2023年3月、名古屋市に住む2歳の双子がマンションの7階から転落し、死亡する事故が起きた。悲しい事故が二度と起こらないように、今すぐできることがある。対策を専門家に聞いた。

想像できない行動をとる子ども

名古屋市で双子の男の子(2)がマンション7階の窓から転落し、死亡した事故。

転落した窓は床から約80cmのところにあり、2人は窓の近くにあった棚によじ登っていたとみられている。

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時に大人が想像しないような行動をとる子どもたち。

小さな子どもを持つ親は、「今回の事故はひと事ではない」と受け止めている。

幼い子どもを持つ親:
子どもが物に登って落ちることはしょっちゅう。どこにでも入っていくし、どこにでも登る

幼い子どもを持つ親:
1歳半の子どもが鍵を開けられるようになってきている。二重ロックの道具をホームセンターで買って、事故を予防したい

幼い子どもを持つ親:
きのうは届かなかった場所でも、きょうは椅子を使って上にあがっていることがある。危ないこともいっぱいあるので、今回の事故はひと事ではないと思っていた

2・3歳から特に注意が必要に

子どもの転落事故について、新潟県立大学・子ども学科の伊藤巨志教授は「自分で階段を上るようになってきた時期」から注意が必要だと指摘する。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
1歳で立ち上がって歩き始めるので、2~3歳くらいから注意が必要。階段を上がって、かつ、自分で体を使って上がることができるようになった段階で危険を感じていい。特に、3歳未満はバランス感覚が未発育な部分がある。ちょっとした頭の移動でバランスを崩して、前のめりになって転落するということも想像してほしい

3歳以上でも安心というわけではないという。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
3~4歳はバランス感覚が発達していても、まだ頭が大きい。4等身・5等身で頭が重い分、少し前のめりになると、バランス崩して転倒することがある

6歳以上でも転落するケースはある。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
6~7歳のお子さんでも、8~9歳のお子さんでも、危険な環境があれば落ちてしまうことは考えられる。例えば、窓枠に座って転落するといった恐れも出てくる

年齢による特性はあるものの、そもそも事故を防ぐには、家庭内に危険箇所がないかどうかを点検することが欠かせない。

チェック1:窓の近くに物を置かない

名古屋市で起きた事故では、窓の近くに置いた棚が踏み台になった。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
窓に転落防止のパイプがあったとしても注意が必要になる。窓の周辺は人が上がらない状況にすることが大事

チェック2:ベランダにある室外機

ベランダからの転落事故は、エアコンの室外機が踏み台になるおそれがある。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
少し高いところに上がる、チャレンジ精神が子どもの中にはある。ベランダの室外機等に上がることも、子どもの遊び道具になり得る

伊藤教授は、日頃から「ベランダは遊ぶ場所ではない」と教えておくことのほか、危険性によってはベランダを閉鎖するなど、物理的に転落しない環境をつくることも必要だと話す。

高所で生活すると恐怖心が薄れる?

一方、マンションなどで生活する子どもには、ある傾向があるという。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
マンションなどの高いところに住んでいるお子さんの恐怖心は、一軒家とか1階・2階で住んでいるお子さんと違って、怖さを感じないこともある

子どもが高所を危険だと感じていない可能性があることも認識しておく必要がありそうだ。

幼児期は顔面のケガ多 対策はハイハイ

一方、日常の注意点として伊藤教授が転落事故以外で挙げるのが「幼児期の顔面のケガ」。

顔面のケガを回避するには、「ハイハイ」が重要だという。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
転んでも手が出ない幼児期は、ケガをする箇所の約6割が首から上。転倒して歯を折ったり、鼻を折ったりするケースが多々ある。近年、ハイハイが上手でないために、手で支える動作を経験しないまま成長するお子さんが増えている

伊藤教授は、保護者には子どもに立つことを促すのではなく、ハイハイを促すことを推奨している。とはいえ「ハイハイをしていなかったからダメ」というわけではないという。

新潟県立大学 子ども学科 伊藤巨志 教授:
3~4歳になってからでも、あえてハイハイの動作を(遊びなどで)取り入れる。これが重要で、ハイハイをやればやっただけ、ケガの軽減につながる

日々成長する子どもの見守りに「絶対」はない。

幼い子どもを持つ親:
1人で2人の子どもを見ていることが多いので、自分がトイレに行く5分くらいは目を離しても大丈夫かな…というときに「ドキッ!ヒヤッ!危ない!」と思うことは多々ある

だからこそ、家庭内に危険な箇所をなくすことが最大の対策と言える。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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