5月19日、パイレーツ戦に先発登板したシカゴ・カブスの今永昇太。
6勝目をかけた登板も勝敗はつかず。それでも7回無失点のピッチングで防御率は驚異「0.84」と両リーグ唯一の0点台をマーク。
この記事の画像(6枚)さらに、この数字は防御率が両リーグで公式記録となった1913年以降、デビューから9試合の登板で最も低い記録となり、大谷翔平と共にもう1人の「SHO“昇太”TIME」の活躍を見せている。
ではなぜ、ここまでの活躍ができているのか?侍ジャパンで実際にボールを受けたキャッチャーと、メジャーリーグでノーヒットノーランを達成したフジテレビ『すぽると!』の解説者に聞いた。
「WBC侍ジャパンの投手陣で1番のコントロール」
WBCのブルペンキャッチャーとして侍ジャパンに帯同し、実際に今永のボールを受けた鶴岡慎也氏(元日本ハム、ソフトバンク)はこう語る。
「(WBCメンバーで)一番コントロールがいいのは今永といっても過言ではないくらいですね。梶原ブルペン捕手とも『今永のコントロールすごいですね』と話していました」
大谷翔平、ダルビッシュ有、山本由伸など、メジャーで活躍するそうそうたる投手陣を差し置いて、WBCメンバーの中でも一番という評価を受けるコントロール。
今シーズン、ここまで209人の打者を相手に、与えたフォアボールはわずか9個。精密機械のようなコントロールをみせている。(5月19日現在)
鶴岡氏はその精度について、「(今永は)ブルペンで一つ一つの球種を『全コースにストライク行きます』、『ストライクからボールにするチェンジアップいきます』とか『高めのカットボール行きます』とか全部宣言して、その通りに投げてくるんですよ」「自分がここに投げるって宣言して、その通りに投げるピッチャーってなかなかいませんので」と高く評価した。
さらに今永は自身の思考や投球に対する理論を言語化することに長けていることから、ついた愛称は『投げる哲学者』。
そのことについても鶴岡氏は「今永投手(身長178cm)は空振りが取れるピッチャーと言われる選手たちより10cmぐらい低い位置からリリースを出しています」
「それは自分がいろいろ考えて作り上げたフォームだと思いますし、上半身をうまく使って投げている感じがするんですけど、下半身の動きが常に一定で、この出力の出し方がもう他のどのピッチャーよりも素晴らしいなと僕は感じますね」
「体のメカニック的なことも、ものすごく考えながら投げてるんだろうなと。“投げる哲学者”と言われているみたいですけど、そのニックネームにそぐうピッチャーかなと私は思いますね。メジャーで活躍しているのも納得です」
メジャーで活躍したレジェンドが語る“高めのカットボール”
さらにメジャーリーグで投手としてプレーし、ノーヒットノーランも達成した野球解説者の岩隈久志氏。今永選手の“あるボール”について語ってくれた。
「コントロールが良いっていうのもあるんですけど、実は“浮き上がるカットボール”を投げていいます」
「ストレートの握りよりも、人差し指と中指を少し空けて手首を寝かしているんですけど、投げる瞬間に中指を押し込むようにして最後リリースすると、バッターの胸元に浮き上がるようにしてカットボールになって曲がって来ます」
「今永投手は身長も低くリリースも低いので狙って浮き上がるボールを投げています」
メジャーでは浮き上がるカットボールを投げている選手が多い。実は5月20日に日米通算200勝を達成したあの投手も投げている。
岩隈氏はこう続ける「最近投げている投手が多い中で、昨年僕がダルビッシュ有投手とキャンプ前にキャッチボールをした時に、遊びで色々な変化球を投げてくる中で『岩隈さん、“浮き上がるカットボール”投げて良いですか』って言われた時に『なんだそれは?』と」
「僕は知らなかったので、実際に受けたときにボールが真っ直ぐのように来て、どこで曲がるか分からないスピードでぎゅっと曲がって、浮き上がるように見えるのでバッターからしたら相当厄介なボールですね」
現在メジャーの打者はバットを下から出すのが主流のため、高めのボールが有効になると言われている。
そのため身長が低く、投げるときのリリースが低い今永はボールの回転数も多いため、よりボールが浮き上がるように見えると言う。それこそが、岩隈氏も語る新たな武器”浮き上がるカットボール”だ。
メジャー1年目の30歳。オールドルーキーながら並み居る強打者を圧倒している今永。
『投げる哲学者』として新人王だけではなく、日本人では誰も成し遂げていないサイヤング賞候補としても名前が挙がっている。
侍の左のエースがどんな記録を残すのか目が離せない。
『すぽると!』
5月25日(土)24時35分
5月26日(日)23時45分
フジテレビ系列で放送中