リモートワークなのに“ハンコ出社”…不要論が続々

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて広がる、「新しい生活様式」。
働き方についても、テレワークの拡大が求められ、これまで当たり前に行われてきた「ハンコや名刺交換」も、本当に必要かどうかという議論が起きている。
ハンコや名刺を扱ってきた業界では、突然の逆風に戸惑う声があがる一方、新しいサービスも生まれている。

日本の職場では欠かすことのできない「ハンコ」。ところが、いまその「ハンコ」がやり玉に。

<SNS上の声>
「ハンコ出社なんて他人事みたいに思っていたら、結局さっきハンコ出社してしまった。取引先の発注書に必要とな」
「緊急事態の中、明日ハンコ押印の儀のために出社します。命をかけてハンコを押すために出社するのです」

在宅勤務にもかかわらず、書類の決裁や承認で印鑑を押すためだけに、会社へ行かなければならない。そんな「ハンコ出社」を嘆く声が続々と。
同様の声は街でも…

男性A:
押し忘れた時に、また戻らないといけない
―リモートワーク中にも?
ありました

男性B:
ハンコは正直、あまり好きじゃない。
―ハンコ出社は?
していました。最終的に出す書類に、『ハンコ押してください』と言われてしまって、また会社に行くっていう

男性C:
―テレワーク中にハンコ出社することについて
それは馬鹿馬鹿しいですね。必要ないかと思います

「不思議とともに悲しい…」ハンコ会社は“最大の試練”

ハンコ文化への疑問。業者はどう受け止めるのだろうか?

名古屋市中区の「中日印章」。

中日印章の林克己社長:
最大の試練を与えられている。『印鑑不要論』みたいな話になって、ネット上なんかだと、輪をかけてどんどん広がっていますもんね、その話が。なぜ急に、こういう印鑑のバッシングがあるのかなっていうことが、不思議とともに本当に悲しいですね

業界にとって、まさに急転直下の大逆風。2019年は、改元にあわせて作った「平成」の訂正スタンプと、新元号「令和」スタンプが大ヒット。

ところが、新型コロナの流行で状況は一変。出店しているショッピングモールの休業が大きく響き、4月の売上は前年から6割減った。

林社長:
デジタル化の流れは止められないし、時代の流れなのでしょうがないと思う。やっぱり、でも、ハンコじゃないとできない方って絶対みえるので、やっぱりその部分では、印鑑は必要だと思うんですよね

電子印鑑システム“申し込み10倍”に…手がけたのは“25年”も前

一方、ハンコ業界大手の「シヤチハタ」。 
エクスタンパーでおなじみの会社だが、いま伸びに伸びているのが、「電子印鑑システム」だ。
パソコンやスマホからクラウド上の書類にアクセスし、あらかじめ登録した電子印鑑で捺印する。複数の人が、全てオンライン上で捺印できるシステム。

誰がいつハンコを押したかや、上書きがあった場合に、どこがどのように変わったかの記録も残るため、なりすましや改ざんも防ぐことができ、社外との取引にも使用されるという。
3月は1万5000件。緊急事態宣言で在宅勤務が広がった4月は、その10倍以上の16万件の新規申し込みがあった。

シヤチハタの担当者:
業種だとか会社規模だとか問わず、全般的な範囲で問い合わせが来ている。われわれも想像できなかったくらいの数を、今 さばかないといけない状況になっている

コロナの時代の大ヒットサービス。しかしシヤチハタが電子印鑑の開発を始めたのは1995年。ウィンドウズ95がブームになった25年も前のことだった。パソコンの普及で「近い将来、紙がなくなるのではないか」と、ペーパーレス社会の到来を確信していたのだ。

ところが、その後『e-Japan戦略』などと政府がどれだけ旗を振っても、電子印鑑はなかなか普及しなかった。

シヤチハタの担当者:
今までは準備ができましたよって、いくらアナウンスしても、多くの人は『機会があるときでいいや』って逃してしまっていたと思う。そんなに変化しない、というジレンマのなかで、今回の激変といいますか、驚きですよね。こんなに一気に、世の中の体系が変わるというのは、想像していなかったところですね

“名刺”もデジタルシフト…業者は「だけど、これいるよねってのがあると思う」

遅々として進まなかった、日本のビジネスのオンライン化を促した「新型コロナ」。
それは、ハンコだけではない。

初対面の仕事相手との名刺交換。これも日本独自の仕事文化だが、感染リスクを減らすため「オンラインで」と呼びかけているのだ。
名刺アプリ「Eight」。オンライン名刺交換のサービスが5月にリリースされた。
仕事相手とビデオ会議でつなぐと、QRコードが出現する。

そのQRコードをスマホで読み取ると、相手の名刺情報が届くというサービスだ。

オンラインの名刺交換について、街の人は…。

女性A:
コロナの状況なので、それも一つの手段かな

男性:
それは余計なおせっかいだと思います。そんなところまで、指図してほしくない

女性B:
オンラインでということなので、何かの間違いで流出してしまったりとか、大丈夫なのかな

街の声は二分しているが、もっと戸惑っているのが名刺の印刷業者だ。
名古屋市中区の「富士印刷」。

創業60年。名刺などの事務用印刷物を扱う、従業員10人の町工場。「名刺オンライン化」の受け止めは…

富士印刷 崎山社長:
『いやいや待てよ』という話。われわれ印刷所というのは、名刺というのがメインなので。『それをオンライン化!?はぁ?』って

在宅勤務の広まり、会議のオンライン化などの影響はすでにじわじわと。売上は、2019年と比べ2割ほど減ったという。

崎山社長:
コロナ後の世界というか、今 テレワークだなんだになって、『だけど、これいるよね』というのがあると思う。そういうもので、オリジナリティのあるものを提案できないかとか。その時代の求めるものを、我々は供給していく。チャンスととらえて、前向きにやっていかないと、ストレスで持ちませんので…

(東海テレビ)