『2024くまもと この1年』今の熊本市の課題について、12月18日にトップの大西一史熊本市長を直接TKUの報道スタジオに招いた。後半は、運行トラブルが相次ぐ熊本市電や渋滞対策に向けた『都市高速』、そして『内密出産』について考えを聞いた。

熊本市電で相次ぐ運行トラブルの原因と対策

相次ぐ熊本市電の運行トラブルについて。2024年これまで(12月18日時点)に重大事故にあたる脱線をはじめ、信号無視ドアを開けたままの走行など14件のトラブルが発生している。この10年間の推移を見てみると、多い年でも2件、2024年は突出して多いということになる。なぜ2024年はこんなにも多いのだろうか。

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大西一史熊本市長
--まず、本当に申し訳なく思っています。市民の皆さんが安全で安心に乗れるということが、公共交通機関の絶対的に必要なことですので、本当にお詫び申し上げます。その上で、今までいろいろな経営のことであるとか。やっぱり熊本市でも赤字に陥ったり、非常に経営が不安定な中で、運転さんの雇用環境っていうのも、非正規の職員、いわゆる会計年度任用職員と言いますけれども、雇用が正規職員と違って安定してないものですから、どんどん辞めていく方も出てきたり、なかなか長く続かなかったり、経験値とかノウハウの継承ができてないこともあります。
--ですので、ここをしっかり改善しながら、安全を最優先にしながら経営も良くして。そして、また利用者の皆さんがたくさん乗っていただくことで、経営というのは安定していきますので、利便性も高めるということも合わせて取り組んでいきたいなと思っています。

当初予定されていた、『上下分離』というのは先送りされたが、運転士の処遇改善は先に取り組んでいくことを表明している。

大西一史熊本市長
--はい、今申し上げたように、運転手さんの待遇というのは安定することが非常に重要です。これは安全の運行でも重要ですので、その意味では『上下分離』はこの安全性を追求するためにもう少し時間をかけて精査しますが、待遇は『待ったなし』で、早く皆さんの待遇を、例えば100万円ぐらいを手当も含めて給料を上げて、安定的に生活できるようにすることを、しっかりお約束をしたいと思っています。

全国交通系ICの判断は2025年6月市議会以降

そして11月に熊本県内のバスと熊本電鉄で全国交通系ICカードが廃止された。今後、熊本市電の決済手段の判断については、どういう考えがあるのか。

大西一史熊本市長
--今の市電は、実はすべてQRコードからICカード、クレジットカードも全部使えるんですけれども、バスの方は更新費用が非常に負担だということで、断念されたということで、今まで使えたものが使えなくなったということは、本当に市民の皆さん、利用者の皆さんにご不便かけるんですが、これからクレジットカードタッチを2025年3月ぐらいにはバスも全部導入されることになります。実際に私もクレジットカードタッチを使ってますけれども、すごく便利でチャージもしなくていいので、これがもし利用が進めば、市電の方もシフトできるかなと判断できると思います。
--ただその時に、バスの状況をまず踏まえ、そして皆さんにアンケート調査をして、そしていろんな判断をいただきながら、(熊本市)議会でも議論していただいて、最終的に決めていきたいと思っています。

その熊本市電に関しての、全国交通系ICカード決済の継続か廃止の判断時期というのは、めどはいつごろになるのか。

大西一史熊本市長
--そうですね。やっぱり機器やいろんな物の調整がありますので、まあ2025年中ということになると思いますが、2025年度に入ってからです。まず3月頃にバスの方(の全国交通系IC決済を廃止してクレジットカード決済)がスタートしますので、それを見て、そしてアンケート調査をさせていただいて、そして6月議会ぐらいには、その辺の結果が多分お示しできると思いますので、その辺で議論していただくという形になるかと思います。

都市高速の概略ルートを2025年中に公表へ

続いては積年の課題、交通渋滞対策についてだ。グリーンスローモビリティやAIデマンドタクシーの取り組み、そして11月からJR新水前寺駅前での新たなバス停を設置するための実験。更に2025年には自動運転バスの実証実験も予定されている。熊本市がこれらの事業を行う狙いや今後の展望はどうなのか。

大西一史熊本市長
--まず、渋滞に関しては道路の整備や公共交通を充実させるということもありますけれども、やはり選択肢を幅広く用意することで、皆さんが乗りやすい環境は何なのかというのを追求しながら、新しい自動運転みたいな技術も出てきましたので、将来を見据えながら導入して、そして一番いいベストミックス、道路と公共交通のベストミックスを目指すということをやっていくことで『渋滞も半減させて公共交通の利用も増やそう』、こういう考え方で今さまざまなチャレンジをしています。

新たな高規格道路、いわゆる都市高速の計画も進められることになっているが、やはり一番の関心はそのルート。その検討の状況というのは今どうなっているのか。

大西一史熊本市長
--今、国や熊本県、そして熊本市で、いろいろな技術的な検討を加えているところです。それから環境の影響がないかどうかというのも、これからチェックをして、2025年中ぐらいには概略のルートが、このぐらいのところを通りますということを、皆さんにお示しできるように、今検討を進めている段階です。
--例えば、都市高速であると、やはり道路の上を通るんですね。ですから、用地買収があまりいらないということもありますので、そうやって交通混雑がしない、そして皆さんが都市高速を乗り降りしやすいような場所っていうのを十分に考えてルートを出していくことになるかと思います。

国会でも議論される『内密出産』

そして、最後に聞くのが、全国で唯一、熊本に存在する親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる『こうのとりのゆりかご』、そして母親が病院の一部の職員にのみ身元を明かして出産する『内密出産』をめぐる問題だ。この問題については、12月17日の国会でも石破首相から発言があった。

参議院予算委員会で、石破首相は「いろんな法律の組み立て方はあると思っている。例えば、「私は誰の子なの?」と聞く権利というものが、どのように位置づけられるかということについて、政府内でよく研究をして、何してもその赤ちゃんの権利、人の人権というものを最大限に重んずる、そういう法体系ができないかということ。私自身、よく認識を致したところでございます。政府内において、そういう観点から検討させたいと思っております」と述べた。

大西一史熊本市長
--私も国会の答弁を聞き、非常にこれは重たい発言をされたなと思っています。やっぱり熊本市としても、法律の整備をぜひお願いしたいということ。それから今、色々な『出自を知る権利』をどうするかということの検討会をやっている。こういったことを踏まえて、ぜひ政府にはいろいろと私どもからも提言をさせていただきたい、要望させていただきたいと思っていますので、石破総理には耳を傾けていただいて、この法制化の動きについても、ぜひ加速化していただきたいなと期待をしているところです。

検討会については、『真実告知』であったり、生みの親の情報をどう扱うかで、2025年3月に発表される報告書というのは、当事者はもちろんのこと、社会的養護の関係者にとっては事実上の初めてできる日本のガイドラインのようなものになっていく可能性がある。どのようなものにしたいという考えがあるか。

大西一史熊本市長
--そうですね、非常に慎重に検討していただいて多角的に、いろいろな賛否を含めて議論をしていただいています。この結果というのは、これから法制化をするにあたっても、大変参考になるものだと思いますので、これらの報告をしっかり受けて、そして国も具体的にいろんな検討していくということですので、十分参考にしていただけるように。お伝えをしながら前に進めていきたいと思っています。

大西一史熊本市長へのインタビューの前半
大西一史熊本市長に聞く 収支報告書の指摘に「行政歪めることは一切ない」 概算事業費約616億円の市役所新庁舎は「多くの市民の意見を聞きながら」

(テレビ熊本)

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