6月に入り、大雨などへの警戒が必要な季節となるが、災害時の避難所も新型コロナウイルスへの対策が不可欠となっている。

東日本大震災を経験した岩手県内の自治体の現状はどうなっているのか?

避難所でもソーシャルディスタンスを

安倍首相:
ホテルや旅館の積極的活用を含め、可能な限り多くの避難所を開設する。パーテーションの備蓄など必要な対策を地方自治体に要請している

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東日本大震災などこれまでの災害では、多くの人が密集する状態となっていた避難所。

国は4月、全国の自治体に通知を出し、新型コロナウイルスへの備えとして、ホテルなどの活用により避難所の増設を検討することや、十分なスペースの確保など運営の見直しを求めた。

岩手めんこいテレビが岩手県内33の市町村に取材したところ、従来の指定避難所以外に「増やすことを検討している」と回答したのは、盛岡市、大船渡市、遠野市、八幡平市、柴波町、矢巾町、平泉町、大槌町、一戸町、九戸村の10市町村だった。

また滝沢市はすでに市内の高校などを臨時避難所として利用するための協定を結んでいる。

一方、ほかの22市町村では「コロナ対策をしても数としては足りる」あるいは「新たに避難所に指定できる施設がない」などの理由で、当面、従来の避難所で対応していく方針。
東日本大震災、そして2016年の台風10号で大きな被害が出た岩泉町。

岩泉町では住民だけで開設・運営する避難所も

東日本大震災、そして2016年の台風10号で大きな被害が出た岩泉町。

5月28日、住民を対象に避難所運営の講習会が開かれた。
岩泉町では指定避難所の総数は増やしていないが、「避難準備・高齢者等避難開始」の情報を出した際に、いち早く開設する「一次避難所」の数を従来の11から21に増やすことにした。密集を避けるためだ。

町の職員:
町職員だけでの対応は難しくなっているので、地区の自主防災協議会の協力をいただき、避難所運営をお願いしたい

増加分の10カ所は、住民だけで運営することになる。
参加者は発熱がある人のための専用スペースを用意することなどを確認するとともに、感染拡大防止に活用できるテントや、組み立て式の間仕切りなどを見学した。

参加した住民:
避難所を開設するときは、地域の人たちと協力して、スムーズに運営できるようにしたい

参加した住民:
コロナが出たから、今までと違った感じで考えるようになった

町ではさらにサーモグラフィーカメラ11台を用意することにしたほか、各避難所にマスクや消毒液などを配備した。

岩泉町・佐々木重光 危機管理監:
自然災害はいつ来るかわからない敵。新型コロナは目に見えない敵。避難所運営態勢の構築を急いでやらないといけない

陸前高田市では大広間以外の部屋も有効活用

一方、岩泉町と同様に震災で大きな被害を受けた陸前高田市でも対策を検討している。

陸前高田市・中村吉雄 防災課長:
民間の施設や宿泊施設を活用することも重要と思うけど、私たちのまちではそういう資源は多くはないので

ホテルなどの活用が難しい陸前高田市では、従来の指定避難所のなかで使える部屋をフルに活用し、収容する人数を増やしたいとしている。

陸前高田市・中村吉雄 防災課長:
ソーシャルディスタンスが関係なければ、(このホールで)150人から200人くらい収納可能。それが半分くらいになるので、こういう施設では、いろいろな部屋を使う。学校でも(避難所は)体育館が基本だが、教室なども使ってキャパを広げたい

また市では避難所での密集を避けるため、親戚の家などの安全な場所に避難することも検討するよう、今後、市民に呼びかける方針。

避難所に身を寄せなくても、救援物資を受け取れる態勢を取るとしている。

陸前高田市・中村吉雄 防災課長:
近所の住宅や親戚の住宅あるいは地域の公民館とか、あるいは自宅で休める場合は、在宅で避難生活を送っていただくことも重要。コロナの時期でも、災害発生時には、躊躇なく安全な場所への避難行動をお願いしたい

震災の経験生かし コロナ時代へ対応を

各地でさまざまな取り組みが進む一方、震災当時、避難所の感染症対策に当たった岩手医科大学・櫻井滋教授は、発生当初のある程度の密集は避けられず、それを前提に対策を考えるべきと指摘する。

岩手医科大学・櫻井滋教授:
一旦はみなさん集まらざるを得ないことを理解してもらって。明らかに病気になっている方と、明らかに元気な方、そしてちょっと病気になりかかっているかもしれない方くらいは分けないといけない。もし発生した時にクラスターが小さくなるような工夫を、避難所としてしなければいけない。

そのうえで感染防止策徹底のため、避難の際には手の衛生を保つ消毒液、マスクなどとしても使える手ぬぐい、体温計、ビニール袋などの持参を推奨している。

岩手医科大学・櫻井滋教授:
大き目のビニール袋をいつも携えておくと、それがパーテーション代わりになったり、汚れものを閉じ込める役割をしたり。体温計を皆さんで共有すると、それがもとになってしまう感染症もある

コロナ時代の避難はどうあるべきか、各自治体でも対策を進めているが、私たち一人ひとりも備えの意識を高めることが必要とされている。

(岩手めんこいテレビ)

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