マスク解禁に伴い、需要が増えているというメイク講座や笑顔レッスン。

自分では笑っているつもりなのに、周囲から「目が笑ってない」などと言われないようにするためには、何を意識すればいいのだろうか。

マスク生活で弱ってしまった“表情筋”の鍛え方や、好感度の高い“正しい笑顔”の形、さらには自宅でできるトレーニング方法について、都内を中心に企業で笑顔研修や、個人向けの笑顔レッスンを行っている「株式会社笑顔育」の川野恵子さんに聞いた。

ポイントは「口角」の運動

ーー笑顔トレーニングの受講者は増えてる?
2022年11月前後に「マスク解禁へ」のニュースが出始めた頃から、個人の“笑顔レッスン”や企業からの“笑顔研修”の問い合わせが増えました。

川野恵子さん
川野恵子さん
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昨年11月〜今年1月までの3か月平均でいうと、1年前の3倍以上に増えています。
マスクを取る機会が増えることで、素敵な笑顔になりたいとか、写真を撮る日に向けて理想的な笑顔になりたいという声があります。

また、マスク無しでお客様との対面接客ができるようにと、笑顔トレーニングを申し込まれる企業もあります。

ーー笑顔トレーニングの指導内容は?
“素敵な笑顔”をいきなりするのは難しいと言う方が多いです。

表情筋は筋肉なので、常に動かしていた方が動かしやすくなります。
素敵な笑顔の1番のポイントは「口角」になるので、口角が上がりやすいように筋肉を縮めたり、伸ばしたりする運動を行います。

正しい笑顔の見本
正しい笑顔の見本

ーー約3年間のマスク生活で表情筋は動かなくなった?
そうですね。口元を覆っているので無意識に口を動かすことがなかったり、ご自身は笑顔のつもりでもちょっと弱い笑顔になったりします。

マスクを取っている状態だと、相手の笑顔につられて自分も笑顔になることがありますが、お互いマスクだと笑顔の機会も減ってしまうし、大きな笑顔も小さくなってしまいます。

そして受講者の中には、そもそも好感度の高い“正しい笑顔”の形を習っていないので知らないという方も多くいらっしゃいます。

笑顔で「安心感」と「リラックス」

“素敵な笑顔”の1番のポイントは「口角」にあるというが、笑顔は人にどういった効果をもたらすのか。

川野さんは、大きく分けて2つの効果があると指摘する。

ーー笑顔に対する悩みとは?
うまく笑顔が作れなかったり、笑っているつもりなのに「悲しそうな顔をしている」と言われてしまい、笑顔に対してコンプレックスを持っている方がいます。

また、以前はもっとフェイスラインがすっきりしていたのに、マスク生活でたるみが出てしまったというお悩みもあります。

ーー笑顔の大切さとは?
大きく2つあると考えています。

1つは、笑顔になることで相手や周りの方に安心感を届けることができたり、印象が良いのでコミュニケーションをうまくスタートできるなど「外的効果」があります。

もう1つは「内的効果」で、笑顔になる人自身がリラックスできたり、気持ちが前向きに切り替わることができると思います。なので笑顔になることでモチベーションがアップしたり、リラックスすることで普段の力が発揮できる場面があると思います。

上の歯が8本見える「ハリウッド式笑顔術」

ーートレーニングでは何をする?
笑った時に、上の歯が8本見える笑顔を我々は「ハリウッド式笑顔術」と呼んでいますが、これが好感度の高い笑顔の形となります。

「ハリウッド式笑顔術」
「ハリウッド式笑顔術」

笑顔の時に上の歯の左4本、右4本が見えていることが大事です。そうすると自然と頬が丸く上に盛り上がります。

これがマスク状態だと、笑顔を作っても口を開けないので頬の動きが弱くなります。

口を開けて上の歯8本が見えるように笑うと、自然と頬が丸く盛り上がり、上がった頬が下瞼を持ち上げてくれます。

この時、目の周りの筋肉に力が入っていると、頬がせっかく下瞼を持ち上げようとしているのに上がらないんです。そうすると「嘘笑い」であったり、「目が笑ってない」という状態になります。

ーー頬の筋肉を鍛える方法は?
まず顔の筋肉は、片方に22種類あると言われています。
小さい筋肉が顔の中に集中していて、大きな筋肉は鍛えるのが大変ですが、小さな筋肉はちょっと動かすと元気になります。

頬の筋肉は、口角から耳の穴にかけて斜めに伸びています。
笑顔の時は、この大頬骨筋と小頬骨筋を縮める動きをして口角を上げます。
そして縮めた後は、その倍の時間伸ばします。

大頬骨筋と小頬骨筋を動かしやすくするためには、縮めて伸ばす訓練が大事になります。

笑顔の後は「お」の口で10秒間筋肉を伸ばす
笑顔の後は「お」の口で10秒間筋肉を伸ばす

まず、上の歯が8本見えるように口角を上げて、上の歯で下唇を軽く噛んで5秒キープします。
そのあとは、ゆっくり戻して、「お」の口で10秒間、大頬骨筋、小頬骨筋と鼻の下を伸ばします。

これを1日3回からスタートすると、頬の筋肉が腹筋運動しているように、今までの運動不足を解消することができます。

目の筋肉も鍛える

さらに、上瞼を鍛えることで目の表情も豊かになり、より素敵な笑顔が作れるようになるという。

ーー目のトレーニングも必要?
目の周りにはドーナツ状に筋肉がありますが、この筋肉は弱まりやすくて、さぼりやすいです。

目を大きく見開くときに、眉毛の筋肉は強いので、その筋肉に頼ってしまうため、目の筋肉はさぼりやすいんです。なので上瞼はどんどん弱まるし、運動不足になります。

眉毛を持ち上げずに目を見開く練習
眉毛を持ち上げずに目を見開く練習

そのため、眉毛を動かさずに目を開ける練習が必要です。

眉毛がどうしても上がってしまう場合は、人差し指を使って眉毛を上から抑えます。この時、肘と肘は近付けて肩はリラックスします。

この状態で目を大きく開けて3秒間。そして指を離して瞬きをします。
こうして上瞼を鍛えると、笑顔の時に目の表情も豊かになります。

活舌も良くなる「い・え・あ」の形

表情筋の訓練で、笑顔の基本を押さえたら、次は、会話中でも笑顔をキープするための「い」「え」「あ」の口の形も学んでほしいと川野さんは話す。

ーー笑顔で話すポイントは?
会話中の「い」「え」「あ」の口の形がポイントになります。

「い」は、下の歯は見えなくて上の歯8本が見える形です。

「え」も「あ」も同じ状態で、少しずつ口を上に開ける形です。これだけでも頬の筋トレになります。

「お」は頬を伸ばします。「う」は前に突き出します。

これをセットで「い」「え」「あ」「お」「う」と練習します。
上の歯が見えるぐらい口角を上げることで、常に笑顔で会話ができるようになり、さらに活舌も良くなります。