実りの秋を迎え、生産者の頭を悩ませる「害獣」がいる。見た目はかわいらしいが、凶暴で鋭くとがった爪を持つ「アナグマ」だ。ハウスのビニールを破り、あっという間に侵入するという。
収穫間近のミカンが被害に
訪ねたのは、宮崎県綾町のミカン畑。畑には、動物によって食い荒らされた形跡が…。

かんきつ農家 児玉隆一さん:
ちょうど収穫間近になったミカンとかを食べる。せっかくお金になる寸前で、相当ダメージがある。

野生の動物による農作物への被害は、シカ・イノシシ・サルがトップ3だが、児玉さんの果樹園は高く頑丈な柵に囲まれていて、シカやイノシシによる被害ではなさそう。
では、サルが柵を乗り越えて侵入したのか?鳥獣被害の対策アドバイザーの見解は…。

農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー 室屋敦紀さん:
サルはちぎって持って帰って食べることが多いけど、残骸が落ちているので違う。
サルでもない。では、その正体とは…?先日、畑で捕獲されたということで見せてもらうと…。

児玉泰一郎アナウンサー:
あ、結構大きいですね。この生き物なんですかね?タヌキのような、『ガシャッ!』(檻にぶつかる)ものすごく狂暴です。この生き物は?

農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー 室屋敦紀さん:
アナグマです!
鋭くとがった爪で穴を掘り、柵の下から侵入
アナグマと言うが、実はイタチ科の動物。日本に古くから生息し、雑食で、甘い果物を好むアナグマが、ミカンを食べた犯人だった。

農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー 室屋敦紀さん:
この地際の部分を見てみるとここに穴が…
アナグマは地面を掘って、柵の下から侵入したということだ。

それを可能にしているのが、鋭くとがった爪。穴を掘りやすいようになっている。
アナグマの被害は各地で確認されている。えびの市の果樹農家に話を聞くと…。

えびの市の果樹農家 東洋一郎さん:
7月末に袋を破って中の実を食べられる被害があった。カラスが袋を破って食べることが過去にあったので最初カラスかと思ったんですけど。

監視カメラに映った「アナグマ」
男性の果樹園に監視カメラを設置すると、そこにはアナグマの姿が映っていた。アナグマは鋭い爪を使って木に登ることもできるそう。その鋭い爪を使った被害は他にも…。

農業用ハウスの外にいるアナグマ。シートに手をかけるとあっという間に穴を空け、20秒ほどでハウスに侵入。中のイチゴを食べられてしまった。施設に被害を与える度合いで言うと、アナグマは他の動物と比べてどうなのだろうか?
農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー 室屋敦紀さん:
ビニールハウスのなかに入ってくるのは、アナグマが一番多い印象を受けます。作物だけではなくて、ビニールハウスの修繕も大打撃を受けてしまう。

そのアナグマの被害に気を付けなければいけないのがまさに今の時期。室屋さんによると、アナグマは冬に備えるため、今の時期は春夏に比べると体重は1.5倍〜2倍近くになっているという。
収穫の秋というのは、アナグマによる被害を受ける事も一番多くなるそうだ。

アナグマは、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群=SFTSに感染しているケースもあるため、見つけても絶対に触らないようにする必要がある。

宮崎県のまとめによると、アナグマやタヌキなどの中小型獣による農作物などへの被害額は、2023年度が約2600万円で、シカ・イノシシ・サルに次いで多くなっている。
アナグマ対策は、掘り返しができないような柵や電気柵が有効。アナグマの被害があった場合は市町村の担当窓口に相談を。なお、自分の土地であっても、罠を仕掛ける際には市町村の許可が必要なのでご注意を。
(テレビ宮崎)