バナナよりもネギの方が滑りやすい!?

バナナの皮で滑って転ぶシーンをマンガなどで見たことがあると思うが、あるものがバナナの皮より滑りやすいと話題になっている。

それがこちら。
 

よくバナナの皮ですべる場面がありますが、ネギの緑の部分がその100倍すべることはあまり知られていません。都市部の若者よ、気の緩みは禁物。外の世界には気をつけて!

投稿したのはトマトの生産、加工、販売をしている曽我農園のTwitter(曽我農園 太陽が苦手@pasmal0220)。
100倍滑るというのは冗談ということだが、これまでの経験からネギの緑の部分で冬場や雨の日に滑ることが多々あったそうで、注意喚起になればと思い投稿したということだ。

「スーパーの野菜売り場のバックヤードで働いたことがあります。ほんの一切れでめちゃくちゃすべります!」や「子供のころですが八百屋さんの前で転びました」などの共感するコメントが寄せられ、1万3000超のいいねが付いている。(5月25日現在)

では、本当にネギはバナナより滑りやすいのか。バナナの皮の摩擦係数を測定した「バナナの皮はなぜ滑りやすいのか」の研究で、2014年にイグノーベル賞を受賞した北里大学の馬渕清資名誉教授にお話を伺った。

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ネギとバナナの滑り具合は条件次第

ーーネギはバナナの皮より滑りやすい?

どちらも粘液があるので滑りますけど、両者の滑り具合は条件次第です。バナナが滑るには、ヒトが踏むという条件が必要です。これは、ネギも同様で、ヒトが踏めば滑ると思います。
それ以外の条件で、たとえば、板の上にバナナの皮やネギを置いて傾けても、滑りはよくないです。ヒトがうまく乗らないと滑らないという点で、ネギは面積が乏しいので滑りにくい。バナナの皮は、1枚でもかなりの面積があるので、滑りやすいです。

乾燥するといずれも滑りません。乾燥はネギの方が速いので、翌日まで放置したらバナナの皮の方が滑ります。バナナの皮は、裏返しに踏むと滑りが悪くなります。ネギは二重構造の中に粘液があるので表裏の条件はないです。

他にも周囲の条件は温度、湿度などいくらでもあって、それらも両者の優劣に影響します。なんでも滑るけど、バナナの皮が有名になったのには理由があります。私の実験でメロンの皮の方がバナナの皮より安定して滑りました。しかし、メロンの皮が道に落ちていることはまずないです。ヒトがバナナの皮を踏んだのは、あらゆる食べ物の中でバナナが最も携帯に便利だからです。

ーーどのような成分が滑りやすくしているのか?

ネギもバナナも粘液が働くことで滑ります。植物の粘液の共通成分は糖類です。糖類と言っても分子量の大きい多糖類です。その多糖類の繊維の間で滑ります。動物の身体の内部も粘液の滑りの良さのおかげで、関節軟骨、心臓の表面などが滑って動いています。動物体内の粘液成分はタンパク質が主体ですけど、ヒアルロン酸などの多糖類も多いです。

白菜の尻の部分も滑りやすい?

また、曽我農園は白菜の尻の部分も滑りやすいとの投稿もしているが、こちらの真相も馬渕名誉教授に聞いてみた。

ーー白菜の尻の部分も滑りやすい?

白菜の尻の場合、水に溶けない構造体なので、粘液成分がありません。ただ、放置して傷むと、細菌によって消化されて、水溶性になるので、ヌルヌルになります。そうなると、粘液が発生しているので滑ります。ヌルヌルが気持ち悪いというのは、防衛本能の表れと思います。

付け加えますと、粘液の基になる高分子物質は生命にしか作れません。自動車の潤滑油(石油)も生命由来です。そのため、あらゆる潤滑技術が生命由来の物質、すなわち有機物に依存しています。滑る物質は生命そのものです。

馬渕名誉教授によると、ネギもバナナも粘液により滑り、どちらがより滑るかは条件次第ということだった。
いずれにしても、両方とも滑りやすいとのことなので、マンガみたいにならないように足下には気をつけて歩いた方がよさそうだ。
 

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プライムオンライン編集部
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