ウクライナは他人事ではない
今年最終回なので1年を振り返ってみた。
1月、大学入学共通テストで女子学生が試験問題をスマホで撮影して送信し、現役東大生らから回答を返信させるというすごい事件が起きた。不思議だったのは女子学生が家裁で「深く反省している」との理由で「保護観察」という軽い処分になった事。学校でのカンニングやイジメはいたずらではないと思うのだが。

2月、ロシアがウクライナへの侵略を開始。ウクライナがまだ負けていないのはすごいことだが、多くの命が奪われ、街が破壊された。プーチンは今も核をチラつかせている。中国の習近平は領土の現状変更や軍拡を続け、北朝鮮の金正恩はミサイルを撃つのをやめない。権威主義国家は民主主義国家の心配顔を横目に世界中でやりたい放題だ。
息子を失った母親の悲しみ

7月、安倍晋三元首相が暗殺された。自宅に焼香に伺ったら、母の洋子さんが地元の萩焼で自ら作った茶碗で抹茶をふるまって下さった。息子を失った母親の悲しみを思い、涙が出た。祭壇の横に安倍氏が亡くなった時に握っていた演説用のマイクが置いてあった。倒れた時についたと思われる傷があった。

8月、参院選勝利を受け第2次岸田改造内閣が発足。当初高かった支持率も、国葬、旧統一教会、閣僚ドミノ辞任、物価高騰などで低迷中だ。

9月、こども園の通園バスに3歳児が5時間取り残され熱射病で死亡。また12月には女性保育士3人が園児への暴行で逮捕された。似たような事件は他でも芋づる式に出てきて、「保育の闇」が明らかになった。介護現場でも同様のリスクがある。やはり保育料、介護料が安すぎるのではないかと思う。
岸田さんに頑張ってほしい事
12月、安倍氏暗殺をきっかけに焦点となった旧統一教会をめぐる被害者救済法が成立した。焦点だった「マインドコントロール下にある人への勧誘の禁止規定」については与党が譲らず、最後は立憲が折れて賛成に回った。法律に納得していない人もいるが「これから変えればよい」と言う人もいる。だが僕にはギャンブルで「勝てるよ、当たるよ」と言って1億円取り上げるのはセーフで、「救われます」と言って1億円お布施してもらうのはアウトというのがいまだに理解できない。

イヤなことばかり続いた年だったが、年末に一つだけホッとするニュースがあった。岸田首相は国家安全保障戦略を決定。「反撃能力の保有」という日本の安全保障政策の歴史的転換を成し遂げた。安倍氏が描いたこの国の設計図を岸田氏が現実のものにした。

課題はある。相手が「銃」を持っているのにこっちが丸腰では話にならない。今回ようやく日本もトマホークミサイルなど「銃」を持つことになった。これは一歩前進だが「相手が撃つまで絶対撃つな」などわけのわからんことをいまだに言っている政党やメディアがいる。
相手が銃の撃鉄を起こせば撃つしかないのだ。こちらの胸を撃たれた後にいくら反撃すると言っても、死んでしまったら反撃できないではないか。岸田さんには財源が増税かとかそんなことよりも、このあたりの防衛の肝の話を引き続き頑張ってほしいと思うのだ。
読者の皆様1年間ありがとうございました。よい年をお迎えください。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】