FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会、グループステージ第3戦スペイン戦。田中碧(24)が決めた逆転ゴールは日本のベスト16進出を大きくたぐり寄せた。

日本代表MF/FW・田中碧
日本代表MF/FW・田中碧
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“三笘の1ミリ"としても大きな話題を呼んだ“歴史的ゴール”の真実について、「S-PARK」に生出演した田中と共に迫っていく――。
 

逆転ゴールに隠された3つのポイント

ドーハの歓喜をたぐり寄せた逆転ゴール。それはまさに劇的だった。

日本代表MF/FW 三笘薫(25):
1ミリですけど、中に入っていればいいなと思って足を伸ばしました。

日本代表MF/FW 田中碧(24):
薫さんが上手く残してくれたんで、最後まで信じて良かったと思います。

ゴールが決まった後、ピッチ上に倒れ込みながら抱き合った二人。田中は「来ると思った!!来ると思った!!」、三笘は「よくいたお前!!よくいた!!」と喜びを爆発させた。

執念が生み出したラストパスを信じて走り込んだ同じサッカークラブ出身の幼なじみ。そんな二人で歴史を変えた逆転ゴール。決定的瞬間をとらえた写真も相まって、このゴールは日本のみならず、世界中で話題になった。

田中から堂安律(24)にボールを渡してから始まった「逆転弾」。

・堂安にボールを渡した後、田中はどう考え、どう動いたのか?
・三笘がボールを折り返した瞬間、田中は何を考えていたのか?
・ボールが来る瞬間、駆け巡った思いとは?

ゴールに隠された3つのポイントそれぞれについて田中に聞いた。
 

真実1:堂安にボールを渡した後、田中はどう考え、どう動いたのか?

――堂安選手にパスを出した瞬間は、どんなことを予測して動いた?
まずは堂安選手に何もストレスなくパスを届けたい。スピードとコースを意識して。

その後は中に入っていくというよりかは止まって律からもう一回もらうか、律が最終的にクロスを上げた時に、もしマイナスに(パスが)来た時に自分が合わせられるように準備はしてました。

――パスを出した時、自分の中ではイメージ通りにできた感じだった?
パスまではイメージ通りだったので、あとは堂安選手がどうチョイスするか、クロスを上げるかなとも考えていたので、自分が思っていた通りに進んだかなと思います。
 

真実2:三笘がボールを折り返した瞬間、田中は何を考えていたのか?

――堂安選手が逆サイドにクロスを出した時は何を考えた?
(堂安選手が)クロスを上げてニアを抜けた後、誰かしらいるなとは思っていて、それで(前田選手と三笘選手の)二人がスライディングしていたので、どちらかが(ボールに)触るのかなと思っていました。薫さんが奥にいて何とか残してくれるんじゃないかなっていう期待はしていました。

――シュートを打つ時、目の前にいたディフェンスは見えていた?
この時は全然見えていなくて、自分とボールだけの世界になっていました。その感覚は初めてだったんですけど、後で映像を見返したら相手がいたという…。打った瞬間に後ろに相手がいたのは分かったんですけど、打つ前にこれだけ走り込んでたのは自分でもビックリしました。

――映像で見返して気付くというのは、まさに“ゾーンに入ってる”っていうこと?
いや、ゾーンではないです(笑)
ゾーンは結構入った時、覚えてないことが多いんですけど、この時は明確に覚えているので…ゾーンではないです(笑)

――(三笘選手の折り返しは)ラインを割ったと思った?
結構出ているなとは思いました(笑)
笛が鳴るまでプレーするのが普通なので…。決めはしましたけど、VARになった時は隣に伊東(伊東純也)選手がいて「出てたよね」と言われて「出てましたね」って言ったら「そうだよね」って。

サッカーのルール上はボールがラインに接していなくても、上から見てラインにかかっていればプレー続行になるが、田中と伊東の視界からは“ラインを割っている”そう見えていた。
 

真実3:ボールが来る瞬間、駆け巡った思いとは?

――三笘選手が折り返したボールが来るまでの気持ちは?
「来い」って信じていたボールが本当に来たので、あとはもう「何が何でも入れてやろう」という感じで、体のどこかに当たって入ってほしいという気持ちで詰めに行きました。

――そういった練習もしていたと聞いているが?
今シーズンからエリア内に入って行くことは、すごく意識していたところではありました。ボールが来る来ないに関わらず、そこに入っていくというのは、ドイツ戦もそうですし、他のシーンでも意識はしていました。その結果、あそこに入っていくこともできましたし、それと共に自分が最後信じた部分があったんで、それもあって決めることができたのかなと思っています。

“エリア内に入っていく意識”が生み出したゴールだった。

VARの結果を待っているときの気持ちは?

さらに4つめの真実としてVARを待っている間のことについても聞いた。

――何を話していた?
「多分出てる」って言ってました。アウト!!アウト!!って叫んでましたね。

――そんな中、ゴールが決まった瞬間は?
うれしかった。正直、アウトの覚悟ができたんです。(気持ちを)切り替える覚悟が。純也さんもビックリしていました(笑)
 

小学校からの幼なじみ“鷺沼兄弟”の絆

田中碧と三笘薫。二人は“鷺沼兄弟”と呼ばれている。

1学年差の二人は同じ鷺沼小学校で同じ鷺沼サッカークラブに所属。プロになっても川崎フロンターレでともにプレー。2年前のFC東京戦、フリーキックの壁で三笘の隣にいるのは田中。Jリーグで優勝した時も三笘の隣にいるのは田中。

そして今回のW杯。スペイン戦で決勝ゴールを生んだこの二人。

クロアチア戦では、PKを外した三笘の元へ真っ先に駆け寄ったのも田中だった。

笑顔の時も…涙した時も…二人はずっと一緒。

日本代表MF/FW 三笘薫:
次のW杯で勝てるようにやるしかないと思います。

鷺沼兄妹は4年後、どんな姿で夢舞台に帰ってくるのだろうか。

――PKを失敗した三笘選手に駆け寄った時の心境は?
悔しさというか、苦しさというか…いてもたってもいられなかったというか。身体が勝手に動いたなと思いますし、もうすでに多分僕は泣いてました。

――何か言葉はかけた?
言葉はかけなかったですね。かけられなかったのかもしれないです。ただ手を取った形になりました。

――三笘選手とは大会前どんな話をした?
常に連絡は取るんですけど、今年は、リーグ戦はお互い違うこともありましたけれど、全てはリーグ戦じゃなくてW杯に注ぐ、そこで結果を残せれば何でもいいということを話していました。

――その結果はどうだった?
自分自身が目指していたものは手に入れることはできなかったのかなと。ただ素晴らしい経験をさせてもらったなと思います。
 

「90分で勝てれば」「いいプレーをして」大会前に明かしていた言葉

以前、田中が「ずっとしてみたかった」と憧れていたアウトドアキャンプをしながら取材を行った。

その際に“対戦相手・スペインを食う!”という意味でお手製のパエリアを食べてもらった。そこで「スペインに90分で勝てればいい」「自信はあります!」と力強く語っていた田中。

さらに2022年9月には、田中がプレーするドイツで弾丸取材。生活を共にする両親の前で「自分がいいプレーをして勝ちたい!」と意気込みを語っていた。

大会前に明かした言葉を現実にする、まさに“有言実行の男”田中。

スペイン戦の後のインタビューでも「この大会で自分がゴールを決めるっていうのは自分がずっと描いていたし、毎日日記書いてるんですけど、日記に毎日『ワールドカップで点を取る』って書き続けていた。俺は取るんだっていうふうに思い込み続けていたので、だから取れたのかなと思います」と明かしていた。

W杯は田中にとって長年追いかけてきた夢。その思いをつづった日記についても聞いた。

――日記はいつ始めた?
書き始めたのは(今年の)2月ぐらいからです。いろんなものを書いていて、なかなか続かなくて…最終的に8月くらいから書くことが固まってきて、そこからは同じことを書いているところもあります。

――1日の振り返りを書くのか?
1日の振り返りとは別に、9月からは「ワールドカップで点を取る」って書いて、そこから常に朝と夜に書いていました。

――W杯に関しては他のことは書いていた?
「点を取る」しか書いてなかったです。
 

「エムバペのような“化け物”になって戻ってきたい」

最後に、“次のW杯までの3年半”について聞いた。

サッカー日本代表MF/FW・田中碧
サッカー日本代表MF/FW・田中碧

――どういったところをステップアップしていきたい?
全てを上げていかないといけない。このW杯で感じたもの、結果も内容も、自分の中でまだまだやらなきゃいけないなと思ったので、3年半かけてこの舞台に“化け物”になって戻ってきたいと思っています。

“化け物”の例えとして同い年のフランス代表・エムバペ(23)を挙げた田中碧。エムバペの強みは「点を取れる。ゴールに絡める」ことだという。“化け物”へと進化した田中の存在が「W杯ベスト8」という新しい景色へのカギとなりそうだ。

FIFAワールドカップ 3位決定戦
12月17日(土)23時10分から

『S-PARK』旬なネタをどこよりも詳しく!
12月18日(日)23時15分から
フジテレビ系列で放送

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