政府は緊急事態宣言の一部解除を宣言した。宣言解除となった県とされなかった都道府県の差異はどこにあり、それぞれの生活にどのような違いが出てくるのか。また解除された県で、再発に対する備えは十分なのか。感染症専門家、与党、県知事というそれぞれ異なる立場の識者とともに議論を深めた。

政府の「一部解除」について概ね「評価」

長野美郷キャスター:
緊急事態宣言の一部解除を認めた政府の判断についての評価は?

増田道明 獨協医科大学医学部 教授:
日本の場合は幸いどの地域でも医療崩壊が起こらずに済み、いわば時間稼ぎに成功した。その間に欧米からの情報で、重症化のメカニズムが見えてきている。今後感染者をゼロにはできないが、重症化対策が見えてくるタイミングでもある。感染者数が若干増えたとしてもその後の対策ができる準備ができているのでは。

長野美郷キャスター:
安倍総理の会見で示された解除基準と数値目標は、感染拡大防止のための実情に即していますか?

増田道明 獨協医科大学医学部 教授:
5月末までの話なので、PCR検査だけが抜き出され抗原検査のことには言及されていないのかもしれませんが、もう少し包括的な検査体制が必要。たとえば重症化予防には、血液のD-ダイマーというもののモニタリングが有効だというデータが海外から出てきた。血が固まって血流が滞り肺の血管が詰まることが重症化に関わるのではと言われており、その兆候を見る上でこの検査が役立つ。現在日本の多くの医療機関でこうした検査が行われある程度達成できているとは思うが、重症化予防のために重点的にやるべき。

反町理キャスター:
東京で1日あたり感染者を10人に抑えるのは厳しい。それに比べると解除基準2項目の基準では、東京で1日あたり20人の新規感染者が出たとしても、客観的・総合的に判断して感染経路を辿り抑え込めるなら解除してもいいという判断ですよね。

松本哲哉 国際医療福祉大学医学部 主任教授:
ピークのときは感染経路を追うことすら無理となっていた。今の状況ならば、その数字であればそこそこの対応ができると思います。

反町理キャスター:
今回解除された39県においてPCR検査の態勢が十分いきわたっているとは思えないが。

松本哲哉 国際医療福祉大学医学部 主任教授:
検査対象者が非常に増えた場合は、その通り。ただし今は低く抑えられているので対応できるということだと思います。

反町理キャスター:
この解除基準「10万人あたり0.5人以下」。僕らも根拠がよくわからないまま発表されているように思い検証するのだが、ハードルが高すぎる印象は?

増田道明 獨協医科大学医学部 教授:
これも重症化の話と関わってくる。その数字にはおそらく、感染者のうちほぼ症状がない方や軽症の方も入っている。そこで重症の患者数の動向を見る必要がある。当然検査体制が充実すればするほど症状のない方も見つかってくるのだから、ただ単に数の大小よりも、その中の内訳を見ていくことが必要。

群馬県知事は解除の後ろ倒しを要請したが

反町理キャスター:
山本知事、緊急事態宣言を解除しないでくれと言った理由と、それにもかかわらず解除されたことへの思いは?

山本一太 群馬県知事:
解除しないでくれというのではなく、これから月末に向けて解除の第2弾・第3弾があるであろう中で、この解除の時期を後ろ倒ししてくれと言った。群馬県は東京に近く往来も多い。東京での感染拡大が収まらなければ群馬県のリスクが低減しない。
緊急事態宣言の対象地域に残ろうが外れようが、県のガイドラインで経済緩和は始まることになっていた。そこで宣言から外れ、一気に緊張感が緩むのも心配だった。対象地域になったことにより特措法に基づく知事の権限も新たに出てきた。例えば自粛要請に応じていただけない場合に施設を公表するなどの手段がなくなってしまうし、緊急に医療施設的なものを作るときの建物を収用する権限などをできるだけ手元に残しておきたかった。

新藤義孝 自民党新型コロナ対策本部長代理:
宣言の対象地域から外されたことで何かできなくなることはない。知事もご承知だと思う。現状注意しなければならないのは、これだけ我慢していた反動でタガが外れること。

今後大人数で温泉旅行はできなくなる?

反町理キャスター:
群馬県の感染者数推移を見れば解除の対象となるのも頷ける。解除によって県の観光産業などの活性化の期待感は先に来ないのか。

山本一太 群馬県知事:
私は草津温泉の老舗旅館の息子で、観光産業に思い入れがある。ホテルや旅館は、大型連休前に政府方針が変わり大型連休の休業要請の必要があった。いま観光産業は厳しい状況。解除したからといってお客さんが戻ることは難しい。
アフターコロナの世界について総理が述べていたが、大きく生活様式を変えなければならない。するとビジネスモデル自体も変えないといけない。例えばこれからは、大人数で温泉地に来てもらうことはできないかもしれない。

反町理キャスター:
そこまでの覚悟を決めているんですか。宿にいっぱい人がいるようなかつての草津ではなくなると。

山本一太 群馬県知事:
付加価値を強めるなど新しいモデルを考えないと生き抜けないと思う。今までのような温泉文化・様式が続けばもちろん一番うれしいが、そうではないことも想定していかなければ。

増田道明 獨協医科大学医学部 教授:
団体で旅行ができないとなると、おそらく科学・医学の敗北になってしまう。科学者・医師の中にも宴会・温泉が好きな人がおり、昔を取り戻すという意気込みで研究する人もいるだろう。最終的に重症化予防が実現できれば、日本だけではなく世界も以前の生活を取り戻せるのかなと期待しています。

WHO「長期間にわたる問題となりうる」について

長野美郷キャスター:
懸念されている感染拡大の第二波。WHOのライアン氏から「長期間にわたる問題となりうる」という発言がありました。

増田道明 獨協医科大学医学部 教授:
このウイルスについて軽症の方が相当いるとわかった時点で、多くの研究者は根絶が難しいと想定していた。その発言自体には特に驚きはありません。ただそうなると感染する前提で、感染ではなく重症化を防ぐために生活様式を考えなければいけない。

松本哲哉 国際医療福祉大学医学部 主任教授:
私はWHOに不信感がある。WHOは何をするべきか、どうしてほしいのかを提案するのが大事で、長期化なんて誰が考えてもそうだろう。それだけを言ってどうするのか。

山本一太 群馬県知事:
WHOの対応は疑問。幹部が今更ながらのぼけた発言をしているなというだけで、ウイルスが根絶できないのは世界の常識。

新藤義孝 自民党新型コロナ対策本部長代理:
世界に蔓延している新型コロナ旋風をどう収めるか。日本よりもはるかに深刻な国が世界中にある。日本が収まっても世界が収まらなければいけない。我々は自分たちの国のことをやりながら、自国のためにも他国と協調しながら、ノウハウを共有していかなければいけない。

BSフジLIVE「プライムニュース」5月14日放送