毎年2月から3月にかけて、多くの人を悩ませる「花粉」。飛散時期になると花粉症患者を中心に外出が控えられ、レジャーや小売、外食関連の個人消費が低下するとも報告されている。政府が2023年、花粉の発生量について、30年後に半減させると表明し、花粉症対策に注目が集まっている中、花粉の飛散量が少ない「少花粉」、「無花粉」スギの開発が宮城県内などで進んでいる。

花粉の飛散量大幅減「少花粉スギ」

宮城県林業技術総合センター
宮城県林業技術総合センター
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 宮城県大衡村の県林業技術総合センター。東京ドーム18個分の広大な敷地の一角では、
少花粉スギの「幼苗」と「種」が育てられている。

少花粉スギの母樹
少花粉スギの母樹

 少花粉スギとは花粉の飛散量が一般のスギの1%以下のもののこと。県では現在5品種・7千本の母樹(繁殖のもととなる木)から14万本の少花粉スギを流通させているという。

少花粉スギの特徴は枝の先端。一般的なスギと比べて、花粉を出す雄花が育っていない
少花粉スギの特徴は枝の先端。一般的なスギと比べて、花粉を出す雄花が育っていない

患者数は国民の40%以上 国をあげて進む対策

 患者数は国民の40%以上とも推計されるスギ花粉症。

 政府は2023年、「国民を悩ませ続けている社会問題だ」とし、伐採や苗木の植え替えを進めることで、スギの人工林を10年後に2割程度減少させ、30年後には、花粉の発生量を半減させる目標を示した。

 宮城県も2023年6月、2027年度には県内に流通するスギの苗木の半数にあたる40万本を、2032年度にはすべてとなる80万本を花粉の少ない苗木に置き換えると表明。

 このセンターでも幼苗を育てるハウスをここ数年で3棟から5棟に増やすなどして流通量の向上に努めているほか、種の生産の手間を省くことができる新たなハウスも導入し、2032年度までに出荷量も大幅に増やしたいとしている。

ついに「無花粉」のスギも

 着々と少花粉スギの生産が進んでいるが、さらに宮城県で現在進んでいるのが、「少花粉」ならぬ、「無花粉」のスギの開発だ。実は、有花粉スギの中にも無花粉の遺伝子をもつスギがあり、有花粉の遺伝子を「A」、無花粉の遺伝子を「a」とすると、「aa」となるスギは無花粉となる。

 一方、実際に流通するまでには時間がかかるという。無花粉のスギを作り、植栽できたとしても5年程度の成長をみて、国の品種登録の基準に適するかどうかを確認しなければならない。

 県は、2035年度の流通開始を目指していて、このセンターの千葉利幸企画管理部長は、「これから植え替えられるスギの苗木は、そういった花粉症対策の苗木にしていくと。それに耐えうるだけの種とか幼苗を供給していきたい」と意気込んでいる。

宮城県林業技術総合センター・千葉利幸企画管理部長
宮城県林業技術総合センター・千葉利幸企画管理部長

 民間の研究機関によると花粉の飛散時期になると患者を中心に外出が控えられ、レジャーや小売、外食関連の個人消費が低下すると報告されている。

 花粉症をもつ患者の快適な生活、そして経済への影響に対し、少花粉、無花粉スギが救世主となるのか。今後の展開に注目が集まる。

どうなる今年の花粉の「飛び始め」「飛散量」

 今年ポイントになりそうなのは、花粉の飛び始める時期。

 民間気象会社は、2月上旬に九州や四国、関東地方あたりから始まると予想しているが、西日本では1月に飛散が始まっている所もあり、暖冬の影響で早まる可能性もあるという。

 また、花粉の飛散量については、全国的に例年並みか、例年よりやや多くなるとみられている。仙台市内の耳鼻咽喉科でも、敏感な人はもう症状が出ていて、今年は患者の出足が早いという。

大切なのは「体に花粉を入れない」

 花粉対策で大事になるのは、とにかく花粉を体の中に入れないこと。例えば、普通のマスクとメガネをするだけでも、何もしない時と比べて6割程度、体の中に入る花粉の量を減らすことができるという。

 特にこれからの時期は、晴れて暖かい日、風が強い日、雨上がりなどは花粉が飛びやすくなる。症状をなるべく抑えるためにも、日々の気象情報をこまめにチェックすることも大切だ。

(仙台放送)

仙台放送
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