アメリカのバイデン大統領が17日、イスラエルに向けて出発した。現地でネタニヤフ首相らと会談し、ガザ地区の市民の保護や、アメリカ人の人質の救助など、様々な懸案を話し合うとみられている。
一方で、停戦仲介に意欲を示しているロシア。その狙いとは――。
17日放送の「イット!」で、フジテレビ・立石修取材センター室長が解説した。
ハマスを非難も地上侵攻を懸念
イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談するバイデン大統領。

アメリカは当然、イスラエルを支持する立場だが、バイデン大統領は今回は、ガザ地区の市民の保護やアメリカ人の人質の救助など、様々な懸案を話し合うと見られる。
イスラエルも後ろ盾であるアメリカの意向を無視するわけにはいかず、地上侵攻を前に非常に重要な局面を迎えていると言える。

そして、アメリカに加えて、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなど欧州各国が、当初からハマスによる攻撃を非難する共同声明を発表した。
ハマスのテロ行為を許さない、という点では西側は一致している。
ただし、ガザ地区の市民たちの人道危機が高まりつつあることを受けて、欧州連合(EU)や国連などからは、イスラエルの地上侵攻によって、さらに多くの犠牲が出ることを懸念する声が出てきている。
ウクライナ侵攻の時とは違って、一枚岩とは言いがたい状況だ。

そうした中で、ロシアが気になる動きを見せている。
ロシアは国連安保理にイスラエル軍とハマスに停戦を求め、ガザ地区に人道支援を行うなどの停戦決議案を提出した。
この決議案は、アメリカやイギリス、日本、フランスが反対し、否決された。
停戦決議案を日本やアメリカが反対した理由としては、「ハマスのテロ行為を非難する内容が入っていない」とのことなのだが、ウクライナ侵攻を継続するロシアがこの問題で停戦案を出し、それを西側が反対して否決する、という構図になっている。
一方で、中国やアラブ首長国連邦は、ロシア案に対して賛成している。
結果的には理事国間の分断が生じていて、ロシアによる西側への揺さぶりとみることもできる。
ロシアの3つの狙い
国際社会の分断というのも根底にあるのかもしれないが、今回のロシアの狙いというのは、どんな点があるのか。

それは、大きく3つある。
まず一つ目は、ウクライナ侵攻から目をそらすことだ。
現在、国際世論はガザ空爆などイスラエル対ハマスの衝突にフォーカスしている状況だ。
ウクライナへの関心がそれている内に、ロシアが様々な軍事行動に出る機会を得られるかも知れない。

二つ目は、アメリカの軍事力分散だ。
アメリカはウクライナに沢山の武器を供与してきた。
しかし、戦闘が激化し、イスラエルへの支援が増えれば、アメリカからのウクライナへの軍事支援が減るかもしれないことを当然期待していると思われる。
長期化すればアメリカが、ウクライナ支援を継続できるかどうかも焦点となる。

そして、三つ目は対アメリカ批判の強化だ。
プーチン大統領は今回の問題について、「アメリカの中東政策が破綻している一例」と強く批判してきた。
もし今後、地上戦に突入し、ガザ地区で市民や人質の犠牲が増えれば、イスラエルを支援しているとして、ロシアは対アメリカ批判を加速させるだろう。
そうなると、中東諸国のロシア支持も拡大、加速する可能性もある。また、一方でハマスを支援するイランとの関係がより強くなっていくことで、不安定な要因が増していく可能性がある。
(「イット!」 10月17日放送より)