2021年、当時3歳だった新村桜利斗ちゃんが、大阪府摂津市のマンションの一室で亡くなった事件。桜利斗ちゃんの死因は全身にやけどを負ったことによる熱傷性ショックだった。

争点は“殺意”の有無

逮捕・起訴されたのは母親の交際相手の松原拓海被告で、浴室で高温のシャワーを浴びせ続けたとされている。松原被告は逮捕前、知人に対し次のように話していた。

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松原拓海被告:
(浴室で遊んでいて)給湯の温度を上げたりしてたんですよ。返事みたいなものがなかったから、だから僕は急いで見に行って、パッと開けたら、おりちゃんが浴槽じゃないほうの床にうつ伏せになってて

知人:
まず泣けへんかった?声出さなかった?

松原拓海被告:
ほんまに聞こえてなかった

知人:
(浴室の)戸は開いてんねんな?

松原拓海被告:
開いてます

裁判で争点となったのは松原被告に「殺意」があったのかどうか。

松原被告は、これまでの暴行の事実や熱湯のシャワーを出したことは認めつつも、「浴びせた事実はありません」と話し、弁護側も「高温の湯を出した状態で、桜利斗ちゃんを浴室に放置したが、脱水症状になることを意図しただけだ」として、「殺人罪は成立せず、傷害致死罪に留まる」と主張していた。

一方、検察側は、「類を見ない悪質な犯行で殺意があった」として、懲役18年を求刑していた。

判決で大阪地裁は、松原被告が意図的にシャワーを浴びせたことは認定したものの、「重度の熱傷を負わせると気付かなかった可能性は否定できない」などとし、殺意については認定せず、殺人ではなく傷害致死にとどまると判断した。

一方で、「長時間シャワーをかけ続け、残酷という他ない。動機ははっきりしないが、理不尽という他なく、強い非難に値する。今も虚偽の弁解をして反省の態度もない」として、松原被告に懲役10年の実刑判決を言い渡した。

裁判前、関西テレビの記者が松原被告に接見し、「なぜ桜利斗ちゃんに対して、繰り返し虐待をするに至ったのか」と問うと、どこか客観的で落ち着いた様子で語り始めたが、その内容は驚くべきものだった。

松原拓海被告:
当時、おかしな話だと思いますが、自分がやっていることは虐待じゃないと思っていました。エスカレートしていくことに気付けなかった。懲らしめたいことへのハードルが低かったんだと思います

自分がしていたことを虐待と認識していなかったと話した松原被告。では、なぜしつけがそこまでエスカレートしたのかと問うと、記者の目をしっかりと見つめ、冷静にハキハキとした口調でこう答えた。

松原拓海被告:
しつけの気持ちもあったし、彼女(交際相手)とおりちゃんの絆の強さに疎外感を感じて。そこへの嫉妬、うらやましさがあった。母親に愛されているおりちゃんを疎ましく思った

交際相手とその息子である桜利斗ちゃんの関係性への嫉妬から、暴行がエスカレートしていったと語った。

一方で、裁判の中では松原被告が桜利斗ちゃんの頬を強く叩いた際、摂津市の職員が自宅を訪問し、指導していたことが明らかになっている。それにも関わらず、なぜ自分の行為が虐待だと認識できなかったのか。

松原拓海被告:
「手をあげてはだめ」という以外の指導はなかった。市の人は母親に話すので、僕にも聞こえるようにだけど、消極的で、僕に面と向かって言うことはなく遠回し。面と向かって言われないと響かない

自分に対する指導とは受け取ることができなかったと、不可解ともとれる理由を語った松原被告。

一方で命を落とした桜利斗ちゃんに対しては、こんな気持ちを口にした。

松原拓海被告:
とんでもなく申し訳ない気持ちでいっぱいです。おりちゃんに「ごめんね」と言い続けている

身勝手な理由で、失われた小さな命。どこかで救うタイミングはなかったのだろうか。

(関西テレビ「newsランナー」2023年7月14日放送)

関西テレビ
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