『絶メシリスト』は2017年、北陸新幹線沿線でもある群馬県高崎市で産声を上げた。
コンセプトは“失うには惜しい絶品グルメ店を紹介し、応援するローカルグルメサイト”だ。
市民に長年愛されながら、店主の高齢化や後継者問題などから閉店が危惧される「地元のいいお店」。そんなお店をピックアップし、「絶やしたくない絶品グルメ」としてサイトで紹介。
思わず“行ってみたい”と思わせる店が並ぶ。
ここでしか食べられない味を伝える『絶メシリスト』
高崎市で始まった『絶メシリスト』は大成功を収めた。グルメサイトのみならずドラマ化や書籍化もされ、国内外の広告賞も受賞、形を変えながら世の中に拡散していった。
2020年にはカリスマ経営者が東京で「絶メシ食堂」をオープンするまでに至った。
北陸新幹線が開業した2015年、大いににぎわいを見せた金沢。ホテルも次々にオープンし、訪れた観光客は開業前の3倍となった。
ただそこでにぎわいを見せたのは観光地が並ぶ金沢の中心街のみであった。
2024年の北陸新幹線敦賀延伸を見据え、金沢のみならず石川県内各地に足を運んでもらう仕掛けが必要。そんなローカルならではの取り組みとして白羽の矢が立ったのが、『絶メシリスト』であった。
『絶メシ』が話題を呼んだカギは、「後継者不足問題」を明るみに出した点にあるといえる。昔ながらのいい店は、時代とともに店主の年齢も上がる。絶やしたくない店が存亡の危機に瀕する現状は、石川県も例外ではなかった。
こうして2019年、福岡県と同時に石川県でも『絶メシリスト』スタートが決まった。
ライターが魅了される、店主の「味」
『いしかわ絶メシリスト』が始まって約4年。2023年10月末時点で、32店舗が掲載されている。
ライターを務める一人、美緑トモハルさんは、それぞれの店が醸し出す「味」に魅了されていると語る。
「32店のうち、20店を担当させていただきました。2度伺っているお店もありますが(笑)。それぞれのお店について話が出来るほど、印象的なお店ばかりで…。
いしかわの絶メシリストの人気記事ランキングで、当初からずーっとランクインしている『味吉亭』さんは、絶メシライターとして参加させて頂いた最初の方のお店で、ここで愛されるお店の定義が分かった気がしました。
『ここでしか食べられない味』、これぞ『絶メシ』!!その意味が確定したと言っても過言ではないと思います」
ライターの美緑さんは、人気店の店主と会話を重ねる中で、『絶メシ』たる所以に触れたという。
「その『味吉亭』では、『冷凍食品はいっさい使ってません。大変だけど全て手作りです』と、店主が話してくれました。その後、別のお店でも同じような言葉を聞いて、なるほどな、と。冷凍食品が悪いとかではなく、どんな食材であったとしても『この店の味』にこだわっていることが、通いたくなるお店の第一条件なのだろうなと思いました。
それから、「銀のめし」の滋さんの握ってくれるおにぎりの美味しいことに驚きました。滋さんがお店に立てないときには娘さんが握っているんです。そちらも美味しいんですけど、やっぱり違いがある。おにぎりなのに…、びっくりです。
また取材では、店の誕生秘話も知ることができます。中国の旧満州に行き、帰国後に店を始めたという、餃子の“発明王”『赤ずきん』の店主、そして『天和』のご主人。お2人とも淡々と笑顔で話してくださったのが印象的でしたね」
長く店を営めば困難も多いと推察されるが、「大変さはない」と答える店が多いという。
「こちらとしては、困難な状況も知りたいし記事にしたい。でも『楽しい』『あっという間だった』と言うんです。それだけ集中して、毎日を生きていらっしゃるんだなと感じました。
またお客さんとの会話にも耳を傾けると、料理の味だけではなく、店主たちの愛すべきキャラクターが華を添えている事に気がつきます。どの方もいい味を出してるんですよね(笑)」
絶えてもなお絶えぬ「味」
「絶メシ」の味は、店主や料理が生み出す「味」だけではない。美緑さん自身、それを実感する経験を味わっていた。
「高校生の時、学校の近くのうどん屋さんがとにかく人気で。毎日のように友人と通いました。
大人になって閉店したという噂を聞いた時は、本当に寂しかったのを覚えています。今でもふと思い出しますよ。店やそこに通う客、そうした雰囲気すべてが、味をつくっていたように思います。だからこそ、人が集うのかも知れないですね」
避けては通れない、個人飲食店の廃業問題。
惜しまれつつ無くなっていく名店。
これからも、「絶メシ」と呼ばれる店は増えていくことだろう。
味のある店主たちも、永遠に店に立つことはできない。しかし、『絶メシリスト』によって名店の行く末に光が当たり、その「味」を絶やすまいと立ち上がる人が一人でも現れてくれたら…。
「食べれんくなっても、知らんよ~!」
石川ならではの『絶メシリスト』のキャッチフレーズには、そんな願いも込められている。
ここでしか食べられない味、「絶メシ」を、召し上がれ。