神戸の“包丁研ぎ少年”が話題

子どもの頃、スポーツや勉強、習い事など何かに打ち込んだという人は多いのではないだろうか。

子ども時代に打ち込んだことが将来の夢や目標になったりすることもあると思うが、今、“あること”に打ち込んでいる小学6年の少年が注目を集めている。

その少年とは、神戸市に住む小学6年の河本陽向くん(11)。そして陽向くんが打ち込んでいるのは包丁研ぎだ。

陽向くんの包丁研ぎがなぜ話題になっているかというと、無償で包丁研ぎの依頼を受けていて、研いだ後の包丁の切れ味が抜群だからということのようだ。

河本陽向くん
河本陽向くん
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既に近所の人の包丁など181本を研いでいるという陽向くん(6月7日時点)。包丁研ぎのきっかけは山村留学だった。陽向くんは2019年3月から1年間、長野県泰阜村に山村留学に行き、食器などのモノ作りや刃物の研磨、畑仕事などを体験した。

そして、今年3月に“留学”から帰ってきたが、新型コロナウイルスの影響で小学校が休校に。休校中に母親の奈緒さんから「好きなことしたら良いよ」と言われたことから、包丁研ぎを始めたというのだ。

山村留学での体験がきっかけとのことだが、そもそも包丁研ぎのどんなところに魅力を感じたのだろうか? 詳しい経緯や今後の目標などについて、陽向くんに聞いてみた。

包丁研ぎをして役に立てるんだ

ーー山村留学をしたのはなぜ?

僕は自然が大好きで、薪割りや火を使って生活したくて山村留学に行きました。一年暮らした長野では、たくさん物づくりをします。畑もします。みんな仲間が家族になって協力して暮らしています。ご飯もつくります。

どれも時間がかかったりするけど、いろんなことを知れて、面倒だからこそ達成感があって面白くなります。ありがとうをいっぱい知れました。大人も子どももみんな仲間でいつも話し合いで決めます。登窯もして食器も作ります。大変だけど、すごく面白いです!

ーー包丁研ぎの依頼を受けるようになった経緯は?

そして、山村留学から帰ってきて、新型コロナで学校行けないから「好きなことしたら良いよ」と言われて、お母さんの包丁を研ぎました。そしたら「とても切れるようになってうれしい!」と喜んでくれました。嬉しかったです。

「もっと研ぎたい」と思って隣のおばちゃんのや近所の人に研がせて貰いました。みんなすごく喜んでくれました。「料理が楽しいわ!」と言われました。好きなことして「ありがとう」と言われて、どんどん嬉しい気持ちになりました。おばちゃんの形見や、使ってなかった包丁が使われるようになったと知り、包丁も持ち主も喜んでくれてるのがわかりました。僕は「包丁研ぎして役に立てるんだ。」と思いました。

そして、お母さんにお願いしてフェイスブックに載せてもらいました。そしたら知らない人からも依頼が来ました。たくさん研がせてくれてる人がでてきました。楽しいし、うれしくて、もっと上手になってうれしい気持ちになる人が増えたら、僕も包丁もとっても嬉しいです!

目標は500本!将来の夢は?

ーー包丁研ぎの目標は何本?

新聞に載ってから連絡くれる人がいて、またたくさん研げそうな感じです。うれしいです。目標は500本です!


ーー包丁の切れ味を良くする秘訣は?

一定の角度を保って研ぎ、砥石の上の削りカスを水で流さないようにしながら研ぎます。


ーー自分で研いだ包丁を使って料理する?

はい。します。1番の得意料理はだし巻き卵です。仕上げにしか包丁使いませんが。フルーツやサラダは刻みます。


ーー将来の夢はある?

将来の夢は冒険家になることです!それまでにたくさんのことをチャレンジして、身につけて、なりたい自分になりたいです。


山村留学で得た経験を活かして、「人の役に立ちたい」という思いから始めた包丁研ぎ。「僕も包丁もとっても嬉しいです!」という言葉が印象的だった。

続いて、陽向くんが包丁研ぎに打ち込んでいる様子についてどのように思っているのか。母親の奈緒さんにも伺った。

母親「追求していく姿はとても楽しそうで、眩しくも感じる」

ーー陽向くんに研いでもらった包丁の切れ味はどうだった?

1番に研いで貰いました。見違えるほど切れ味がよくなり驚きました!


ーー陽向くんが包丁研ぎに打ち込んでいる姿を見てどう思う?

とにかく自分ができることで喜んでいただけることがうれしいようです。「もっと上手くなりたい!」と夢中になって、知ってる方に聞いたり、調べたり、追求していく姿はとても楽しそうで、眩しくも感じ、嬉しく思っております。

長く生きている分、ついつい口出ししたくもなりますが、彼が「面白そう!好きだ!」と思えることに出会えたら、私の持ちうる尺度で測るのは失礼だと思っています。

危険が伴うことは、確認してから任せてみます。「自分で決められたなら大丈夫!」と基本、頼られるまで手は出しません。すでに私より上手くこなせることが沢山あり、頼もしく助かっています。

基本的に頼られるまでは手を出さないという母親の奈緒さん。奈緒さんが優しく見守っているからこそ、陽向くんも自分が打ち込んでいることに集中できるのだろう。

包丁研ぎの依頼は近くであれば、陽向くんが包丁を研ぎに出向いてくれるということだが、遠方に住んでいる場合は郵送で受け付けているという。(問い合わせ先:nao87wo@gmail.com)

緊急事態宣言も解除され、学校が再開されたところも多い。これまでのペースで包丁を研ぐことは難しいかもしれないが、目標の500本に向けて陽向くんの挑戦はまだまだ続く。

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プライムオンライン編集部
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