東南アジアを歴訪中の岸田総理は14日、2か国目となるインドネシアのバリ島に移動した。到着は現地時間の深夜0時過ぎという時間。
当初は日付をまたがず到着する予定だったが、3年ぶりに実施された日韓首脳会談の日程がうしろにずれ込んだため、遅くなった。一方、バリ島で迎えた最初の朝、岸田首相はようやく少しゆっくり過ごすことができていた。滞在するホテルを出たのは昼過ぎ。
他国との会談へと出発した際、楽器の演奏を行っていた現地のスタッフに目を止め挨拶する余裕も見られた。

永田町では各社の内閣支持率が下がったことが話題となっているが、バリ島では当然一切話題となっておらず、リゾート地の穏やかな雰囲気に包まれている。首相周辺は「海外訪問は永田町の喧騒から離れるいい機会にもなる」と語る。

「中国首脳がいる場で名指し批判」
こうした中、今回の歴訪の最大の焦点だった日中首脳会談の実現がついに決まった。APEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれるタイ・バンコクで17日、開催する予定だ。相手は、異例の3期目に突入した習近平国家主席。
対面での日中首脳会談は2019年12月の安倍元首相と習氏の会談以来、実に3年ぶりとなる。首相周辺は「習主席と会うこと自体に大きな意味がある」と強調する。

習主席との会談は、「中国が日本の出方をギリギリまで見極めるだろう。直前まで決まらないのではないか」(政府関係者)との見方もあったが、13日夜に記者団の取材に応じた岸田首相は、会談開催に自信を持っているような表情だった。
「開催の方向で調整し続けている」「日中の間には可能性があるとともに課題や懸案もある。対話を前進させる会談にしたい」と語っていた。
一方で、会談開催が決定する前にもかかわらず、岸田首相が中国を名指しで批判する場面があった。中国の李克強首相が出席する「東アジアサミット」の中で、李首相を目の前にして「東シナ海では中国による日本の主権を侵害する活動が継続、強化されている」と発言したのだ。
この「名指し批判」について記者団に問われた岸田首相は、「主張すべきことは主張する」とした上で、「こうした率直な発信が今後日中関係を安定させていくためにも重要だと思っている」と語った。
「強い岸田を見せたいのでは」

こうした岸田首相の強気な姿勢について、自民党内から「支持率が低下している中で、得意の外交で『強い岸田』を見せたいんだろう」と冷ややかな声も上がる。
ただ、現実を見れば中国は今も沖縄の尖閣諸島周辺海域で公船による領海侵入を頻繁に繰り返している。
そして8月にはアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問した際、中国は反発を強め、軍事演習として弾道ミサイルを発射し、その一部が日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下する事態も起きた。
政府関係者は「本当の脅威は北朝鮮ではなく中国だ」と話す。
直接会談で習主席に対し、どんな言葉で何を伝えるのか。岸田首相の8日間に渡る東南アジア歴訪は、まもなく最大のヤマ場を迎える。
(フジテレビ政治部・平河キャップ木村祐太)