イスラエルとハマスの衝突が半年に及び、バイデン大統領が即時停戦を要求した。
きっかけは、イスラエルの空爆でアメリカ人道支援団体スタッフが死亡し、国際社会の怒りが高まったためだ。
しかし、イスラエルはガザ地区での攻撃を継続し、人道危機が深刻化している。

7人が死亡したイスラエル軍の攻撃に、各地から怒りと悲しみ

イスラエルとハマスの衝突がはじまり、5日で半年になる。バイデン大統領も、ついに即時停戦を要求したが、停戦に繋がる可能性はあるのだろうか。
今後の見通しについて、取材センター室長・立石修が解説する。

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こうした動きのきっかけとなったのは、イスラエルの空爆によるアメリカの人道支援団体のスタッフ死亡事件だ。この事件を受けて、イスラエルに対する怒りや波紋がアメリカやヨーロッパで、更なる広がりをみせている。

攻撃を受けたのは、ガザ地区で食糧支援を行っていた「ワールド・セントラル・キッチン」の車両だ。その車両をイスラエル軍が空爆し、スタッフのイギリス人やアメリカ人など7人が死亡したものだ。

このとき、イスラエル軍は「スパイクミサイル」と呼ばれる対装甲車用のミサイルで攻撃。トヨタのハイラックスはひとたまりも無く貫通しており、非常に残酷な攻撃が行われたことが分かる。
スタッフが病院に運ばれる様子を見ると、既に布に包まれており、即死状態だったとみられる。

亡くなったスタッフの家族や友人からは、イスラエル軍に対する怒りの声が上がっている。空爆で死亡したアメリカ・カナダ国籍のジェイコブ・フリッキンガーさん(33)の父親は「攻撃は意図的なものだった。狙われていた。イスラエル軍から許可をもらい、息子たちは活動をしていた」と話している。

その上で、両親は「イスラエルが何を考えているかわからないが、パレスチナの人々を飢えさせるという試みだ。この戦争は無意味だ」と強い怒りの言葉を発している。

そして4日、ポーランドのプシェミシルという町では、同じく亡くなったポーランド人スタッフ・ダミアン・ソルボさん(35)を追悼するため多くの市民が集まり、ろうそくをともしていた。
市民の1人は「ダミアンさんは、イスラエルに殺された」と、怒りと悲しみを持って話している。

犠牲になった方々の家族や友人の怒りや悲しみで、風向きを変えつつあるバイデン大統領から即時停戦が必要だと厳しい警告を受けたイスラエルは、攻撃の手を緩めたのだろうか。

残念ながら、イスラエルはガザ地区で激しい攻撃を続けている。
南部ラファで4日に撮影された映像では、イスラエル軍による空爆で亡くなったとする子供の遺体を抱いて父親が泣いている様子が映っている。亡くなったのは男の子と女の子だったようで、父親は遺体にキスをしている。非常に痛ましい映像だ。

エレズ検問所再開も…物資が行き届かない可能性

国連とNGOのデータでは、2024年の5月までにガザ地区は飢餓状態に陥り、大量死が起きる可能性があると指摘されている。

こうした状況への国際的な非難を受けた事もあり、イスラエルは先ほど封鎖されていたエレズ検問所などを再開すると発表した。これで事態は改善されるのだろうか。

事態の改善は、厳しいと思われる。
今回 解放されるのは、北部に位置するエレズ検問所とアシュドッド港。これまで物資の搬入は、南にある2つの検問所からのみで、北部には物資が行き届かず深刻な状況だった。

ここが開けば、大量の物資を入れられるはずだった。
しかし、北部は最大の病院であるシファ病院も焼き尽くされ、医療や衛生面からも非常に厳しい地域だ。

ここに、どれだけの支援物資を搬入できるか、実際にコントロールするのはイスラエルであり、注意して見ていく必要がある。

イスラエルは、ハマスとの戦いは続けると言っている。アメリカも、イスラエルへの軍事支援を本当に見直すかどうかもまだ予断を許さない状況だ。

ハマス殲滅のための、最終的な目的はどこにあるのだろうか。

イスラエル軍が公開する攻撃の様子
イスラエル軍が公開する攻撃の様子

イスラエル軍がハマスを殲滅させたといえる明確な目標は、ハマスのリーダーであるヤヒヤ・シンワル氏の殺害や拘束であるとみられる。

シンワル氏は、まだガザ地区の地下などに潜伏して攻撃を指揮しているとみられ、シンワル氏に対して、イスラエル軍が何かアクションが起こせない限り戦争が続く。

また、両親を殺されたといった若者たちが、ハマスに入るという連鎖も起きており、非常に混迷した状況になっているとみられる。
(「イット!」 4月5日放送より)

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