感染者ゼロの背景にあるものは…

岩手医科大学・櫻井滋教授:
あの時、世界は変わったんですよ。岩手県人にとって

岩手県の新型コロナ対策の専門委員会委員長の岩手医科大学・櫻井滋教授。
9年前の震災では、避難所の感染症対策などにあたった。
今、あの震災が人々にもたらした“変化”が、感染者ゼロの背景にあるのではないかと考えている。

岩手医科大学・櫻井滋教授:
生き方、考え方、価値観が変わる体験を一度しているということが、今度の難局に向かっても生きているのではないか。とりあえず自己規制、つまり自分でやれることをやるみたいなことが、分析的に考えると行動様式が変わったと思わされますね

また、5月18日に開かれた県の総合教育会議では、“震災後の学校教育の効果”が表れていると指摘する声が出された。

小平忠孝 県教育委員:
「復興教育」の果たした役割。今回のコロナウイルスに関しては、子どもたちから親へ、地域へ伝わったのでは。教育の効果が表れたのでは

着実に受け継がれる命を守る取り組み

震災で1,064人が犠牲になった釜石市にある釜石東中学校。

3年生・佐々木太一さん:
いつでも自分の命を守れるように、現在もいざという時に備えて、さまざまな活動をしています

5月20日、3年生が1年生に備えの大切さを伝える生徒会の活動が行われていた。
この中学校では、震災前から隣の小学校と合同の避難訓練を行うなど、防災教育に力を入れていて、震災当日には、生徒と児童約600人が無事に高台に避難した。

3年生・佐々木太一さん:
地震や津波についてしっかり学習し、応急手当などの経験を積んでおくからこそ、いざという時に動くことができます。いざという時には、日頃の生活態度が出てしまいます。避難訓練を適当にやるのではなく、緊張感を持って行うことが大切です

東日本大震災から9年、防災への取り組みは着実に受け継がれている。

ーー震災の記憶はありますか?

1年生・花輪祐輔さん:
ないです。命の大切さや普通のことが周りにあることが幸せだということを改めて実感しました

生徒会では2020年度、新型コロナウイルス対策にも取り組むことになった。

3年生・佐々木太一さん:
自分から見て(紙の)下から上に折ります。幅は1cmくらいです

20日は、キッチンペーパーとゴムを使って、緊急時のマスクの作り方を学んだ。自分たちが今できることに取り組もうと考えたのだ。

3年生・佐々木あおいさん:
津波も一緒だと思うけれど、コロナウイルスも周りの人の命を救うためにも、支えあって協力していけば感染は防げると思う

1年生・川崎拓真さん:
命が大切なので、みんなで協力することを忘れず生活したい

命への高い意識を持つ生徒たち。当然のように、日頃から授業の合間の換気や手洗いなどの予防対策にも取り組んでいる。

3年生・佐々木太一さん:
(災害とコロナで)意識することは違うけれど、結局は自分やほかの人の命に関わることなので、共通することだと思います

「第1波が来たか、わからないうちに終わることも」

この釜石市で、実際にあの日避難した人の中にも、被災地ならではの特別な意識があると感じる人がいる。
現在、伝承施設に勤務する川崎杏樹さん。

いのちをつなぐ未来館・川崎杏樹さん:
東日本の方々、震災の被害に遭った方は、忍耐力があると思う。収まった時に、また前を向けるように頑張っている最中だと思う

岩手医科大学・櫻井滋教授:
今のように“ロックダウン”されても、「津波が来るんだ」と頭の中で変換できてしまう。他人に言われるまでもなく、抑制的な行動を元々取っていたのでゼロになったし、これからも取っていけるのではないか

被災県、岩手で続く感染者ゼロ。
岩手医大の櫻井教授は、「今の程度の努力を続けていくことで、第1波が来たか来ないかわからないうちに終わることも期待できるかもしれない」と話している。

(岩手めんこいテレビ)