アメリカのトランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に対して、約430億円の軍事援助の凍結解除と引き換えにオバマ政権時のバイデン前副大統領の息子の不正調査を迫ったとされる、いわゆるウクライナ疑惑。これに関して弾劾裁判所設置を問う下院の採決に向けた公聴会が行われ、関係者の証言が全米生中継された。

今回の放送ではこれを受け、アメリカ政治の有識者を迎え、来年の大統領選への影響も含めて徹底議論を行った。

公聴会で交換条件や圧力の存在は明らかになったのか?

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ジャーナリスト 木村太郎氏:
今回のテーラー駐ウクライナ代理大使の証言で見落としてはいけないのは、ウクライナ側(ゼレンスキー大統領)は7月25日電話会議のときに軍事援助が凍結されていたことを知らなかったと。するとトランプ大統領が軍事援助をめぐって圧力をかけたり交換条件を持ち出すようなことが、そもそも成り立たない。
電話の公開記録を見ても、交換条件とは一言も言っていない。2016年の米大統領選時にウクライナが関わっていたことと、ついでにバイデンのことも調査してくれと言っているだけです。

産経新聞ワシントン駐在特派員 古森義久氏:
事実としては、ウクライナ大統領が「私は全く圧力を加えられていない」と言っています。トランプの求めた調査もやっていないわけです。そして軍事援助の凍結も6〜9月の短い間でだけ行われています。

ジャーナリスト 春名幹男氏:
トランプ大統領の側近であるソンドランドEU大使がなぜキエフに行ったか。大統領に電話もして、「これはこういう交換条件だ」とウクライナ側に説明しているんです。彼自身は交換条件だと認めているのだから、このあとの公聴会にソンドランド氏が出てきてそれを言うかどうか。

産経新聞ワシントン駐在特派員 古森義久氏:
いや、認めていない。ソンドランド氏は、トランプ大統領が「交換条件にするな」と言ったと言っているんです。

トランプ大統領の責任問題は?

反町理キャスター:
つまり、大統領周辺の人間が外交官を通じてウクライナ政府に交換条件を求めたかどうか、ここの部分の話になるわけですか?

産経新聞ワシントン駐在特派員 古森義久氏:
大統領が絡んでいなければ、憲法上弾劾の対象にはなりません。

放送プロデューサー デーブ・スペクター氏:
道義的に問題にはならないのでしょうか? 今回証言したテーラー氏は外交のプロで、ウクライナへの関わりや愛情も深く、尊敬されている人です。サブチャンネルによる裏外交の必要性など熟知しているはずなのに、今回は違和感があった、失望したと言っているということは、道義的に大きい問題があるからこそでは?

ジャーナリスト 木村太郎氏:
そもそも、現職の副大統領(当時のバイデン副大統領)が、自分の息子の会社が捜査を受けているのを止めるために、ウクライナに対してアメリカの資金援助をストップさせると圧力をかけるというのは、完全に違法行為ですよね。そしてアメリカの憲法には、大統領は法律が守られているかどうかに注意しなければならない、と記されている。だからこれを捜査するのは大統領の責任だということになる。トランプにとっては、「お咎めなし」どころかやるべきことです。

バイデン前副大統領の疑惑により逆に民主党にダメージか

長野美郷キャスター:
ケント国務次官補代理の証言によると、2015年にバイデン副大統領(当時)の事務所に、息子のウクライナ企業幹部就任は利益相反の可能性があると伝えたとのこと。その後のバイデン氏の発言がこちら。「ポロシェンコ大統領(当時)に対して言ってやったんだ 私はあと6時間で帰るよ それまでに検事総長をクビにしなければ君らは10億ドルを手にすることはできないよねと そうしたらあの野郎はクビになったんだ」

反町理キャスター:
こんな自分の政治キャリアに大汚点を残すような発言、民主党は返り討ちにあうのはわかっていたでしょう? すると、民主党の最終的な狙いはトランプ弾劾なのか、それともバイデン抹殺なのでしょうか?

ジャーナリスト 春名幹男氏:
今回、トランプの弾劾調査を決定したのはナンシー・ペロシ下院議長です。アイオワでの世論調査でウォーレン氏がバイデン氏を上回っているように、バイデン氏は候補として弱くなりつつある。バイデンはもうおしまいだから、トランプと相討ちにさせようという狙いでしょう。

産経新聞ワシントン駐在特派員 古森義久氏:
民主党の中でも、ウォーレンやサンダースを支持する人はバイデンを支持しません。民主党では、弾劾を行おうという過激な勢力をナンシー・ペロシらが抑えてきたのだが、それが先日の選挙で下院の勢力が逆転して弾劾調査をできる状況になってしまった。

ジャーナリスト 木村太郎氏:
しかし弾劾の手続きが共和党多数の上院にまで進んだら、息子のハンター・バイデンもバイデン本人も召喚されますよ。下院でなぜでバイデン問題を扱わなかったかということで、シフ委員長も呼ばれるかもしれない。

来年の大統領選を見据えた狙いとは?

産経新聞ワシントン駐在特派員 古森義久氏:
今回の弾劾ストーリーは、あまりにも結果がわかりきっているわけです。絶対にトランプ解任にはならない。下院では議決されるとしても、上院になった途端に終わり。その間にトランプを叩いて一般のイメージを悪くしようという選挙対策です。

反町理キャスター:
ただこのプロセスの中で、トランプ大統領に対する不信感がアメリカの有権者の間に広まれば、世論の声の影響で上院における共和党議員の動きも変わってくるという見方もあるのでは?

ジャーナリスト 木村太郎氏:
逆がある。共和党、つまりトランプが勝った州で民主党の議員が最終的にトランプ弾劾に賛成するかどうかがわからない。

放送プロデューサー デーブ・スペクター氏:
トランプ支持者は、トランプ大統領のよくない部分もわかって支持しています。そこで浮動票の人がどうなるか。

ジャーナリスト 春名幹男氏:
もともとラストベルトにおける共和党支持者は多かったが、去年の中間選挙ではおおむね負けています。したがって民主党が盛り返しているのは事実だろうと思います。

ジャーナリスト 木村太郎氏:
トランプ陣営の新しいプロモーションVTRを見ると、やはり弾劾を意識しています。民主党は弾劾の話ばかりで政策論争をしていないが俺はやっているぞ、というトランプのメッセージ。1998年のクリントン弾劾のときに、共和党が弾劾の話ばかりでそのあとの中間選挙にぼろ負けしたことが背景にあります。

産経新聞ワシントン駐在特派員 古森義久氏:
VTRでは最初に軍事予算の話、次に国内経済の話。象徴的なのはウクライナにも軍事援助を与えているということ。アメリカは強いんだ、オバマの民主党政権とは違うというメッセージです。弾劾の話になってきたときに、むしろトランプ陣営のモチベーションは高まっています。ボランティアの学生なども増えていますね。

BSフジLIVE「プライムニュース」11月14日放送分

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