前節、藤枝MYFCを相手にほとんど見せ場を作れずに敗れた清水エスパルス。首位追撃どころか自動昇格圏からも陥落してしまった。しかし、下を向いている時間などは無い。次節の相手は2位のジュビロ磐田。両者の意地とプライドがぶつかり合う”元祖”静岡ダービーだ。

絶対に負けられないジュビロとの一戦へ

静岡三国決戦と呼ばれるエスパルス・ジュビロ・MYFCで交差するダービー。

前節のエスパルス対MYFCの一戦は、ホームのMYFCが2対0で勝利した。ジュビロが勝利したことでエスパルスは3位に陥落。

ただ、前節は首位・町田がいわきに敗れ、4位・東京Vも群馬と引き分けるなど、リーグ戦も終盤に差し掛かかる中で、明らかにそれぞれの立ち位置がゲームに影響し始めている。

エスパルスにとっては約3カ月ぶりの黒星で“連続無敗”記録も途切れた。一方で秋葉監督は「いつか途絶えるもの」と軽くいなし、むしろ敗戦をどう活かすかは「自分たち次第」と次への教訓に位置づける。また熱血指揮官は「いまさら余所行きのサッカーはできない」とも口にする。

基本に立ち返り、フットボールの本質を高めた上で「ゆとりを持って攻め急がず、超攻撃的、超アグレッシブを貫こう」と、ミーティングでは今シーズンのすべての得点シーンを振り返り、チームの良いリズムを共有した。

そして、いよいよジュビロとの“元祖”静岡ダービーが目前に迫った。互いに「地元サポーターの前で情けない姿は見せられない」「絶対に勝ちたい」という強いプレッシャーがかかる状況の中で持つ力をどこまで発揮できるかがポイントとなることは間違いない。

9月16日の山口戦で主将・山田が復帰したジュビロは、前節その山田の華麗なシュートで勝利し、チームの士気も上がっている。とはいえ伝統の静岡ダービーは「勝ち点差、順位、チーム状況のすべてが関係ない」とエスパルスのFW北川は口にする。直近4試合には出場していないが、磐田との一戦で北川も精神的な柱となることは言うまでもない。

秋葉監督が就任した際、エスパルスはリーグ戦7試合を終えて勝ち点が5しかなかった。過去にこの状況から昇格したチームはなく、誰もが“J1復帰は不可能”と言った。

しかし秋葉エスパルスはここまで順位を上げ、不可能を可能にする挑戦を続けている。様々な要素が絡み合う中で、勝利の女神がほほ笑むのはどちらか。いずれにせよ、両チームがこれまで積み上げたものをいかに発揮できるかにかかっている。

秋葉監督「我々の方がチャレンジャー」

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-今週初めのミーティングは長かった
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
MYFC戦(の敗戦)と磐田戦を控えれば長くなると思う。ただ、やることは単純に基本に立ち返ること。今さら余所行きのサッカーはできない。

フットボールの本質、戦う、走る、球際、1対1、切り替え、セカンド・ボールを得ること。また、基礎・基本は止める・蹴る・運ぶ・ヘディングで、藤枝戦は自分たちのイージーなミスで負けたと思っている。もう一度、当たり前のそれを見直さないといけない。藤枝に負けたのは「ぬるい空気」があったからだと思う。

就任した当時、こんな空気感ではなかったと思う。監督を変えないと気持ちを切り替えられないなどというのは話にならない。全員でのレベルの高い意識、空気感にもう一度戻したい。藤枝の敗戦をどう活かすかは自分たち次第。負けなしの記録はいつか途絶える。そこからどういう振る舞いをするかが大切。

ミーティングでは、今まで取ってきた得点を振り返り、今は攻め急ぎ過ぎていることを伝えた。切羽詰まると、今までやってきたことができなくなる。ゆとりをもって、これまで60ゴールをどう取ってきたか破壊力を共有してもらった。

ここ2試合で終盤の戦いの難しさを感じた。なので、確率の高いチャンスの作り方を再認識してもらった。ただ、それをプレッシャーと感じるか、楽しみと感じるかで全く違う。元々、不可能と言われていた「7節で勝ち点5から昇格する」という誰もやっていないことに挑戦している最中。

よくここまでいるし、当初の目標は「ジュビロと勝ち点2差まで詰め寄る」ということだったので、(ジュビロの勝ち点が)1点多い、狙い通りだなと。簡単ではないが、自分たち次第という、そうしたメンタリティーでやりたい。

今は攻め急いでいるように見える。狙いを持った選手交代を含めて共通意識をもって冷静に攻めるべき。終盤の重圧に耐えて、それを超える幸せを感じさせたい。

-今週は伝統のダービー
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
非常に緊張感のある状況で迎えるダービー。こういうシチュエーションでやれるのは指導者冥利に尽きる。ここでの勝ち負けが、残り4試合の行方に大きくかかわる。勝ち点3以上の大きな勝負。ジュビロはJ1でチャンピオンになったこともある力のあるクラブで、お互いのプライドがぶつかり合う。

我々はホームでできるし、多くのファミリーのサポートを受けられる。また、ダービーは今の調子が関係ないゲームになる。順位では我々の方がチャレンジャーでいられる。

強気に超攻撃的、超アグレッシブで、最後の最後まで勝ちにこだわってピッチに立てるようしたい。勝つためには基本に立ち返るということ、精度を高めることに尽きる。地に足をつけて冷静に頭を動かしながら勝ち筋を見つけたい。

そもそもこのチームの監督を引き受けたのは、この戦力を預かって“不可能を可能にすることができる”と思ったから。誰もやったことのないことにチャレンジするのは好き。ここまでやってきてくれた選手はすごい、できないのは当たり前なのだから。神様が見ているだろうし、有言実行したい。日々の緊張感の中で、勝ちをイメージできるかが大事。

サンタナ選手「ダービーは得意」

清水エスパルス・チアゴ サンタナ選手:
アウェイでの磐田戦では点を決めているので、次節もチームのために貢献したい。ダービーは得意だ。今回も1つ、2つゴールを決めたい。でも、何よりもチームの勝ち点3が重要なので勝利を目指して頑張りたいと思う。

ブラジルでもダービーの経験はある。フィゲレンセとアバイールというチームのダービーでは2ゴールを決め勝ったこともあった。何よりも自分たちで試合を進めたい。プレッシャーについて自分は楽しめるタイプだと思う。ダービーといってもリーグ戦の1つの試合、自分の仕事は得点を取ること。1つでも多くとる準備をしている。

乾選手「勝つことしか考えていない」

清水エスパルス・乾貴士 選手:
前節は情けない結果になってしまったので、この一戦で取り返すチャンスをしっかり活かしたい。ここから5連勝すれば間違いなく昇格なので、その上でダービーに勝てば順位が上がるので大事な一戦。

得点が入らないことは、長いシーズンの中で必ずあること。それがたまたま今来ているので、あまり心配していない。能力の高い選手も、得点の取れる選手もいるので、気にし過ぎず、みんなで意識を持ってやっていきたい。

ジュビロの印象は、前の選手で迫力のある選手もいるし、堅い、勝負強いイメージもある。今は、山田の復帰によってアクセントをつけられるので、そこをどう止めるかが重要。展開はやってみないとわからない、勝つつもりしかないし、勝つことしか考えていない。

これだけでなく、あと5試合勝ち続けるつもり。サポーターは特別な一戦と思っていると思う。自分たちはダービーでなくても大事。上位対決でもあり、自分たちが笑ってサポーターを楽しませることができればと思う。

吉田選手「楽しみながら自信を持って」

清水エスパルス・吉田豊 選手:
前節の藤枝は自分たちがやりたいことを消した。距離感、テンポも悪かったし、ミスも多く、意思統一もできていなかった。ゲーム運びは、自分たちと相手の関係を考え、交代選手も含めやりたいことをはっきりとさせないといけなかった。

今のチームに一番必要なことは、自信を持ってプレーすること。秋葉体制で積み上げてきたことをしっかりと自信をもって一人一人プレーすることが大事。「ミス」「負けられない」という気持ちでは勝ちにつながらない。このエンブレムを胸に自信を持つべき。

ダービーからの残り5試合はしびれる展開になる。難しいが、こんな経験はなかなかできない。楽しみながら自信を持ってやるのが大事。

白崎選手「相手にとって嫌なプレーを」

清水エスパルス・白崎凌兵 選手:
今回の試合は、通常のダービーよりしびれる試合になると思う。こういうゲームで自分がどういうパフォーマンスをして、チームに貢献できるか、勝利に導けるがというのは、すごく重要になるし、もちろんゴールも狙いたいと思うし、ただ、まずはチームが勝つために自分がやるべきことを整理して迷いなくプレーしたい。自分がボランチのポジションからゴール前に侵入すると、相手はマークしづらいので、チームのチャンスにつながると思う。

ここ2試合は相手がブロックを形成したときに、それを壊すような、泥臭いプレーも必要だったと思う。意図的でなくても相手が嫌がるプレーが足りない。もっと相手にとって嫌なプレーをするべき。ブロックができる前にショートカウンターをかけるのも効果的。

自分たちの経験したことのない雰囲気になることも想定され、上位対決で昇格に直結する戦いになるので、いかに平常心で楽しみながら目の前の相手に負けないところが大事になる。一人一人、集中するべき。

北川選手「貢献できる自信はある」

清水エスパルス・北川航也 選手:
これまでの勝ち点差、順位、チーム状況のすべてが関係ないのが静岡ダービー。そこの向けてのいい準備ができていると思う。Jリーグが発足してライバル関係があった中で、今、昇格・優勝を争う中、勝った方が上に行く。

素晴らしい雰囲気の中で、多くのサポーターが来るので勝利を分かち合えるようにしたい。ただの1試合ではない、クラブの歴史や未来がかかった試合。子供たちにエスパルスが一番と証明する試合にしたい。

応援には感謝しているし、クラブの歴史がそうさせていると誇りに思っている。試合は結果がすべて。90分勝つことをあきらめてはいけない。クラブ全員で勝ちたい。試合に出られない責任は自分にあるが、悲観したり、ネガティブになる必要はないと思っている。自分にあるものを出せればチームに貢献できる自信はある。点に関しては自分のストロング、強みを存分に生かせるようチームに貢献したい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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