北九州市の小学校でクラスターが発生したことに、学校再開を控えた教育現場では、「ついに恐れていたことが起こった」と緊張が走っている。
感染症対策は1校あたり最大300万円
文科省は第2次補正予算案で、学校再開に伴う感染症対策として405億円の予算を見積もった。
その中には、消毒液や非接触型の体温計、特に警戒が必要な地域でのサーモグラフィ、教室の3密対策として換気に必要なサーキュレーター等の購入経費が盛り込まれている。学校1校あたりの上限額は、学校の規模に応じて100万円から300万円程度になる予定だ。
分散登校や教室内の児童生徒のソーシャルディスタンス、マスク、手洗い、うがいの義務付けなど、学校では様々な取り組みをしている。しかし、未知のウイルスにはこれ以上の手立てがないのが現状だ。

夏冬休みを削減し土曜日・7時間授業も
一方、6月以降に学校を再開した場合、4~5月に生じた児童生徒の学びの遅れをどう取り戻すのかも深刻な問題だ。
通常の1年間の平均的な授業日数は、200日程度。中学3年生の場合、授業数は約1000コマとなる。4~5月の休校で26日、140コマ程度が不足しているといわれている。また、6月に分散登校を実施すれば、さらに数日分が不足する見込みだ。
これらを補うためには、夏冬休みの短縮や土曜日授業、7時間授業で補うことになる。それでも足りなければ、学校行事の削減も検討せざるを得ない。
現在、文科省では様々なシミュレーションを行っているが、終業式の後ろ倒しや始業式の前倒しで夏冬休みを削るのは避けられそうもない。また、秋以降は土曜日授業や7時間授業日も増えそうだ。

分散登校の教員不足に学習指導員6万人超追加へ
さらに、学校を再開しても地域によっては少人数編成が必要となり、教員の不足が予想される。
文科省では第2次補正予算案に、小中学校最終学年のための非常勤教員として約3000人の加配、学習指導員約6万1000人、学校の業務サポートスタッフ約2万人の追加配置に必要な310億円を盛り込んだ。
こうした人材は、退職教員や学習塾の講師、大学生、NPO教育関係者、地域の人材を雇用することで確保する。
これによって、例えば分散登校で学級を2つに分ける場合は、学級担任に2~3人程度の学習指導員が補助としてつくことになる。

13都道府県は7月末までの「1人1端末」配備を急ぐ
しかし、こうしたシミュレーションは、あくまでこのまま収束に向かうことが前提で、第2波、第3波が到来した場合は、再び学校を休校とすることも視野に入れなければいけない。
その場合に必要となるのが、すべての児童生徒が自宅でオンライン学習できる体制整備だ。
現在、文科省では「1人1端末」のGIGAスクール構想を加速させている。端末整備については、4月7日に緊急事態宣言が発令された7都府県と、4月16日に7都府県とともに特定警戒都道府県に指定された6道府県、合わせて13都道府県を先行させ、遅くても7月末までに整備する予定だ。
その他34県についても、小6と中3は優先的に7月末までに整備、他の学年も今年度中できるだけ早くに全国で端末を配備する予定だ。

北九州クラスターで「やはり9月入学」となる?
今、学校現場は子どもの安全確保と学びの遅れを取り戻すことに注力している。ある教育関係者は次のように話す。
「この一例で、やはり9月入学だという意見が広がらないことを祈ります。このタイミングでこれを言い出したら、公教育がとまってしまいます」
9月入学となれば、さらなる負担がのしかかることを教育現場は危惧している。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】