中国人ユーチューバーが、東京の高級すし店ですしを1貫ずつ放射線測定をした動画が波紋を広げている。放射線の専門家は「全く意味がない行為」と指摘している。

“すしの放射線量”を測定

9月に中国のSNSに投稿された映像。「すしには放射能がどれほど含まれているのか」と、福島第一原発の処理水放出を想起させるタイトルがつけられている。

投稿者は、中国のSNSで約45万人のフォロワーを持つ男性。訪ねた店は東京都心に店を構え、「ミシュラン」で三つ星を獲得したこともある超高級すし店だ。

ウニの三種盛りに測定器を当てて放射線の値を測定
ウニの三種盛りに測定器を当てて放射線の値を測定
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男性は席に着くとまず、店内の放射線量を測定。「店内の放射能測定値は0.12マイクロシーベルト」と測定結果を読み上げた。そして、カウンターの奥で腕を振るう職人からウニの三種盛りを出されると、男性は「さっそくこちらの北海道の赤ウニと愛媛のウニを計測してみましょう」と言い、皿に盛られたウニに測定器を当てて放射線の値を測定。数値に変化がないことを確かめてから食べ始めた。

マグロのにぎりに測定器をあてる男性
マグロのにぎりに測定器をあてる男性

その後も男性は、すしが出されるたびに測定器を当て、一つ一つの数値を計測。マグロ、イカ、そしてアジ。目の前に立つ職人のことなどお構いなしで計測を続けた。

タコの煮物の計測値が0.15マイクロシーベルトに上がった際には、「0.12から0.15マイクロシーベルトになりました。食事を食べ始めたばかりのわたしが緊張してきました」とつぶやいた。

専門家「全く意味がない」

中国のみならず日本のSNSでも拡散された動画を、放射線に詳しい、大阪公立大学放射線研究センターの秋吉優史准教授に見てもらった。

秋吉准教授は「全く意味がない。全く全く意味のない計測方法。非常に大きな遮蔽(しゃへい)帯の中に物を入れて、かなり時間をかけてじっくり計らないと、食品の中の放射能は評価できない」と断言した。

男性が数値の上昇を強調したタコの煮物は「(放射線が)器から出ている」
男性が数値の上昇を強調したタコの煮物は「(放射線が)器から出ている」

さらに、男性が数値の上昇を強調したタコの煮物について、秋吉准教授は「(放射線が)器から出ている。こういった陶器も測ってみると、器の中にも砂とか粘土が入っていますよね」と指摘。そのうえで、計測された値そのものについても、全く問題はないとした。

「残念すぎる」中国でも批判殺到

この動画は、中国でも批判が殺到し、炎上していた。

中国のSNSでは、「礼儀がない」「残念すぎる」「注目を浴びたいからだろうけど、彼自身が恥ずかしい思いをするだろう」といった投稿がみられた。

処理水の海洋放出をめぐる反日感情につけ込む形で、アクセス稼ぎを狙った行為なのだろうか。ネットで批判を受けた男性のSNSを14日に確認すると、問題の動画は見当たらず、動画は削除されたとみられる。「イット!」は男性に取材を依頼したが、これまでに返答はない。

しかし、中国のSNSに投稿された同様の動画はこれだけではなかった。

レーンを回るすしに放射線測定器を当て数値を確認してから皿を取った男性
レーンを回るすしに放射線測定器を当て数値を確認してから皿を取った男性

別の動画では、回転ずしのチェーン店で、男性がレーンを回るすしに放射線測定器を当て、数値を確認してから皿を取っていた。

話題作りを狙ったとみられる一部のネットユーザーによる行き過ぎた動画投稿には、中国からも厳しい目が向けられている。
(「イット!」9月14日放送より)

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