大阪の夏を彩る「なにわ淀川花火大会」が4年ぶりに完全な形で8月5日に開催され、新型コロナによる制限がなくなった2023年は45万人が訪れた。雑踏事故を防ぐため、約1,700人の警備員が誘導にあたったが…想定外の事態で大混雑。さらには、猛暑と人混みによる体調不良者も続出した。完全復活した、なにわ淀川花火大会で楽しい思い出を残してもらうために奮闘する人たちの裏側に密着した。
雑踏事故を防げ!ポイントは「十三駅」
大会前日、会議室は緊張の面持ちで包まれていた。

誘導などにあたる約1,700人の警備の指揮を執る大屋佳昭さんは、2022年よりも多くの人出が予想される2023年の警備のポイントは「十三駅」付近の誘導だと言う。

会場の警備を指揮・大屋佳昭さん:
「176スロープの直近」、十三駅に近いエリアが一番花火が見やすいエリアになるので、そこをいかに会場の中に引き込んでいくかが、明日の勝負かなと思っています

来場者の多くは、きれいに花火が見られて打ち上げ場所から近い会場に集まるため、放置すれば人が集中し雑踏事故の危険が高まるため、ポイントは、人の流れを止めることなく会場全体に人を誘導することだ。
迎えた当日 会場には早くから人がギッシリ
午後1時過ぎの淀川河川敷。花火開始まであと6時間ほどだが、多くの人々が場所取りのために集まってきていた。
見に来た人:
初花火なんです!
ーー水飲んでいますか?
見に来た人:
もうないです
見に来た人:
保冷バック持ってきて凍らしてみたいな
ーーあと6時間くらいどうする?
見に来た人:
ひたすらしのぐしかないです。待っときます

午後4時、混雑が予想される十三駅近くの「176スロープ」にも徐々に人が集まってきた。大屋さんも会場内に設置された14台の監視カメラを見ながら誘導の指揮をとる。

警備員:
この階段を上っても観覧エリアはありません。この階段を上った先に待っているのは、時間のロスだけです
厳しい暑さの中で体調不良者も…救命士が奮闘

花火開始まであと少し。徐々に会場の熱気も高まり、警備スタッフの声も大きくなる中、人が増えるにつれて体調不良者も増えてきた。救護所を取り仕切るのは救急救命士の泊菜穂さん。2023年初めて淀川花火大会を担当する。
この日の大阪市の最高気温は38.4度。夕方になっても厳しい暑さが残っていた。

泊菜穂さん:
主に熱中症疑いですね。それにプラスして「過換気」と言って人混みに慣れていない人の症状が多い印象です

そして、迎えた午後7時半。花火の打ち上げが始まった。救護室には、次々と救護要請が入る。
泊菜穂さん:
スロープの近くで1名。そこのスロープ!
幸い救護所内で重症者は出なかったが、この1日で60人ほどの体調不良者が運び込まれた。
泊菜穂さん:
やっぱり落ち着くことが大事で、あと水分摂取もですし。改善点がいっぱいあるので、また来年ですね

一方で、誘導を行う警備では、花火終了を待たず、早めに退場誘導を始めていた。
警備員:
このスロープは梅田方面専用出口です。十三方面へお帰りの方はこの先の真教寺階段へお進みください

十三大橋の上に多くの人が集まるなど危ないタイミングもあったが、何とか乗り切ったと思った矢先、この日最大の危機が起きた。一番の混雑が予想されていた十三駅の阪急神戸線が、人身事故で動かなくなった。

大混雑が起こりうる、想定外の事態に大屋さんは、「神戸線だけ止まっているんで、神戸線を利用する方は塚本駅、またはJR大阪駅に誘導してほしい」と指示を出した。
警備員:
阪急神戸線の運転がストップしております。電車を使われる方は、他の鉄道会社、JR、地下鉄等をご利用いただくことも合わせてご検討ください

冷静な対処の甲斐があり、大きな混乱はなく、何とか1時間半ほどでほとんどの人が花火会場の外に出ることができた。大きな事故なく終えられた2023年の花火大会。
大屋佳昭さん:
来場者が固まって来られる時間帯に各駅がパンクするくらい人が来た。その辺の振り分けでかなり時間を要して力を入れました。ぜひとも苦労しているところも含めてご協力いただきたいなと思っています
多くの人が集まる花火大会。来場者の笑顔の裏側には、このような人たちの奮闘があった。
(2023年8月7日 関西テレビ「newsランナー」放送)