110年前の大正噴火を教訓に、桜島で大規模噴火を想定した訓練が行われた。一方、観光資源として注目される桜島に、活火山の息吹と自然の壮大さも感じることができるインバウンド向けのツアーが企画された。
今とこれからの桜島を取材した。
大正噴火から110年 毎年実施の噴火訓練
活発な活動を続ける鹿児島市の活火山・桜島。1914年(大正3年)1月12日に発生した大正噴火では噴煙が約1万8,000mまで上がりマグニチュード7の地震も発生。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/e/700mw/img_1e2abd0013d385fbff1103d42dcf073356187.jpg)
死者・行方不明者は58人に上った。流れ下る溶岩により桜島は大隅半島と陸続きになった。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/d/700mw/img_adfa7bae9f254ce3c8d2407290ec183592011.jpg)
多くの犠牲者を出したあの噴火から110年たった2024年1月13日、鹿児島市で大正噴火のような大規模噴火を想定した訓練が行われた。桜島全域に避難指示が出されたとの想定で、島の住民たちは対岸の鹿児島市・名山小学校に避難した。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/6/700mw/img_56e9933c82f601bf4fd9041a4c1e933c98010.jpg)
訓練では非常食の配布や災害用トイレの展示なども行われたほか、大正噴火についてのパネル展示などもあった。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/2/700mw/img_524c6f5a895a9bcf0a35047a84d24c0246908.jpg)
訓練は毎年行われているが、大正噴火のような大規模噴火の発生について参加者からは「いつも(噴火の音を)聞いているからあんまり。本当は真剣に考えないといけないんだろうけど」「今のところ危機感は感じない。その場になってみないと分からない」などといった声が聞かれた。
噴火の歴史から考える災害対策
桜島では2023年、215回もの噴火が観測され活発な活動が続く。桜島研究の第一人者、京都大学防災研究所の井口正人教授に桜島の現状を聞いた。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/7/700mw/img_679ad993c9db6b6cf55532e26a702bbd109188.jpg)
京都大学防災研究所・井口正人教授:
大正噴火に関連したマグマの量の90%(に相当する量)は、すでに桜島の北、鹿児島湾奥の「姶良カルデラ」の下にたまっている。大規模噴火を起こすだけのマグマはすでにある。起こるかどうかは姶良カルデラの下のマグマが桜島に向けて多量に動いてくるかどうかにかかっている。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/3/700mw/img_d385c5b1281f27ee5b5ca7f0152151d2109853.jpg)
地下にマグマがたまり続ける中、2022年7月24日午後8時5分の爆発(噴火の一種。大きな空気振動、噴石の飛散状況などにより桜島では「爆発」との表現が使われることもある)では、弾道を描いて飛散する大きな噴石が火口から東方向約2.5km、住民の居住地近くにまで達した。
噴火警戒レベルが3(入山規制)から一気に最高ランクの5(避難)に引き上げられ緊張が走った。このときは大規模な噴火には発展しなかったが一部地域の住民には避難指示が出された。
この噴火警戒レベルについて井口教授はこう語る。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/700mw/img_8b7d5af0dff2d20dbf22ceb1e3b7b3cd91659.jpg)
京都大学防災研究所・井口正人教授:
低いレベルの場合、レベルの数字と警戒を要する範囲は対応する。レベル5はそこから上がない。際限がない。3kmの場合もあれば全島の場合もある。
大正噴火から110年。いざという時にどんな行動を取るのか、節目の年に改めて考える必要がありそうだ。
桜島の生命力と自然の壮大さ
その一方で、鹿児島市が日本を訪れる外国人、インバウンド向けに企画した、高付加価値ツアーも企画されている。その一つで、普段立ち入り禁止のエリアを探検する桜島のツアーを取材した。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/a/700mw/img_fad898afc6d065d61d274bed8b0fc24884135.jpg)
桜島のふもと、鹿児島市野尻町。通常は工事関係者エリアしか入れないエリアを特別に探検できるのがインバウンド向けに企画されたツアーだ。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/9/700mw/img_f9410bc6ed78a1e93e1aaee4eba5f86391058.jpg)
ツアーは土日限定で、1人2万円で体験できる。今回、海外へのPRを兼ねて、インスタグラムのフォロワー数20万人超、日本中を旅するインフルエンサー・クリスティーナさんが体験した。
「ドキドキします。特別感がありますね!」と興奮気味に語るクリスティーナさん。電動アシスト自転車に乗ってぐんぐんと桜島を上っていく。
桜島の噴火警戒レベルは現在、5段階のうち「入山規制」の「レベル3」。立ち入りが規制されている火口からおおむね2kmのエリアのそばまで、ガイドの案内を受けながら安全を確保しつつ近づいた。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/0/700mw/img_60312a581858c6e4bc97b934cc5dc0d7116325.jpg)
桜島ミュージアム・押川蓮斗さん:
ここは遊砂地といって土砂をためておく広いスペースになりますね。
生きた火山・桜島のありのままの姿を感じてほしいと設定されたこのツアー。自転車を走らせること約30分、桜島の火口に最も近づけるスポットに到着した。
クリスティーナさん:
すごい…こんな近くまで来て。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/c/700mw/img_ac5e4cbb193bf14ef7faf25e05ac579c102539.jpg)
桜島の北岳がすぐ目の前に。何百年とかけて流れてきたであろう土石流の跡もはっきりと分かり、自然の壮大さを感じることができる。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/a/700mw/img_0a9537862d60cc7025b71f3e88e6299c82993.jpg)
クリスティーナさん:
素晴らしい鹿児島の自然をいつか自分の目で見てほしくて、自然を味わえる動画を作れれば良いと思います。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/7/700mw/img_8784f1864376e30d64fedb027cff1aa5113025.jpg)
ツアーを実施するNPO法人桜島ミュージアム・押川蓮斗さんは「(桜島は)生きている火山、噴火している島として世界的に見ても希少な場所。世界の人にも知ってもらって鹿児島の観光資産を存分にPRしたい」と語る。
大規模な噴火、災害への備えが常に求められる一方、活火山の息吹が目の前で体感できる桜島。2つの観点から、今後も桜島から目が離せない。
(鹿児島テレビ)