だ」などとしていて、今後については「弁護士を入れているので裁判で争ってほしい」としている。

Aさんの自宅を巡る建築トラブルの今後の争点について、建築問題に詳しい森田匡貴弁護士は「今の状態は建築基準法違反になってしまっている。完了検査を合格できるように持っていくことが必要。並行して建築会社に対して別途、民事上の損害賠償請求をすることが考えられる」としている。
(「イット!」3月7日放送より)