少子化や教職員の働き方改革などを背景に今、中学校の部活動のあり方が大きく変わろうとしている。公立中学校の運動部の休日の活動を地域のスポーツクラブなどが代わりに受け持つ「地域移行」が新潟県内でも2023年度から段階的に始まることになった。いったい何がどう変わるのか、その課題を探った。

部活動の「地域移行」 先行的に開始

元気のいい声が響き渡る新潟県村上市の体育館。神林中学校の生徒がバスケットボールの練習に励む中、指導を担当していたのは神林中学校の教員ではなく…

バスケットボールの練習をする子どもたち
バスケットボールの練習をする子どもたち
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Hangoutヘッドコーチ 佐藤憲明さん:
新発田市の職員として、街づくり・都市計画の仕事をしている

普段は市役所や民間の企業で働く人たち(※副業の許可を得ている)。ここで先行的に行われているのが、部活動の地域移行だ。

新潟県 保健体育課 志田哲也 係長:
国の検討会議が提言を出すなど、いよいよ準備を加速していく段階であると認識している

国の検討会議は2023年度から2025年度末をめどに、公立中学校の休日の運動部の活動を民間のスポーツクラブなどに委ねる地域移行を段階的に進める方針を示している。

少子化により、1校だけでは部活動の維持が難しい学校があること、そして、教職員の負担が増していることなどを背景に進められる地域移行。県も検討委員会を開くなど、2023年度に向けた準備を進めている。

新潟県部活動改革検討委員会 西原康行 座長:
これから子どもたちの環境をよくしていくという意味で、「この改革を積極的に進めていくべき」という意見が出てきた

「他校の生徒との交流」はメリット

先行的に地域移行を行う村上市で、その運営を担う地域スポーツクラブ「希楽々(きらら)」。始まりは村上市内の中学校に女子バスケットボール部がなかったことだった。

NPO法人 希楽々 渡邊優子 理事長:
一生懸命ミニバスをやってきた女の子たちが中学校でバスケットボールができない。学校・保護者・希楽々で話し合いをして、部活に準ずる活動・新しい形の部活動ということで、希楽々管理下でこの活動を始めた

「希楽々」発足のきっかけは…
「希楽々」発足のきっかけは…

この希楽々を利用する神林中学校の男子バスケットボール部では、週5日のうち、平日と休日1日ずつ、合わせて2日の指導を希楽々の男子バスケットボールチーム「Hangout」に任せている。

学校という枠組みがなくなることで、他校の生徒との交流が生まれることは、地域移行のメリットの一つ。

生徒:
他の人たちの強さを知ることができる。「自分もこういう技を身につけたい」となるので、ここは学べるなと思った

部活とクラブチーム”両方所属”で課題

その一方で…

神林中学校 バスケットボール部顧問 富樫勉 先生:
このままだと、大会に出られなくなる

神林中のバスケットボール部のメンバー10人のうち、7人がHangoutに所属。クラブチームと学校の部活で重複して大会に登録することはできないため、残りの部員3人では試合に出るための人数が足りない。

神林中学校バスケットボール部顧問 富樫勉 先生:
「大人の事情でごめんな」と。申し訳ない気持ちはある

その解決策として、国が提案しているのが…

新潟県部活動改革検討委員会 西原康行 座長:
「地域の中にリーグ戦を設定するようなものをつくってください」と、スポーツ庁は言っている

中学校体育連盟ではなく、地域などが独自に大会を主催することで、多くの生徒の大会出場の機会を確保しようという考えだ。

新潟県部活動改革検討委員会 西原康行 座長:
年に一回の中体連の大会。それもメンバー固定で、あとの子は補欠で出られない。同じようなレベルの子たちと色んな試合があって、色んなところでゲームを楽しむというほうが子どもたちにとっては、モチベーションが上がると思う

本業抱える指導者 活動は夜から

しかし、課題は他にもある。

NPO法人 希楽々 渡邊優子 理事長:
指導者の確保。皆さん働いているので、夜でないとできない

水曜日のみ平日も希楽々で活動を行う神林中のバスケットボール部。学校で行う部活動は午後6時までだが、Hangoutでの活動は午後7時に始まるなど、本業を抱える指導者に合わせざるを得ないのが現状だ。

生徒:
宿題とかは帰ってからやる。まぁ、寝る時間も遅くなる

指導料などの費用負担「今後は常識に」

さらに費用面での変化もある。部活動ではかからなかった費用がHangoutでは保険料や指導料などで、一人あたり月最大3000円が必要となる。

NPO法人 希楽々 渡邊優子 理事長:
保護者にしてみると、今までお金がかかっていなかったかもしれないけど、責任を持ってやる分、受益者負担はお願いしたいと思って説明している

国は自治体と連携し、生活困窮家庭に対する補助を行う方針で、専門家は「今後、費用に関する考えにも変化が生まれるのではないか」と話す。

新潟県部活動改革検討委員会 西原康行 座長:
日本では「水とスポーツはただ」というのが常識だった。今は、水もだいぶお金を払って買うが、スポーツも同じで、良質なスポーツを指導してくれる人に対して、お金をきちんと払うことが常識になってくるだろうと思っている

指導者の確保や費用面など課題はあるが、地域移行が目指すのは多様な生徒の思いを実現すること。プロになりたい、楽しくやりたい、生徒それぞれが異なる思いを抱く中、多くの選択肢を提供するための挑戦が始まっている。

NPO法人 希楽々 渡邊優子 理事長:
子どもたちが好きな種目を好きな思考で好きに選べる、自分の意志で選ぶ。そんな環境になればいい

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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