厚労省は10日、厚生年金に加入する「106万円の壁」を撤廃する方針を示した。撤廃によってパート従業員の働き控えが減ると期待されているが、企業側の負担が増えるこの案に企業側からは、悲鳴にも似た声が上がっている。
「106万円の壁」撤廃へ…企業からは悲鳴の声
厚生労働省で行われた年金部会で10日、いわゆる「年収の壁」をめぐり、新たな動きがあった。

厚労省は、厚生年金に加入する「106万円の壁」を撤廃する方針を示した。この壁の撤廃によってパート従業員の働き控えが減ると期待されている。
一方で、企業側からは悲鳴にも似た声が上がっている。

アキダイ 秋葉弘道社長:
ビックリしました。めちゃくちゃ影響ありますよ。この店の存続に関わる話。
さらに、秋葉社長は「日本の企業の中で中小企業がほとんど。企業がどれだけ厳しい状況にあるかっていうことも考えてやらなきゃダメです」と話した。

今回、撤廃が検討されている「106万円の壁」は社会保険料がかかる壁のことで、現在、パート従業員などは、勤務先の従業員が51人以上の企業で、週に20時間以上働き、年収約「106万円」以上受け取ると厚生年金に加入し、保険料を払わなければならない。

このため、年収106万円から手取りが減るため、働き控えの要因と指摘されている。厚労省は、今回、年収「106万円」の「賃金要件」に加えて「企業規模要件」も撤廃する方針だ。
しかし、「週20時間以上」の要件は残すため、今後、新たな壁となる恐れがある。

このため厚労省は、本人と企業が折半する保険料の負担割合について、両者が合意すれば、企業の負担を増やす特例を検討している。

対象を月給約13万円で、年収で156万円未満の人に限定し、時限的な措置とする方針だ。
企業側の負担が増えるこの案。保険料を企業が多く負担することになるため、パート従業員からは、「週20時間未満に抑えています。会社側が8~9割負担してくれるんだったら働こうかな」「子どもも独立して主人と2人だけなので、なんとか暮らしてますけど、いっぱい(手元に)残れば楽しく旅行行ったりできるから、欲しいです。お金は」と多くの喜びの声が聞かれた。

厚労省は、企業が保険料を多く負担する場合、軽減措置も検討するとしている。
パート従業員の生活どう変わる?「週20時間」が新たな壁に…
しかし、ファイナンシャルプランナーの資格を持つ、フジテレビ智田裕一解説副委員長は、こう話す。

フジテレビ 智田裕一解説副委員長:
特に中小企業にとっては社会保険料の負担増で、経営を圧迫される可能性があります。国が支援する場合、それは税金からということになれば、新たな不公平感に繋がらないか気がかりな面もあります。
今後106万円の壁が撤廃されると、パート従業員の生活にどう影響するのか。

智田解説副委員長は「厚生年金に加入することで、将来の年金受給額を増やすことが見込めるようになり、より柔軟な働き方ができるきっかけになる」と指摘。

「ただ『週20時間』というのが再び壁になって新たな『働き控え』を招く可能性があります。それを防ぐためには、企業の間で保険料を肩代わりする仕組みの導入がどこまで広がるかが、大きなポイントになります」とした。

厚労省は「106万円の壁」撤廃について、段階的に行っていき、時期について配慮していきたいとしている。
(「イット!」12月10日放送より)