アメリカでトランプ大統領が20日に行った就任演説で、パナマ運河返還など領土拡大へ意欲を示した。
さらに、パリ協定再離脱などの大統領令に署名も行った。
就任式にはIT大手トップが集結し、テック産業を重視している姿勢がうかがえた。
就任演説で領土拡大への意欲示す…強硬策に踏み切るか
アメリカのトランプ新大統領は、就任演説で領土拡大への意欲を示した。

トランプ大統領はアメリカ・ワシントンで20日、就任演説で「政権の1日1日をアメリカ第一に考える」と訴え、“アメリカ第一主義”を強調した。
アメリカ・トランプ新大統領:
アメリカは再び富を増やし、領土を拡大し、都市を建設し、期待を高め成長する国だと自認するだろう。
トランプ氏は、さらにパナマ運河について、「愚かにもパナマに引き渡された。今では中国が運営している」と非難し、返還を強調するとともに、メキシコ湾の「アメリカ湾」への改名をあらためて表明した。

不法移民対策は「国家非常事態」を宣言し、南部国境に軍を派遣すると明らかにしたほか、「国家エネルギー非常事態」を宣言し、石油や天然ガスの増産を図り、バイデン政権が進めた電気自動車の普及策を撤廃する考えを示した。
トランプ氏は、WHO(世界保健機関)からの脱退や地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの再離脱の大統領令にも署名した。
アメリカのトランプ大統領の就任式を受けて、石破首相は「真摯(しんし)な議論を行い、信頼関係を確立したいと述べた。

石破首相:
トランプ新大統領の演説。「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」そのものだったと思います。真摯な議論を行い、信頼関係を確立したい。
石破首相は、「トランプ大統領は多国間の枠組みよりも2国間を優先する。世界平和、世界経済に、どう2国間の関係を生かせるか、真摯な議論を行いたい」と述べた。
また日米首脳会談について、「それほど時間はかからずに日にちは決まると思う」と述べた。
岩屋外相:
いよいよアメリカの新政権がスタートするんだなと(実感した)。
一方、日本の外相として初めて大統領就任式に出席した岩屋外相は、「トランプ政権が日米関係を重視している表れだ」と述べた。
席次から透ける狙い…IT大手のトップ一堂に会す
ここからは、フジテレビ・立石修解説委員室長が解説する。
青井実キャスター:
ーー世界が注目するトランプ大統領の就任式が行われました。第一印象はどうですか?

フジテレビ・立石修解説委員室長:
大統領宣誓式がホワイトハウス近くの議事堂で行われましたが、演説するトランプ氏に支持者らが立ち上がって拍手する中、賛同できない政策の際は、バイデン氏とハリス氏など民主党の議員は立ち上がらない。強烈な分断が残った印象を強く受けました。
青井キャスター:
依然として根深いということですね。宣誓式は人数が制限され、招待客はVIPに限られましたが、IT大手のトップが多く出席していました。ここからトランプ氏の狙いが見えてきますね。
立石解説委員室長:
もちろんバイデン氏のほかに、オバマ氏やブッシュ夫妻といった大統領経験者が勢ぞろいしましたが、注目が集まったのは、「GAFA」いわゆるIT大手のトップが一堂にそろったことです。
宮司愛海キャスター:
会場では、トランプ氏側近のイーロン・マスク氏がホスト役を務めていました。そこに、トランプ氏とかつて対立していた、メタ社CEOのザッカーバーグ氏が現れ、ゲストと談笑しています。さらにGoogleCEOのピチャイ氏、Amazon創業者のベゾス氏が夫人と共に現れています。
青井キャスター:
大手IT幹部の“トランプ詣で”のような印象ですね。
立石解説委員室長:
この幹部たちが就任式で座った場所を見てみたいと思います。トランプ氏の演台から向かって右側には大統領経験者。そして、左手にはトランプファミリーが座るのですが、そのすぐ後ろにマスク氏やGAFAトップたちが並んでいます。
青井キャスター:
つまり、元大統領やトランプファミリーと非常に近い位置にIT幹部らが並ぶというわけですね。

立石解説委員室長:
それだけIT幹部を重要視しているということです。席順もくわしく見てみます。イーロン・マスク氏の横にGoogleのピチャイCEOが座っています。そして、Amazon創業者のベソス夫妻が座っていて、その横にメタ社のザッカーバーグCEOが座っています。
ザッカーバーグ氏は、かつてトランプ氏と対立しており、大統領選後はファクトチェックの廃止など接近を図っていますが、距離的には少し距離を置いて座らされているという印象を受けます。TikTokのチュウCEOは端の方に座っていて、中国との距離を感じますね。
青井キャスター:
ーーこの顔ぶれや席順から、序列などが見えてくるものなんですか?
立石解説委員室長:
トランプ氏は製造業の復活を叫びながらも、テック産業を非常に重視している姿勢が垣間見えます。こういった企業は、資金力もあり、献金も期待できます。また、過去に対立したザッカーバーグ氏なども完全に配下に置いたという印象を与えたいという狙いもあるのではないでしょうか。マスク氏の存在感も増していくと考えられます。
青井キャスター:
選挙戦でも、トランプ氏はSNSを有効活用してきました。一方で、トランプファミリーも集合し、家族の結束もアピールしていましたね。

宮司キャスター:
メラニア夫人は、つばの大きな帽子をかぶって登場しました。つばが当たって、トランプ氏がキスができないシーンもありました。普段はヨーロッパのデザイナーを好むメラニア氏ですが、この帽子やドレスはアメリカ人デザイナーによるもので、「メイド・イン・アメリカ」への賞賛が国内で集まっているとのことです。
トランプファミリーが存在感増す
青井キャスター:
気になるのは、メラニア夫人との間の1人息子バロン氏ですね。

宮司キャスター:
大学生になり、表舞台に姿を見せることが減っていましたが、ホワイトハウス近くのアリーナで行われた式典では、カメラや声援を送る聴衆にアピールするシーンもありました。
立石解説委員室長:
バロン氏は18歳です。トランプ氏はネットやSNSの問題について、たびたびバロン氏の意見を参考にしているようで、トランプ氏は、バロン氏のことを『インターネットの王』と呼んでいます。ファミリーを重視するトランプ氏ですが、ネットの重要性が増す中で、若いバロン氏の存在は大きいものになっていくと思います。

青井キャスター:
その就任式で最も注目を集めたのが大統領令に「100近く署名する」という発言です。表明した大統領令が、「パリ協定」の再離脱、WHO(世界保健機関)から離脱、関税強化、不法移民の強制送還、議会襲撃事件の恩赦、TikTokの再開、石油採掘推進、テレワークの禁止、大量解雇可能、性別を男女のみとするなどがあります。
立石解説委員室長:
LGBTQの人々の権利については、一挙に議論が進む中、非常に時代に逆行する内容に見えますが、トランプ氏を支持するアメリカの保守的な人々の中には、同性婚などについて根強く反対する意見も残っています。そういう支持層へのアピールと考えられます。例えば、パリ協定の離脱なども石油産業などに配慮しているかと思います。
青井キャスター:
ーー山口さんは、この大統領令をどう見ていますか?
スペシャルキャスター・山口真由さん:
従前約束していた、例えば、移民、エネルギー、多様性については、その象徴的な方向性を明らかにしたと思いますが、関税がどの程度になるか、移民の退去をどの規模の人数にするか、その政策の強度というのは、今後見極めていかないとかなと思います。
青井キャスター:
ひいてはその関税、日本にも、もしかしたら影響が来るかもしれません。
立石解説委員室長:
大きな見出しを最初にぶち上げておいて、そこから妥協点を探るというのもトランプ氏の手法ではあるので、これがどう変わっていくかということですよね。
いずれにしても船は出始めたということだ。
(「イット!」1月21日放送より)