石川県・能登地方に大きな被害をもたらした記録的豪雨。その影響は守り継がれる“能登の宝”にまで及んでいました。

輪島市内の氾濫した川の近くに工房を構える男性が洗っていたのは、重要無形文化財に指定されている伝統工芸「輪島塗」の最終工程を行う前の物。

輪島塗「奥田五右衛門漆器店」上野 芳和さん:
本当はこの工程で水につけちゃいけないんですけど、泥をかぶった状態で塗り進むのは無理なので…。洗いたくないですけど、洗わないとどうしようもないから洗っているんで。

漆を塗るために乾燥が必要な物を、水で洗わざるを得ない状況になったと落胆していました。

そんな輪島塗を作る道具を取り扱うお店でも、店にあった道具が泥水につかってしまい、使えない状態になっていました。

輪島塗に用いる道具を取り扱う金物店 室 栄司さん:
輪島塗の産地ですので、沈金で使う刃物ですとか小刀とかを販売していたんですけど、全て水をかぶってしまいました。地震の後に、新しく工房を始める方のための準備をして仕入れたばっかりだったんですが、残念ながら手に渡る前にこういうことになってしまった。

室 栄司さん:
これは塗師屋さんが使うへらを削ったりする道具なんですけども、こういうふうに泥にまみれてしまうと、さびが出て使えないですよね。
“黄金色の稲穂”が見る影なく…
災害により脅かされた“能登の宝”は、「輪島塗」だけではありません。

世界農業遺産に認定されている輪島市「白米千枚田」。絶景の名所として親しまれるこの棚田は、1004枚もの田んぼが連なるその美しさから、年間50万⼈以上の観光客が訪れます。

そんな人気観光地も、豪雨により近くの山が崩れ、土砂が田んぼに覆い被さったり、棚田の土手が大きく崩れてしまいました。

9月3日に撮影された映像では、地元の人たちなどの懸命な修復作業の末、一部で黄金色の稲穂が実る光景もありましたが、その美しい田が今は見る影もありません。

米千枚田愛耕会 白尾友一代表:
4月からの“田植え”するまでの田作りとか、避難所から3時間ほどかけて通いながらやった作業なんです。やっと刈り取りも終わって、これからだって時に大雨で…。

大雨の前は「きれいになった千枚田を見にきてください」って言えたんですけど、今は言えないですね…本当に…言えないですね。
(めざまし8 9月27日放送)