島民60人離島に観光客1万人!目当ては「ネコ」

宮城県石巻市の離島「田代島」。漁業が盛んな周囲11.5kmの離島だ。島で暮らす人は約60人。この小さな離島に、多い時で年間1万人以上の観光客が押し寄せるというから驚きだ。
しかも、観光客は国内だけでなく、アジアやヨーロッパからも訪れるという。

その目的は可愛らしい「ネコ」たち。自由気ままにのんびり過ごすネコたちの姿は、ネコ愛好家にとってはまさに“楽園”といえるだろう。

島民によると、島で暮らすネコは約150匹にのぼる。島の人口を超えるネコが暮らしていることから、田代島は「ネコ島」の愛称で親しまれている。

新型コロナで“一変”も6月から徐々に再開の動き

新型コロナウイルスの感染拡大は、観光客でにぎわいをみせていた「ネコ島」にどのような影響を及ぼしているのか。

6月上旬、島への唯一の移動手段である「網地島ライン」(宮城県・石巻市)のフェリーに乗船し、田代島に向かった。観光客で賑わいをみせていた船内の様子は一変。乗船した際も、観光客らしき人は2、3人ほどしかいなかった。
こうした状況の中でも、島に降り立った途端、出迎えくれたのはやはり「ネコ」たちだ。人を怖がらず足元に近寄ってくる。観光客は激減しても、島の魅力は変わっていない。

その田代島だが、6月に入り、宿泊施設などで再開の動きが出始めていた。
石巻市が管理し、著名なマンガ家がデザインしたロッジが魅力の宿泊施設「マンガアイランド」。この施設は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、4月下旬から休館を余儀なくされていたが、6月1日から営業を再開した。

感染対策として、各ロッジに消毒用のハンドジェルが設置したほか、6月12日時点で予約の受付は、宮城県在住者に限定する措置をとっている。

宮城県では5月に「緊急事態宣言」が全国で解除されたことを受け、段階的に外出の自粛を緩和することを決定した。6月19日からは「県境をまたぐ移動」や「県外からの観光客の呼び込みの自粛」も解除される見通しだ。

ただ、石巻市の担当者に話を聞くと、「マンガアイランド」にいつ「県外」の観光客を受け入れるかは見通せないという。
その背景には、田代島が抱える理由があった。

常勤医師がいない離島 「感染拡大したら…」島民の不安

田代島の医療体制は、1951年に開設された島唯一の診療所があるのみだ。しかも常駐する医師はいない。実質、週に1回、医師が島を訪れ診療を行う。
さらに、島民のうち65歳以上の高齢者の割合は「8割以上」にのぼるという。

ただでさえ医療体制が脆弱な田代島で、新型コロナウイルスがまん延したら…

島民に話を聞いてみると、観光客など人の出入りが多くなることに対して、不安の声が聞かれた。その一方で、観光客に対して「島に来るな」とは言えないとももらす。

こうした島民たちの不安を払しょくするため、関係者たちは感染対策に乗り出している。

島民の“不安払しょく”へ 重要なのは観光客の“意識”

フェリーを運航する「網地島ライン」では、乗船前に検温を実施している。

さらに乗船場では、海外からの観光客に向けて英語や中国語、韓国語などで感染対策を呼びかける張り紙を設置したほか、船内には消毒用のアルコールを設置し、さらにSNSなどで、島内でのマスクの着用なども呼びかけている。

また、田代島のネコをモチーフにした土産が並び、軽食も楽しめる島唯一の交流スペース「島のえき」は、島民同士で相談した結果、6月1日から営業を再開した。感染対策に万全を期すために、施設では飲食スペースにアクリル板を置き、入口には消毒用のアルコールスプレーを設置した。

「島のえき」の渡辺ゆう子さんは、「地元の人から心配という声が寄せられれば自粛するのは当然だ」と、あくまで島民の意思が最優先だと話す。
そのうえで、「観光客自身の感染対策が欠かせない」と呼びかけている。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国の観光地が「観光客の減少」に悲鳴をあげている。しかし、その観光地それぞれに事情を抱えているのも確かだ。

島から帰りのフェリーに乗船する際も、人懐っこいネコが足元にすり寄ってきた。

このかわいらしいネコが暮らす「ネコ島」。
そして何より「島民の命」を守るために、観光客1人ひとりの意識が問われていると改めて感じた。

(仙台放送)