静岡県沼津市は”フェンシングの街”として官民一体となり取り組みを進めている。ここに一人の女子選手が拠点を移してきたのが1年半前。市内の金融機関に就職し日々ハードな練習を続け、国内最高峰の大会にフェンシングの街の期待を背負い出場した。脇田樹魅選手(24)の挑戦を追う。
活動拠点を移し鍛えぬく

2023年9月に開催された全日本選手権の準々決勝で勝利の瞬間ガッツポーズを決めるフェンシング女子サーブルの脇田樹魅(わきた・じゅみ)選手24歳。
日本代表として世界を舞台に活躍している彼女は、2022年4月から活動拠点を静岡県沼津市に移し、市内の金融機関で働きながらアスリートとして研鑽を重ねている。

脇田選手がこの1年強化してきたのは脚力と持久力。大会前のこの日も、ハードなトレーニングで自分を追い込んでいた。
「しんどいです。でも試合2日前くらいに心拍をあげた方がパフォーマンスがいい感覚なので継続してやっています」と脇田選手。

トレーニングのおかげで脚力と持久力が強化され、試合後半でも持ち味の鋭い攻撃ができるようになったと言う。
「少し(身体が)浮いちゃってるから、相手の方が早く見える、そこですっと足を前に出せばわかんない」直前に迫った大会に向けてコーチからも細かい指示が出され調整が続いていた。
好きな服を眺めて気分を上げる
大会前の緊張の続く中、脇田選手の自宅にお邪魔した。
「好きな洋服を並べていつでも気分が上がるようにしてる感じです」と脇田選手。

紹介してくれたのは、趣味で集めている洋服の数々。派手に見える服をおしゃれに着こなすのが自身のスタイルだそうだ。
脇田選手は「練習から帰ってきて好きな洋服が広げられていたらテンション上がる」というのが集めるきっかけになったと言う。
新たな拠点が地元に!

沼津市を拠点にして約1年半、脇田選手は練習と仕事の合間を縫って、地元の小学校などでフェンシングの普及活動にも取り組んできた。
沼津市で開催される全日本選手権には特別な思いがあるようだ。

脇田選手:
この1年間で、沼津が地元と言っていいぐらい自分の中に浸透してきて、自分も沼津に浸透できてるかなって思っているので。応援される分、プレッシャーは感じるんですけど、 そのプレッシャーを全部力に変えて、みんなで優勝を掴みに行きたいなって思います

大会当日会場入りする脇田選手に調子をたずねると「ばっちりですね、(大会に)合わせて来てます」と力強い答えが返ってきた。

国内最高峰の大会、全日本選手権。脇田選手が出場するサーブルは、突きに加えて切る動作が入り、得点となる有効面は上半身のみ。試合は15点を先に取った方が勝ちとなる。
初戦、2戦目と危なげなく勝ち進む脇田選手。準々決勝も持ち味の前に出るフェンシングで得点を重ね、準決勝進出を決めた。
“地元”開催で勝つことに意味がある
脇田選手は「地元開催で勝つというところに意味があると思うので、みんなの応援のもと一番いい色のメダルを獲得したい」と意気込みを語ってくれた。

2日目となった準決勝は好調をキープし大差をつけて勝利した。
そして迎えた決勝の舞台、近くでは母・奈都栄(なつえ)さんも見守る。
相手は幾度となく対戦してきた同じ日本代表選手。一進一退の攻防が続き、1点ビハインドで前半を折り返す。

1分間の休憩をはさみ、後半戦に入ると攻めの姿勢を崩さず得点を重ね、先にマッチポイントを奪った。
しかしそこから相手も追い上げを見せ、最後は相手のカウンターが決まり、あと1点のところで日本一には手が届かなかった。
応援を力に金メダルを目指す

悔しさがあふれる脇田選手だが、地元開催の大会で自身 最高成績となる準優勝を果たした。
応援に駆け付けた職場の同僚や上司も、普段とは違う彼女のアスリートとしての姿に胸を熱くしている様子だった。
同僚:
沼津市とか沼津信用金庫とか背負っていろんなプレッシャーがある中で本当によくやってくれた、すごかったなって
上司:
本当に感無量といいますかうれしい限りで。私たちも本当に勇気をもらいました

脇田選手も「自分の所属先の方々が応援してくださるというのは本当に力になった。今後も応援を力に変えて世界で活躍できるようにまた見せ場を作れるように頑張りたい」と前を向いた。
あと一歩届かなかった日本一。来年のリベンジに向け、そしてパリ・オリンピックに向けて挑戦は続く。
(テレビ静岡)