スケートボード東京五輪の金メダリスト・堀米雄斗(24)に独占密着。ある苦境に立たされている堀米の”いま”に迫ったーー。

5月26日~28日に有明アリーナで開催された「UPRISING TOKYO」。スケートカルチャーを発信、発展させることを目指す”日本発”の新たなスケートボード国際大会で、この大会に堀米も出場した。

その1週間前の5月21日には、自身が主催するイベント「Meet you There」に参加。スケボーの第一人者として、現在はスケボーの普及活動にも力を入れている堀米はこう話す。

自身が主催するイベント「Meet you There」に参加した堀米雄斗(24)
自身が主催するイベント「Meet you There」に参加した堀米雄斗(24)
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堀米雄斗:
スケートボード業界を盛り上げたいっていうのもあるし、スケートボード本来の楽しさを伝えられるようなイベントをやりたかったので、このイベントをやらせてもらった。

2021年7月25日、東京五輪の新種目スケートボード・男子ストリートで初代金メダリストとなり、”スケボーを愛する男”はヒーローになった。だが、そんなヒーローは今、渦まく葛藤の中にいた。

「ムラサキパーク」堀米の原点が閉鎖

「Meet you There」開催2日後の5月23日。

”とある場所”があった京成関屋駅
”とある場所”があった京成関屋駅

現在アメリカを拠点とする堀米は、今回の帰国にあわせ、”とある場所”を訪れた。

堀米雄斗(24)
堀米雄斗(24)

堀米雄斗:
ここに(初めて)来たのは何歳だろ。小学生ぐらいの時で7、8歳ぐらい。
ここから本格的にスケボーを始めた場所でもあるし、”原点”でもあるし、ここでいろんな人たちと出会いもあった、そこから世界にも行くきっかけになった。
すごく大切な場所ですね。

ムラサキパーク東京
ムラサキパーク東京

東京・北千住にあるムラサキパーク東京。

幼少期の堀米雄斗(ムラサキスポーツ東京にて)
幼少期の堀米雄斗(ムラサキスポーツ東京にて)

ここでスケボーを始め、幼少期、何千回と通いつめた「堀米雄斗」を作った場所。その原点とも言えるパークに散乱する無数の釘…。

解体作業が行われていたムラサキパーク東京
解体作業が行われていたムラサキパーク東京

実は、都市再開発の為、5月7日に閉店し解体作業が行われていた。

解体作業中のパークを眺めて説明する堀米雄斗(24)
解体作業中のパークを眺めて説明する堀米雄斗(24)

堀米雄斗:
ほんとだ、もうレールもなくなってる…。このレールの部分とここ(斜面)が一番滑っていた。

がむしゃらに技を磨いたあのレールも、今はもう存在しない。

堀米雄斗(24)
堀米雄斗(24)

堀米雄斗:
悲しいですね。エモいですね。
エモいって言葉があんまり意味まだわかんないですけど…。
だいぶ壊されてきてますね。ほんとにこれからどんどんなくなっていくという実感が湧く。

パリ五輪選考レースで5番手に低迷

そんな堀米は今、予期せぬ苦境に立たされている。2023年2月に行われた世界選手権でまさかの予選敗退。パリ五輪の選考レースでは日本人5番手の位置に沈んでいる。

堀米雄斗(24)
堀米雄斗(24)

堀米雄斗:
すごく悔しいし、周りから見ても「ヤバいんじゃないか」みたいな。
自分の中では少しワクワクしているというか。金メダル取った人が予選落ちして「次どうなっていく?」みたいな。自分も(この先)どうなるか分からないので、楽しみではありますね。

”不透明な未来”を、むしろ楽しみと語る堀米。そして、その未来のシナリオに大きな影響を及ぼす存在がいた。堀米が予選落ちした世界選手権で、12歳ながら世界選手権史上最年少メダル獲得となる銅メダル・小野寺吟雲(当時12歳)だ。

24歳にして、早くも迫りくる世代交代の足音。

堀米雄斗(24)
堀米雄斗(24)

堀米雄斗:
世代がちょっとずつ変わってきているのは自分でも感じますし、自分もついていかないといけないと思うし、越えていかないといけない壁なので、周りのスケーターがどんどんレベルを上げてくれているので、ほんとに自分のレベルも上げざるをえない。もっともっとレベルを上げていって、その壁を乗り越えていきたい。

ムラサキパーク東京で惜別ランを楽しむ堀米雄斗(24)
ムラサキパーク東京で惜別ランを楽しむ堀米雄斗(24)

ムラサキパーク閉店前日の5月6日。自らの原点を訪れ、夜通しパークを滑り、”惜別のラン”を楽しんだ堀米。そして取り戻した、大切なモノ。

堀米雄斗(24)
堀米雄斗(24)

堀米雄斗:
最後にここが壊される前に来られたのは、昔、滑っていた時の感覚を思い出させてくれる時間だった。自分にとっては大切な時間だし、楽しかった時間でした。

そんなプライスレスな思いを胸に、堀米雄斗は再び、ゴールデンヒーローへと歩みを進める。

堀米雄斗(24)
堀米雄斗(24)

堀米雄斗:
自分の限界を超えていく年になりそうです、この1、2年は。
東京五輪で自分の人生も変わった。新しく道を作ってもらった大会ではあるので、次のパリ五輪でまたいい滑りをして、新しいトリックを決めてまた金メダルを取りたい。
金メダルを取って自分のやりたいことももっと大きくしていきたいし実現させていきたい。

窮地のヒーローが見せた大逆転劇

東京五輪以来の地元・江東区で臨む大会となった「UPRISING TOKYO」。決勝は、60秒間自由に滑る「ラン」を3本おこない、その最高得点で争うルール。

出場10人中5人が、10代のスケーターと若い世代が名を連ねる中、24歳の堀米は1本目で難度の高い技を次々とメイクしていく。しかし、1本目最後のトリック、270度回転してレールを滑る得意技を失敗。続く2本目も、このラストトリックを決めることができない。

2本目終了時点で暫定5位。ミスが許されない状況に追い込まれた堀米は、最後の1本でノーミスの滑りでラストトリックへ…。そして窮地に立たされた堀米は強靱(きょうじん)なメンタルを見せ、ラストトリックを成功させた。

ラストトリックは、通常は右足が前の堀米だが、利き足と逆、左足が前のスイッチスタンスから半回転、さらに金具部分で滑る複雑すぎる高難度トリック。意地の大逆転劇で優勝を飾った。

1位:堀米雄斗(日本)    87.94
2位:C.リベイロ(ブラジル) 87.00
3位:佐々木音憧(日本)   85.12

「ここから切り替える」

ーー今の気持ちは?
すごくほっとした気持ちです。
最後、自分なりに変えてうまく調整して、乗り切れたのはすごくよかったなと思います。

ーー常々スケートボードを盛り上げていきたい、魅力を伝えていきたいということだが
大会以外のストリートカルチャーの活動も少しずつしていって、本当のスケボーの楽しさも魅力も伝えていきたい。

ーー来月、パリ五輪予選
今、出だしはあまり良くないのでここから切り替えて、まずはオリンピックのチケットを確実につかみたいです。

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