誰もがなりうる「認知症」。年を取るほど発症しやすいと言われている。

60代女性:
認知症にはならないように。認知症の介護をしてたので、恐ろしさはよく知っている。

60代女性:
母が認知症で、10年くらい。最後は自分の娘もわからなかった。どうなるんだろうな、自分は…。

年を取るほど発症しやすいと言われている
年を取るほど発症しやすいと言われている
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2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症になると予測され、不安を抱える高齢者も少なくない。

その認知症予防として今、ある取り組みが注目されている。

「ゲームやめなさいと言ったけど…」高齢者ら熱中

取材班が訪れたのは、兵庫県神戸市。神戸駅から徒歩2分の場所にあるスポーツジムだ。しかし、中に入ると…。

神戸駅から徒歩2分の場所にあるスポーツジム
神戸駅から徒歩2分の場所にあるスポーツジム

取材班:
パソコンでゲームしています。

スポーツジムなのにゲーム?しかもよく見ると、夢中になっているのは高齢者ばかり。年齢を聞いてみると…。

女性:
62です。

女性:
この間、88になったんです。

最高齢の男性 多くの高齢者がゲームに夢中になっていた
最高齢の男性 多くの高齢者がゲームに夢中になっていた

男性:
90!

取材班:
えっ、90歳?

最高齢は90歳!なぜスポーツジムでゲームをしているのかというと…。

ISR eスポーツ 梨本浩士代表:
ここはeスポーツを行う施設です。

エレクトロニック・スポーツの略称
エレクトロニック・スポーツの略称

「eスポーツ」とは、エレクトロニック・スポーツの略称。コンピューターゲームをスポーツ競技として捉え、その腕前を競い合う。

実はここ、日本初の60歳以上限定のeスポーツジム。

ISR eスポーツ 梨本浩士代表:
シニアの皆さんの関心事はやはり、認知症。その予防にeスポーツを活用したいと考えました。

利用者からはこんな声が聞かれた。

60代女性:
若い時にこんなんあったら、もうすっげーはまってたかも。

60代女性:
子どもに言ってました。いい加減ゲームやめなさいって。でも自分がやってみて、こんなに楽しいんだって。結構頭使うんだなって実感してます。

「子どもにいい加減ゲームやめなさいと言っていたけど、こんなに楽しいなんて」
「子どもにいい加減ゲームやめなさいと言っていたけど、こんなに楽しいなんて」

60代女性:
主人がリタイア(退職)して思い切って。認知症予防も兼ねて。

今、認知症予防にeスポーツを始める人が多く、このジムも年々会員は増え続け、現在は200人を超えるという。

認知症予防にeスポーツを始める人が多いという
認知症予防にeスポーツを始める人が多いという

60代の女性は、2022年まで高校で社会科を教えていた元教師。eスポーツを始めたのは意外なきっかけだった。

元教師(60代女性):
寝てる子たたいて「いつもゲームしてるからや!」って言ってました。悪の権化のように思ってました(笑)生徒が「俺らの気持ちわからへんやろ」って言ったんで、それだったらって。ここ通勤の途中なので、「eスポーツ行くわ!」って生徒に言ったら「やるやん!」と言ってくれて。

生徒に寄り添うために始めたeスポーツ。しかし、通っているうちにある目標ができた。

以前はゲームを“悪の権化”のように思っていたが、生徒の気持ちを理解しようと始めた
以前はゲームを“悪の権化”のように思っていたが、生徒の気持ちを理解しようと始めた

元教師(60代女性):
(孫が)小学生なんで、孫を倒すという目標を持って、ゲームしてます。

でも、本当にゲームが認知症予防に効果的なのか?専門家は…。

ゲームは「相手の動きに予想して、こう自分は動かそうと判断して、そして決断して実行する」
ゲームは「相手の動きに予想して、こう自分は動かそうと判断して、そして決断して実行する」

アルツクリニック東京 新井平伊院長:
相手の動きに予想して、こう自分は動かそうと判断して、そして決断して実行する。こういうのは、脳の前頭葉の機能をとても活性化させる。

遊びのイメージが強かったゲームが、認知症予防に大切な脳の活性化につながるという。

ISR eスポーツ 梨本浩士代表:
シニアの皆さまが楽しい人生を送っていただきたい。認知症予防をすることが、そのひとつの解決策になるなら、eスポーツを活用して、より多くの方が認知症にならない、もしくはなるのが遅くなるという形を作っていければうれしい。

通いたくなる!デイサービスの本格カジノ

認知症予防の新たな取り組みは、東京都町田市のデイサービスにも。その取り組みは…。

取材班:
すごい、カジノみたいですね。

日本シニアライフ 森薫社長:
はい、本場ラスベガスをイメージして作りました。

アメリカ、ラスベガスのカジノをイメージ
アメリカ、ラスベガスのカジノをイメージ

アメリカ、ラスベガスのカジノをイメージして作った、その名も「デイサービス ラスベガス」。

スロットやパチンコから…ディーラーもいて、本格的なブラックジャックまで。

室内はまるで本物のカジノ
室内はまるで本物のカジノ

60代男性:
朝来てお世話になって「えっ、もう帰る時間なの」ってなっちゃう。ディズニーランドに行った感じですね、まさに夢の国みたいな。

通いたくなるデイサービスとして、全国22カ所に展開している。

朝来たら、まずは体操
朝来たら、まずは体操

このデイサービスでは、朝来たらまず体操を行う。体操に参加すると、この施設だけで使える通貨「ベガス」をもらえる。そして、レクリエーションの時間になると、そのベガスを賭けて、カジノにある好きなレクリエーションで遊ぶことができるのだ。

ベガスを賭けて、カジノにある好きなレクリエーションで遊べる
ベガスを賭けて、カジノにある好きなレクリエーションで遊べる

80代女性:
ツモりました~!

80代の女性は、小さい頃にお父さんに習った麻雀を思い出して打っていた。

80代女性:
もらったよ~!

取材班:
何ベガス増えたんですか?

80代女性:
4000(ベガス)ですね。

「ツモりました~!」小さい頃、お父さんに習った麻雀で4000ベガス増やした80代女性
「ツモりました~!」小さい頃、お父さんに習った麻雀で4000ベガス増やした80代女性

と、本当のお金を稼いだ気分だといい、この笑顔。

こちらの70代の女性が楽しんでいるレクリエーションは…。

「カード!あれはおもしろいわよ~。計算するし、何が出てくるかとか考える」
「カード!あれはおもしろいわよ~。計算するし、何が出てくるかとか考える」

70代女性:
カード!あれはおもしろいわよ~。計算するし、何が出てくるか、それを取っちゃったら私は負けるとか勝つとか、そういうこと考えるでしょ。

家族驚き「すごく変わった」 楽しむことが重要

しかし、なぜ認知症予防にカジノなのか?

「今日はいくら勝った負けたと、自然な計算につながっている。それが認知症予防につながれば」
「今日はいくら勝った負けたと、自然な計算につながっている。それが認知症予防につながれば」

日本シニアライフ 森薫社長:
私がラスベガスに視察で行った時に、高齢者の方が楽しそうにカジノをやっていたので、こういう形だったら楽しくなるのかなと思って。今日はいくら勝ったとか、いくら負けたとか、自然な計算につながっているので、それが認知症予防につながるといいなと。

ブラックジャックを楽しんでいた60代の男性は。

お風呂の沸かし方が分からなくなったことがあり、通うように。「カードで計算もするし、かなり脳トレになる」
お風呂の沸かし方が分からなくなったことがあり、通うように。「カードで計算もするし、かなり脳トレになる」

60代男性:
家でボーっとしてるのがほとんどだったんですけど。お風呂どうやって沸かすんだっけ?っていうのが、2~3回あったんです。ちょっと良くないなと思って。こちらでお世話いただいてから、麻雀すればすぐ点数計算しなきゃいけないし、役も作らなきゃいけないし。カードやれば、その場で数字の計算しなきゃいけないし。なので、かなり脳トレになっています。

さらに、91歳の利用者の家族も、その効果に驚きを隠せないようで…。

91歳男性は、1日の3分の2を寝て過ごしていた「麻雀ができるなんて。覚えてるんですね」
91歳男性は、1日の3分の2を寝て過ごしていた「麻雀ができるなんて。覚えてるんですね」

利用者の家族(50代):
ここに来るまでは、ボーっとしちゃって1日の3分の2は寝てたんです。もう顔すっごく変わりました!はっきりしたんですよ。麻雀がまさかできるなんて。覚えてるんですよね。おじいちゃんが元気だと、私も元気になるので。

新井平伊院長「認知症の予防に一番重要なのは、楽しめるということ」
新井平伊院長「認知症の予防に一番重要なのは、楽しめるということ」

そして、1日の終わりには、その日の体操やレクリエーションを通じて、1番ベガスを稼いだ人が表彰される。

こうした様々な工夫の中に、認知症予防に重要なポイントがあるという。

アルツクリニック東京 新井平伊院長:
実は認知症の予防に一番重要なのは、楽しめるということ。大原則は、本人が好きで楽しめるかどうか。楽しいと思ってやると、意欲が湧いてきます。こういうのがみんな脳の活性化につながる。

根本的な治療方法が見つかっていない認知症。自分に合った日々の予防が大切だ。

(「イット!」1月27日放送)