2月20日に開会した静岡県議会2月定例会は3月5日に質問戦を終えた。今回の質問戦では、川勝知事が能登半島に対する支援会議を欠席した問題を含む危機管理意識について攻勢を強めた自民改革会議。しかし、知事が従来の姿勢を崩すことはなかった。

首長欠席は静岡のみ…知事は新年会に

現在開会中の静岡県議会2月定例会では、最大会派・自民改革会議の所属議員が会派としての代表質問も含めて、次々と川勝平太 知事の危機管理意識についてやり玉にあげた。

事の発端は1月4日。元日の能登半島地震を受け、石川県や愛知県、静岡県など中部地方の9県と名古屋市は支援体制や現況を共有するためオンラインの連絡会議を急きょ開催したが、そこに川勝平太 知事の姿はなかった。代わりに静岡県の“代表”として出席していたのは黒田健嗣 危機管理監で、首長が出席しなかったのは10自治体の中で静岡県だけだ。

川勝知事の代理で会議に出席した黒田危機管理監(1月4日)
川勝知事の代理で会議に出席した黒田危機管理監(1月4日)
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その後、川勝知事が同時間帯、地元新聞社・放送局主催の賀詞交歓会“新年のつどい”に参加していたことが明るみになると、県議会の自民改革会議と第3会派の公明党県議団が問題視。

自民会派と公明会派による申し入れ(1月11日)
自民会派と公明会派による申し入れ(1月11日)

1月11日には「知事の危機管理の対応は、静岡県の危機管理を預かるトップの判断として極めて不適切。今回の件は、ただ単に知事がひとつの公務を放棄したことにとどまらず、知事及び県庁組織の危機管理に対する意識の低さが露呈したものとみなされる」と怒りの申し入れをするに至ったが、あくまでも否を認めることのない川勝知事に公明党県議団の蓮池章平 団長は「一連の行動は間違っている」と面と向かって苦言を呈した。

川勝知事は自らの正当性を主張

このように川勝知事は問題が表面化して以降、「我々は先に助ける体制を整え、先行して救援に入っていた。ですから、あとは(会議で話を)聞くだけということ」と自らの正当性を主張していて、その姿勢は申し入れを受けた後も変わっていない。

川勝知事の定例記者会見(1月15日)
川勝知事の定例記者会見(1月15日)

1月15日の定例記者会見では「欠席したのではない。県として危機管理のトップが出席している。支援に支障を来たしたわけでは一切ない」と強調し、「その時間は各界の代表が集まる賀詞交歓会があったので、私は賀詞交歓会でいま静岡県が行っていること(支援)を説明するということで、そちらを優先した。問題はまったくない。被災地のために仕事をしているので失礼なことをしたと思っていない」と断言している。

最大会派による厳しい追及次々と…

このため、2月20日に開会した県議会2月定例会は自民改革会議による追及の嵐となった。

まず、代表質問では河原崎聖 議員が「発災直後のタイミングで行われる会議は、実務的な話し合いの場というよりも、当面の人命救助や今後の復旧・復興に向けて被災県に寄り添う姿勢を確認する場と受け止めるのが妥当。とすれば、県民を代表して静岡県の姿勢を伝えることが出来るのは行政の職員ではなく、県民による選挙を通して選ばれた公職である知事本人でなければならないのは自明のこと」と指摘。

代表質問を行う河原崎議員(2月27日)
代表質問を行う河原崎議員(2月27日)

しかし、川勝知事は「代理出席も認められていた。公務として各界に被災地支援を呼びかけるために新年のつどいに出席した。私としては会議で話すべきことは事前に(石川県の)馳知事に伝えていた」と従来の説明を繰り返すのみ。

これに対し、伊豆半島南部を選挙区とする下田市・賀茂郡選出の加畑毅 議員は一般質問で「静岡県は災害対策に対する意識が低いのではないかという批判を受け、逆に(県民に)不安を与えてしまったことは大変残念に思う」と切り出した。

加畑議員によれば、伊豆半島は能登半島と地形が似ているほか、高齢化や過疎化が著しいといった特徴が共通しているため、今回のような災害が静岡県で起きた場合に「(能登半島と)同じような状況になるのではないか?」という不安の声が住民から聞かれるそうだ。

だからこそ、「あの会議に出席しなかったら、どういう事態が起きるのか。県民をどういう気持ちにさせてしまうのかわかっていたはず。やっぱり出ておけばよかったという気持ちにならないのか?『ならない』と言うのであれば、伊豆半島の人をまた不安にさせてしまう。逆の立場になった時に我々は守ってもらえないかもしれないという不安に陥ったことは確か」と詰め寄った。

だが、川勝知事は「出ていれば良かったという風には思っていない。十分に議論をした上で、会議には私と同等の権限を持っている危機管理監が出席し、私が新年会に行って支援を訴えるという役割分担をした。『静岡県の災害対応への意識が低いのでは』というの(批判)は当たらない」と答弁。これには議場から騒めきのような声が漏れた。

「適切」を強調し続ける川勝知事

今回の能登半島地震では、県内でも袋井市で震度4の揺れが確認されたほか、11市で震度3を観測している。

情報収集を行う県の職員(1月1日)
情報収集を行う県の職員(1月1日)

県の基準によれば、県内で確認された揺れが震度4の場合は情報収集体制に該当し、知事が登庁する必要はない。とはいえ、これだけでの大災害であり、被災地から様々な支援要請が想定される中で、年末から年始にかけて長野県内の自宅に滞在していた川勝知事が陣頭指揮を執るべく静岡県に戻ったのは1月4日午前だった。

川勝知事の年頭訓示(1月4日)
川勝知事の年頭訓示(1月4日)

それゆえに小沼秀朗 議員が「職員が元日から対応する中、4日に登庁し『能登半島地震は他人事ではない』と訓示を述べても、知事が被災地に対してとった行動から他人事のような政治姿勢が職員や県民に示された」と糾弾したほか、飯田末夫 議員も「交通機関の情報を確認した上で、すぐにでも静岡に戻るべきではなかったか」と質問。

ただ、「初動体制としては適切だった」との認識が繰り返し示されるだけだった。

静岡県について「防災先進県」と自負し、ことあるごとに「危機管理は県政の最重要課題」と公言している川勝知事だが、一連の行動は県民の目にどのように映っただろうか。

(テレビ静岡)

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