「困っている人を放っておけない」。
鹿児島・鹿屋市の85歳の男性が、趣味で通う書道教室の力の弱い高齢者を助けたい、困りごとを解決したいと、4年かけて、ある道具を考案した。

画びょうを簡単に…その名も「オッスクン」

鹿屋市に住む、山下具了(ともよし)さん(85)。

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60歳までは、リフォームの会社を経営していたが、職人の高齢化を理由に会社を閉じた。そんな山下さんが開発し、10月から本格的に販売が始まった便利グッズがある。

山下具了さん:
これは、画びょうを今までは手で押していましたけど、この道具を使うことによって、簡単に押すことができる道具なんです

山下さんが開発したグッズ
山下さんが開発したグッズ

筒状の道具の先端に画びょうをセットし、壁に押しつけると、力の弱いお年寄りや女性でも画びょうを刺せるというもの。爪を傷めずに、画びょうを抜ける道具もついている。

「名前は『オッスクン』と名付けました」と山下さん。
オッスクン誕生のきっかけは、長年通っている書道教室の展示会だった。

山下具了さん:
今から4~5年前なんですが、公民館で(書道の)発表会があって、「金づちを持って展示物を張る手伝いに来てくれ」ということで、「展示物を張るのに金づちがいるの?」ということが始まりで、驚きました

作品を展示するのに大量の画びょうを固い壁に押して刺さないといけないため、金づちが必要だった。

困っている人を放っておけない山下さんは、力の弱い女性やお年寄りでも、簡単に画びょうを刺せる方法がないか考え、ホームセンターにある材料で、オッスクンの原型となる1号機を作り上げた。

山下具了さん:
地元のホームセンターに(試作品を持って)行ったら「おじいちゃん、今までこんなものなかったよね」ということで、「世の中、うけてくれるのかあ」と思って

82歳で会社立ち上げ…地元の福祉作業所に組み立て依頼

自信をつけた山下さんは、商品化するため4年間、試行錯誤を繰り返した。

「オッスクン」の組み立ては、地元・鹿屋市にある福祉作業所に依頼した。作業所に通う人たちが、袋詰めまで行う。穴の開いた組み立て台も、「作業しやすいように」と山下さんが作った。

「1日に何個も部品をはめ込むと、指に血まめができる」と聞けば、山下さんは、作業する人に負担がかからないよう、道具も手作りした。

福祉作業所の利用者の男性:
てこの原理なので楽に動くようになりました。(山下さんは)ものすごく頭が柔軟で、発想力があって、全然80代を感じさせないんですよ、考え方とか行動力とか

福祉作業所の利用者の女性:
みんなで協力して、いっぱいできたらうれしいなって思う

また山下さんは、オッスクンを販売するため、82歳で会社も立ち上げた。社名の看板は、趣味の書道を生かして、もちろん山下さんが書いた。

山下具了さん:
「これあったらいいなあ」、「もう少しこうしたらいいんじゃないか」という習慣をつけると、何かに行き当たる可能性が大きいと思う。せっかく自分で考えついたものが形になりましたので、できるだけ多くの人に使ってもらうというのが、一番の夢でしょうかね

山下さんは、事務所の目立つところに、こんな言葉を飾っていた。「夢を語り、想いを形に」。

山下さんの挑戦は、まだまだ続く。

このオッスクンは、鹿児島県内のホームセンターで販売されている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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