1月末に広島市内の横断歩道で歩行者がタクシーにはねられ重体に。逮捕されたドライバーは84歳だった。職業ドライバーの高齢化が問題になっているが、解決策はないのだろうか。県警担当記者が取材した。

なり手不足で高齢ドライバーに頼らざるを得ない

1月29日、広島市の横断歩道でタクシーが高齢男性をはね、意識不明の重体に。逮捕されたのは84歳のタクシードライバーだ。

この記事の画像(17枚)

現場は見通しの良い直線道路で、警察は前方不注意が原因の一つとみて調べている。

高齢ドライバーによる事故が社会問題化する中、タクシーやバスなどの業界は高齢のドライバーに頼らざるを得ない人手不足の問題を抱えている。

宝塚タクシーグループ 専務取締役 信原康さん:
ドライバー不足は、もうずっと続いてる状況。乗務員の数を維持するためには「多少でも、一年、もう一年頑張ってくれないか」というような気持ちで、頑張ってもらっている状況が続いている。定年は以前は65歳だったが、最近70歳に変えた。そうしないと乗務員不足に対応できない

さらに、物価高騰の影響で高齢者も働かざるを得ない状況があるという。
宝塚タクシーグループ 専務取締役 信原康さん:
正直言うと、年金だけでは足りないからというのが、続ける理由のほとんど

毛利祥子記者(県警担当):
今回取材した会社では人材確保のため、若い人にも見てもらえるようなホームページを作るなど、発信に力をいれ、実際に20代の若い人材が入ってきたという。ただ、人手不足を解決するまでには至っておらず、ドライバー不足と「高齢化問題」の根は深い。

広島のタクシードライバーの平均年齢64歳

毛利記者:
広島県タクシー協会によると、60歳以上のドライバーがおよそ7割を占め、平均年齢は、およそ64歳。

毛利記者:
ドライバーの数自体も減っており、2016年度には8000人余りだったのが、2022年度末にはおよそ6000人と6年で2000人、25%も減っている。現在は、コロナ禍が明け、客足が回復した反面、タクシードライバーが足りない状況に陥っている。

西山穂乃加アナウンサー:
つまりタクシーに乗る人が増えたが、ドライバーが少ないということは、1人当たりの収入は増えているということ?

西山穂乃加アナウンサー(左)
西山穂乃加アナウンサー(左)

毛利記者:
その通り。給料は増えているようだが、会社にとっては社員が減った分、全体の売り上げがコロナ禍前より減り、経営が厳しいという会社がほとんど。

個人タクシーは一部で80歳未満に引き上げ

毛利記者:
また、ドライバーの年齢は「個人タクシー」については国が75歳未満という年齢制限を設けているが、担い手不足の解消などを目的に一部地域で80歳未満に引き上げており、広島県でも三原市や庄原市などで、1月から引き上げられた。

毛利記者:
ドライバーの高齢化では、事故の件数も問題になっている。国の資料によると、年齢とともに事故件数は増え、60歳以上はその割合が大きいことがわかる。

毛利記者:
こうしたことで、あるタクシー会社では、事故防止のため、最年長の70代半ばのドライバーには、毎日、管理職が2人以上で健康状態の確認を強化しているという。また、お客さんを乗せている「実車時」と乗せていない「空車時」の事故件数では「空車時」のほうが多い。

毎日ハンドルを握るドライバーにも話を聞いた。
Q:前方を走るタクシーが高齢ドライバーだったら心配?
宝塚かもめタクシー 秋田勇造さん:
あります。あります。怖いですね。やはり、年とったら、にぶるんですかね。ウインカー出すのも遅いし。そういうところでやはり、もっと慎重に運転してもらわないと怖い面もあります

Q:80代半ばくらいまでタクシードライバーするイメージありますか?
宝塚かもめタクシー 秋田勇造さん:
ありません
Q:いくつくらいまでかなと
70歳くらいまでですね

ライドシェアがドライバー不足の切り札になるか

毛利記者:
高齢ドライバーの皆さんも生活のためという方も多いわけだが、女性や初心者など幅広い層がドライバーに挑戦できる環境と仕組みづくりが大切かと思う。
そして、新たな取り組みとして、国は一般ドライバーが、有償で客を乗せる「ライドシェア」をタクシー会社の運行管理の下で、2024年中に一部解禁する予定。海外ではタクシーに近い感覚で利用する人が多く、今後はこのライドシェアが人手不足解決の糸口となるかが注目されている。

毛利祥子記者
毛利祥子記者

ドライバー不足が深刻化する中、ライドシェアなどの規制緩和と自動運転の技術を使ったバスや小型モビリティーの拡充といった対策が急務になっている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。